コンコン


「KAITO?私、MEIKO。入るわよ?」

彼女が部屋に入ってきた。
僕は部屋の電気をつけてなかった。

「…うわっ…ちょっと、電気くらいつけなさいよ!」

そう言って彼女は部屋の電気をつけた。

「ほらー、いつまでも沈んでないで、笑顔笑顔!」

彼女はにっこりと笑顔を向けてくれた。

なんで彼女はこんなに優しく接してくれるのだろう。
マスターと呼ばれるあの男の人も。

歌えないVOCALOIDなんて…ただの役立たずなのに…。
僕なんていなくても何も変わらない。
誰も必要としてない。

こんなガラクタ消えて無くなってしまえばいいんだ。

そう思いながらふさぎ込んでいると、彼女が少しため息をつき歌いだした。



その歌声はとても優しく暖かかった。


「この歌はね、私の前のマスターが口ずさんでたの」

-前の…マスター…?-

「病気で亡くなっちゃったんだけどね。」

僕は顔をあげて彼女を見た。
そして彼女と目が合った。

「うーん…やっぱり綺麗な顔立ちしてるよね。」

そう言いながら彼女は顔を近づけてきた。
僕は慌てて顔を背ける。

「あ、こら逃げるな!」

彼女は両手で僕の顔を挟み、無理矢理正面に向けた。

「もう…せっかく綺麗な顔してるんだし、笑顔にならなきゃ勿体ないじゃない。」

-でも、僕は…-

目を伏せると、彼女は小さくため息をつき、そして思い出したかのように口を開いた。

「そうそう。今日私達の妹のミクが帰ってくんだって。だから今日こそ夕飯は一緒に食べよう?」

-み…く…?-

不思議そうな顔をしてると、彼女が説明してくれた。

「えーっと…ミク、初音ミクは私達の後に生まれたVOCALOIDなの。」

-僕たちの後に…-

「…んー、私、説明苦手なんだよなー…要は私達の妹、って事よ。」

彼女は頭を軽く掻きながら言った。
それが何か、らしいなって思い自分でも気付かずに微笑んでいた。
それを見た彼女は目を見開き、僕に詰め寄って来た。

「今笑ったよね!?」

彼女はガシッと僕の顔をわしづかみにしてきた。

-笑った…?僕が…?-

僕はどうしたらいいかわからなくなっていた。

「良かったー!ちゃんと笑えるじゃないの!」

彼女はそう言いながら自分の事のように笑顔ではしゃいだ。

不思議と彼女の笑顔は僕のココロを動かし、それがまた僕の笑顔を引き出させた。









「…あ……あ…りが…と…う」




僕は声を甦らせた。

「…」

「…」

しばらくの沈黙の後、目を見開いた彼女は口を開いた。

「KAITO…今、声…!」

途切れ途切れに彼女がしゃべった。
そして彼女の瞳から涙が零れ落ちた。

「良かったぁ…声出せるようになったね…ホントに良かった…」


MEIKOは僕を優しく抱きしめてくれた。
それはとても温かかった。





僕の中で何かが変わろうとしていた。

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VOCALOID-2『声』[小説]

つづきです。


めーちゃんが歌ってるシーンに本当は歌詞があったけど、某P様のを借りてたままなので、自分で書くまではしょります(笑)

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投稿日:2008/11/10 17:52:48

文字数:1,225文字

カテゴリ:小説

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