少し事態と気持ちを落ち着かせてから各自が再び会議室に戻ったのは20分程過ぎた頃だった。事情は飲み込んだものの現状どうすれば良いかと言う点で手詰まりになったのも確かだったから。
「えーと、日高さん…は、結局何をしに此方へ?恨み晴らしにって感じでもないみたいだけど。」
「スッキリ水に流すには少々痛いけど、まぁそこ等はお嬢さんの親父さんから貰ったんで。」
「えっ?!あの…父に会ったんですか?」
「それは今話す事じゃないでしょ、それより莉子の方が心配だ、そっちの兄さんぶん殴られて気絶しちゃってたし連絡も取れないんだろ?」
また静まり返ってしまった室内に溜息と時計の音だけが聞こえた。破ったのは意外にも凰さんだった。
「鈴夢、緋織を調べろ。」
「え…?」
「幸水からも情報引き出せなかったし他に手掛かりが無いならそれしか無いだろ?」
「それは…解ってるけど、でも…!」
真壁さんの顔が曇った。確かに手掛かりらしい物が得られない以上、犯人と思われる人と接触した緋織ちゃんから情報を引き出すしか無い。でも方法からして今のあの子にそれは酷過ぎる…。当然の如く揉めてしまい険悪になった雰囲気の中、ずっと押し黙っていた七海君が突然立ち上がった。
「拓十君?」
「…ごめん…俺が…俺のせいで…!」
「え?え?あの、七海さんをしふぉんの所に行って貰ったの私だし!それに犯人来たのも偶然で…。」
「違う!」
「ひゃっ?!」
緋織ちゃんの肩を掴んだまま七海君は俯いた。何度か口を開こうとしては言葉を詰まらせてるみたいだった。
「…志揮兄なんだ…お前を襲ったのも…2年前お前の事つけ回したのも…全部…!」
「志揮兄って、お前の叔父の七海志揮か?けど何でいきなりそんな…。」
「さっき家に連絡したんです…いつも鍵が掛かってる志揮兄の部屋を調べて欲しいって…何かおかしな物があったらメールくれって…それで…!」
そう言って七海君は震えながら携帯を差し出した。そこに届いていた添付画像開いた瞬間皆から引きつる様な声が上がった。壁が見えない程ビッシリと貼られた写真に堪らず吐きそうになる。
「うわ、病的まっしぐら。」
「緋織ちゃんだけじゃないよ、ほらこっち彩矢さんだし、この隣しふぉんちゃんじゃない?」
「嫌――!!気持ち悪っ!!火点けたい!!」
「若葉、七海君居るんだから…。」
言葉が飛び交う中、響さんが携帯を取り上げて強い口調で言った。
「良いのか?七海。」
「侑俐さん…。」
「証拠が揃った以上警察としても野放しには出来ない、七海志揮を緊急指名手配する…良いんだな?」
「…はい…!」
電話を掛けながら響さんが会議室を出て行った。そしてドアがゆっくり閉まるのと同時に七海君は膝から崩れ落ちた。
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