―あの日、名残惜しみながらも俺とミクさんは夕方には自分の家に、お互いの猫を連れて帰った・・・。
だがその一週間後に、すぐに俺とミクさんは会う事となる。
【一週間後。公園にて】
一週間前と同じ様に、リンを膝に乗せて公園のベンチに座るミク。
そんな彼女達に息を弾ませながら近づいてくる一人と一匹の影。
それは・・・・・・、
「・・・あっ。お~い、レンくぅ~んここだよ~一週間ぶりっ。クオ君も、お久しぶりぃ~」
「ミクさんっ!すいません、遅れてしまって・・・待たせてしまいましたか?」
「ううん、私達もついさっき着いたとこだよ。
・・・あっ、それとメールありがとう。先週、私もリンも、もっとレン君やクオ君とお話したかったからお誘い凄く嬉しかったです」
(・・・・先週の俺、超GJ。マジ頑張った・・・・・・!!)
「俺こそ、帰ったその日にメールしたから大丈夫かなぁ~・・・って思っていたんですけど・・・。
またミクさん・・・・・っとリンに会えて嬉しいです」
心の中で自分を褒め称えながら、ミクに対しての照れ隠しから所々言葉が途切れるものの、何とか自然体を取り繕うレン。
(・・・嘘は言ってない・・・・断じてっ、俺は嘘は言ってない・・・・・)
・・・自己弁護と言い訳を・・・・・、
(だから・・・うん、きっとクオが俺を蔑んでいる様な・・・いや、それ以上に可哀想な物を見る様な目で見ている様な気がするのは気のせいだよ・・・。いやだなぁ~最近、疲れてるのかなぁ~あはは・・・)
己の猫(クオ)に繰り返しながら・・・・・・。
―その時のクオが自分の主人(レン)に向けていた視線は、人間と猫と言う種族の境界線を越えて通じ合える位に冷ややかさと憐憫の情で満ちていたと言う・・・。
話は、一週間前・・・レンとクオが初めてミクとリンに出会った日の夕刻に遡る・・・・・・。
【一週間前。レンの自室にて】
ミクと別れ、クオと家に帰宅したレンそのまま自室に戻るなり、ベッドにうつぶせ状態でいたレン。
だが、すぐにくぐもった笑い声をだしたかと思えば、自分の頭を何度もバンバンと叩く・・・・・・。
クオは主人の奇怪とも言える行動を見て、警戒する様に毛並みを逆立てうなっていた。
「・・・やばい・・・やばいやばいやばいっ!これは俺にとって本当に快挙だ・・・やべぇ、やっぱ赤飯炊くべきか・・・?」
約一時間前に、俺はミクさんとの別れを惜しみながらクオを連れて帰宅した。
・・・・・お互いの携帯アドレスと番号を交換しあって。
【一週間前+一時間前。レンの回想―公園にて―】
「あの、良かったらレン君のアドレスを教えて貰えないかな?」
「え、俺の?」
「うんっ!私、学校が休みの日はリンを連れてよくお散歩するんだけど・・・猫を連れて歩いている人で出会えたのは『レン君が初めて(←ここ、重要! byレン)』だから本当に嬉しいのっ!!だから、お友達になりたいな~・・・って」
「勿論、全然構いませんよっ(・・・っうぅ・・・しゃあぁぁーーーっ!!今夜は赤飯だっ!!)
【―回想終了―】
相変わらずに枕に顔をうずめて嬉しそうに、不気味なくぐもった笑い声を上げるレン。
「やべぇ・・・何あの人・・・可愛すぎるだろ?俺が初めての人なんて・・・・・・」
・・・て、にやついている場合じゃねぇ。
ミクさんに今日会えて話せて嬉しかったって事と、また会いたいって事をメールしなければ・・・・・・。
(・・・だが、どうやって・・・・・・?)
何て文章にすれば自然でミクさんを誘えるんだ・・・・・?
「今晩は、鏡音レンです。今日はお会いできて嬉しかったです。よろしかったら、また来週も公園でお会いしませんか・・・?」
・・・いや、これじゃあストレート過ぎる・・・・・・。もう少しさり気ない感じで・・・・ミクさんも興味を持つ話題で・・・何かないかなぁ?えーっと・・・えー・・・とぉっ・・・・・・
苦悶の表情を浮かべるレンに、クオは付き合いきれないといった風に部屋のドアまで向かい、華麗な跳躍をしてドアノブを動かして扉を開ける。クオがまさに廊下へと出ようとしていた所を・・・、
「・・・っ!これだぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
何か、名案が浮かんだレンはクオを凄い勢いで抱き上げた。
その際、主人とは言え流石のクオも我慢の限界だったのかレンの手を爪で引っ掻いた。
―そして、時は流れ現在に至る。
「でも、クオ君がリンの事を気に入ったってメール貰った時は驚いちゃったけど、リンもクオ君みたいなカッコイイ男の子に好かれて嬉しいみたい。ねぇ、リン?」
にぃー。ミクの言葉に可愛く鳴きながら応じるリン。
大好きな主人の膝から降りるとクオの元へ向かい、自身の頭を彼の顔にすり寄せた。
クオもそんなリンの行動を嫌がらず、寧ろ嬉しそうに彼女の毛を優しく舐めて毛繕いをしてやる姿は何とも微笑ましかった・・・・・・。
「いやぁ・・・クオの奴が相当リンに惚れ込んじゃったみたいで・・・、こないだ別れる時も凄い寂しそうでしたし・・・それに、俺もミクさん以外の人で猫を連れて散歩に出る人に会った事ないんで知り会えて嬉しかったし、もっと色々話したかったんですっ」
ークオのレンに対してだけ向ける視線を除けば・・・・。
(・・・いや、決してミクさんに会いたいが為にお前とリンを出しにした訳じゃないんだよ、クオ?
猫連れて散歩出る人なんて本当にミクさんが初めてだったから嬉しかったんだよ。
それにお前もリンに会えて嬉しいし、嘘はついてないだろ・・・?)
(だから、クオの視線が痛い気がするのは気のせいだよ・・・うん。)
―何はともあれ、二人と二匹の交流はこうして始まった・・・・・。
(・・・だって俺だって思春期真っ盛りなんですよ?多感なお年頃なんですよ?
好きな人で、しかも、それが初めて好きになった相手なら、メール送るのも一苦労なんですよ・・・?
健全な男の子が思いつく上手い言い訳なんてそれ位しか思いつかなかったんですよ・・・?)
・・・だからね?クオさん・・・・その可哀想な目で俺を見るのは本当にやめてっ・・・・・!!
―レンの飼い猫(クオ)に向ける心の悲鳴を合図に・・・・・。
(つづく)
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