「めー姉、おかえり!」
「ただいま、リン」
仕事帰りのめー姉を、駅まで迎えに行く。
これはいつもの日課なのだが…。
「めー姉、ここ、何処?」
「うーん…。何処かしらね?」
道に、迷ってしまったようで。
東の空に浮かぶ満月だけが、見知らぬ路地を照らしていた。
「マジでここ何処ですかってうかリンたちはちゃんと家に帰れるのでしょうか」
「ケータイは…圏外ね。GPSも駄目になってる」
さっきから道を歩いてはいるものの、大通りに出る気配は無い。
一応、住宅街のようだが、人が住んでいる気配も無い。
……っていうか、この辺の街並み、少し古くないか?
いや、ボロボロというわけではなく、むしろ新しいのだが、造りがちょっと古いような気がするのだ。
まあ、いっか。
今の目的は家に帰ることなので、考えるのをやめた。
「せめて店があればね…。道を訊けるのに」
めー姉が呟く。
そうか、その手があった。
とりあえずそれらしきものを見つけるために辺りを見回していると、
「ん?あそこ…」
微かにだが、灯りがともっている建物を見つけることができた。
「めー姉、何か電気ついてるところがある!!行ってみよう!!」
「あ、こらリン!!走ると転ぶわよ!!」
「14歳にもなってこんなことで転んでたらそれこそマヌケだよー」
「それ、作者が傷つくからやめなさい」←
そうだね、確かにTea Catは15歳になったのにまだ変なところで転んでるもんね。
……とまぁ、そんなこんなで店に着いた。
看板には、
“Gold & Blue Moon”
と書かれていた。
窓から店の中を覗くと、喫茶店のようだった。
「どうする?一応入ってみる?」
そう尋ねると、めー姉は、
「そうね、ちょっと冷えてきたし、せっかくだからお茶しよっか」
と言った。
まあ確かに、いくら暦の上では春で、昼はそれなりに暖かくても、やはり夜はまだ冷える。
「そーだね、あったかい飲み物でも飲もっか!!」
というわけで、少し休憩することにした。
カランカラン
ドアを開けると、よく喫茶店のドアの上の方に付いている鈴みたいなのが鳴った。
そして、
「いらっしゃいませ。席にご案内致しますね」
自分と同じくらいの少年の声が聞こえた。
「おや、珍しいお客様ですね」
そう言って笑った少年の顔は、自分とよく似ていた。
「まあ、ゆっくりしていってください」
少年はメニューをテーブルに置くと、奥へと引っ込んでいった。
「めー姉、何飲む?」
色々あって、とても迷う。
「そうね…。私はミルクティーにしようかしら」
「じゃあ、リンはホットココアにする!!」
甘くておいしいよね、ホットココア。
「すみませーん」
さっきの少年を呼ぶと、すぐに「はーい!!」という元気な声が聞こえてきた。
「ご注文は?」
「えーっと、リンはホットココアで、めー姉は…なんだったっけ?」
「ミルクティー」
そうだった。
「ホットでよろしかったですか?」
「はい」
「兄さーん、ホットミルクティーとホットココアひとつずつお願いしまーす!!」
少年が叫ぶ。
「わかったー」
奥から、爽やかそうな男の人の声が聞こえてきた。
「誰かいらっしゃるんですか?」
と聞くと、少年は、
「オレ…じゃなかった僕の兄です。厨房にこもりっきりで、表に出てくるのは数年に一回ってところですかね」
へぇ…。
「そういえば、君はどこから来たんですか?この街に来る人って、大抵迷子なんですけど…」
言われて思い出す。
そういえば、この店に入った目的は、帰り道を聞くためだったということを。
「そうです。迷子なんです。帰り道、教えてもらってもいいですか?」
「あー…。やっぱり。どの辺りから来たんですか?」
町の名前を言うと、
「あ、すぐ近くですね。多分もう外に出たら知ってる道が見えると思いますよ」
と言われたので、特に何も考えず安心した。
と、そこに。
「おーい、できたから持ってってー」
「はーい!!」
どうやら飲み物の準備ができたらしい。
少年がお盆を持ってやって来た。
が、そのお盆の上には、飲み物と一緒にお菓子が二つ乗っていた。
「あの…、私達は飲み物しか頼んでないんですが」
めー姉がそう言うと、少年は、
「ああ、うちでは飲み物を頼むと、もれなくその月のお菓子が付いてくるんですよ。
今月は『エッグタルト』です」
そう答えながら、飲み物とお菓子を置いた。
「わぁ…。おいしそう!!」
「あ、ありがとうございます」
その後は、少年と少し雑談しながらお茶を飲んでいた。
「ごちそうさまでした!!おいしかったです」
「ありがとうございます。また来てくださいね」
「ハイ!!」
「ほら、リン、行くわよ」
「うん…。あ、最後に…
あなたの名前を、教えてくれる?」
思い切って、少年の名前を尋ねる。
「オレは、レンです。では、またのお越しをお待ちしております」
「レン君か…。また来ます!!」
カランカラン
外に出ると、そこには近所の道が通っていた。
驚いて後ろを振り返ってみると…
「店が、無い……?」
そこにあったのは、古びた建物だけ。
めー姉も、驚いた顔をしている。
が、すぐに優しい顔に変わって、
「きっと、此の世には不思議なことがたくさんあるのよ。さあ、今日はもう帰りましょ!!」
そう言って歩きだした。
自分もその言葉に納得して、めー姉の後について行った。
空には、金色の月が輝いていた。
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