いつの間にか眠ってしまったのだろうか、目を覚ますと薄暗い部屋の簡素なベッドに寝ていた。少し霞む頭を整えながらゆっくりと身体を起こす。
「スズミ…?」
「騎士?騎…っ?!きゃあっ?!」
無機質な金属音と共に足に痛みが走った。いきなり足元を取られその場に転んでしまう。視線を恐る恐る足に移して思わず目を疑った。両足には少し鈍色に錆びた鎖が巻き付いていた。少し引っ張ったり解こうとしてみたが、ジャラジャラと音を立てるだけでビクともしなかった。
「な…何これ…?」
「ごめん…解いてやれなくて…。」
「騎士?」
「もう少し…だから…。」
壁際に座り込んでいた騎士がフラリと立ち上がると同時に、ジャラリと同じ金属音が鳴った。その時初めて私は自分の両手が血塗れな事に気付いた。痛みは無い、少し浅黒く乾いた血が手を染めていた。金属音と共に足に鎖の感触を覚える。
「騎士?!」
「動かない…で…。」
騎士は自分の両手の鎖で私の足の鎖を外そうとしていた。多分両手の鎖は同じ方法で外してくれたんだろう。爪も指もボロボロになっていた。
「止めて…もう止めて!騎士…手がっ!」
「大丈夫…すぐ…解いてやるから…。」
「騎士…?」
騎士は明らかに息が上がっていた。それに声も途切れ途切れで力が無い、嫌な予感がして額に手を当てると驚く程熱かった。
「騎士?!凄い熱…!」
「大丈夫…。」
「大丈夫じゃないよ…!この熱…もしかして発作が…!」
「…っ!」
「騎士…?騎士!しっかりして!騎士!!」
「良い格好ねぇ、先生。犬みたいで可愛いわ。」
高い声が部屋に響いた。誰だろう…?女の人?
「騎士に何したの?!」
「私は質問をしただけよ、なのにその先生ったら教えてくれないんですもの。」
「酷い…幾ら何でもこんな事…!騎士凄い熱なのよ?!」
「ええ、貴女のお陰で確信が持てたわ。」
「え…?」
「奏騎士、治療薬の血清の持ち主…やっぱり貴方だったのね。」
無感情な目をした人達がぐったりしたままの騎士を引きずり出そうとした。
「止めて!止めて!騎士が…騎士が…!」
「煩いのよ!」
その女は躊躇いも無く私を蹴り付けると、綺麗な顔を歪めて言った。
「ずっと昔から目障りだったのよ…貴女の存在自体がね。」
BeastSyndrome -86.鎖-
錆びた金属で怪我をした時は注意して下さい…。
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