「なぁにこの人形。アタマが大きくてへんなのぉ」
「さわっちゃだめだ!」
と僕が言ったときにはすでに遅く、彼女の指に人形のひとりがぶらさがっていた。
「きゃー! なんなのこれ!」
人形を振り払おうと手を振り回す彼女。
「おっと!」
宙を舞う人形を僕はあやうくキャッチする。
「あぶない、あぶない」
僕の手の中で人形がびっくりした顔をして見上げている。
「大丈夫か?」
僕は人形を棚に戻した。
「ちょっと、大丈夫か? って聞く相手が違うわよ」
彼女はぷっとふくれている。
「人形は落ちたら壊れてしまうだろ。君はちょっと驚いただけじゃん」
「ちょっとどころじゃないわよ。何でその人形動くのよ!」
「ん~、簡単に言うと魂が入っているから。かな」
「何よ魂って。中にモーターでも入っているんでしょ」
それを聞いていた人形が、僕の方を見て手を振る。
「それじゃ本人に聞いてみようか」
僕は人形を棚からテーブルに下ろしてやる。
人形はパタパタと歩き出すと彼女に向かってペコリとおじぎをした。
「何よ、それくらいお茶汲み人形だってするわよ」
お茶汲み人形と言われて人形は僕に尋ねるような視線を向ける。
「江戸時代のからくり人形のことだよ。からくりというのは中に歯車とか入っていて…」
「ふーん。私そういうのとは違うよ」
「えっ、今しゃべったの? この人形しゃべったよね」
「そりゃ魂が入ってるんだから話したりもするよ」
「何? どうなってるの? どんな仕組み?」
「おっと」
人形をわしづかみにしそうな彼女から守ってやる。
「この子は小さなひとつの生き物だって考えてくれないかな」
「生き物って言われてもねぇ」
「ねぇ~」
と人形が彼女の口調をまねる。
「ちょっと待って。この部屋ってこの子のほかにもたくさん人形がいるわよね。もしかしてみんな動くの?」
「まぁ、そうだけど。ちなみにこの子にはミクという名前がある」
彼女が見上げた棚の中では小さな子たちが、ミクの様子を見て勝手に動き回っている。
「もう、ここに来るのやめるわ」
そう言うなり彼女は出て行った。
「あーあ、まただめだったねー」
「ねー」
ミクに合わせて人形たちが言う。
「どうして理解してくれないかなぁ」
「なー」
「ま、そのうちわかってくれる人も現れるよきっと」
ミクが僕を見上げてなぐさめてくれる。
「そうだといいけどな…」
僕はミクを棚にそっと戻してやった。早速今日の出来事をネタに盛り上がる人形たち。僕の方をちらっと見ては楽しそうにしている。
そんな僕の日常。
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