ーこれは、勝手な大人達によって離され、立場を違え、そのせいで道を間違えた少女とその少女を守ろうとして処刑されてしまった少年の御伽噺。
緑の娘を殺させたのは間違いだったのか…ふとそんな思考に陥る。
しかもそれに気付いたのはアレンー双子だった召使いを失ってからだった。
『あら、おやつの時間だわ』と言いながら処刑されていったアレン。
私はそれをただ、ただ見ていた。
あれは、私の口癖だった。
どのおやつも好きだったけど、アレンのブリオッシュは特に好きだった。
私はどれだけアレンに守られ、悲しい思いをさせてしまったのだろう…懺悔をしても仕切れない。
あれでも私と同じ歳だったのだ、美しい緑の娘に恋していてもおかしくはない。
それを、私は、嫉妬心だけで、
『殺してしまえ』と…
アレンに、「殺させた」
ねぇ、緑の娘よ。
そなたに願うのは違うのかもしれない。
でも、せめてアレンを赦してやってくれ。責められるべきは私なのだ。
そして、アレンよ。
心優しいアレン。
私はそなたが好きだったよ。
誰だって自分中心なはずなのにあなたはすごく優しかった。
もしかしたら私のことを恨んでるかもしれない。
でも、また生まれ変わって会えるのなら、またブリオッシュを作ってくれ。
そして、今度は一緒に食べよう。
「私の罪は、傲慢で、身勝手で、罪の無い民を、緑の娘を、そしてアレンを殺してしまったことだ。この手はもう赤く、黒く染まってしまった。だけど、罪は生きて償わ無ければ、アレン、そなたがくれた命がもったいない。だから、必死に、大切にして生きる。だから願わせてくれ」
一昔、傲慢でおやつのブリオッシュが好きだった王女、いや少女は呟いた。
そこには少年の薄い影が月明かりのせいか見えている。
少年はそこにいる少女に、精一杯囁いた。
「リリアンヌ、僕は君を恨んでないよ。だって、君にために、君を守るためにしたことだったから。
っていっても、伝わらないんだろうな…」
あの日、服を交換した日から僕は王女、君ーリリアンヌは召使いとなった。僕はそのことを全く後悔していない。でも、たぶん、天国という国へ行けないのはリリアンヌ、君が心配だからなんだろうな…。
君の手が黒く染まってしまっっているなら僕も同じで、だからそんなに悔やまないで欲しい。
前を向いて、小さな頃一緒に遊んで笑ってた頃のように笑顔で過ごして。
それが、一番君に、リンに似合うから。
ー少女はふと振り向いた。
少年の声が、自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたからだ。
「ふふっ…私もバカだなぁ…もうアレンには会えないと知っているのに。」
そろそろ戻ろう。
じゃないとクラリスに怒られちゃうな
また、海へ来るよ、アレン。
ー現実の夜が明ける。
しかし、悲劇に巻き込まれた人達の夜は明けない。
それは、少女が罪と、器に、大切な存在を失ってから気付くからだ。
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