だって、きょうはたんじょうびでしょ?りんとれんのたんじょうびでしょ?

おかあさんが、けーきをつくってくれて、おいわいしてくれるはずなんでしょ?

なら、なんで、おかあさんは、うごかないの?たおれたの?ちをはいてるの?

≪Birthday in the memory≫

イヤな夢を見た

ずっと前の話だ

時計に目をやる

[7:15]

いつも通りの時間だ。

何も焦ることはない

だけど、何故かこの日になると思い出して、鼓動が早まってしまう



私たちの運命が狂った日。


私たちが何もかもを拒絶した日。


私たちのおかあさんが、倒れた日。


それまで負の感情を知らなかった私たちが、それを知るのは早すぎた

”あなたたちのお母さんは…”

医者の冷酷な言葉、理解してしまった幼い心、流れた涙

思い出そうとすれば簡単だ

だけど思い出したくない


嫌な記憶



「リン、起きてる?」

「おっはよ。とっくに起きてる。」

「早くこいよ、ご飯冷める」

「わかった、今行く」

いつもレンの作った朝食を美味しいうちに食べるためにこの時間に起きているといっても過言ではない

結局食欲が自分の中で一番らしい。

まあ、もちろん勉強や青春なども大事だけど

「おまたせーっ!ベーコンエッグは半熟?」

「確認するとこそこかよ。で、どうすんの、今日。誕生日だけど、一応」

一応…ね。

レンも気を使ってくれている

「んー、とりあえず年内の部活は今日までだから友達とご飯食べるかも」

「言うと思った。俺も忘年会(仮)に誘われてる。じゃあ今年も各自でいいな」

「ラジャー。つか(仮)って何。某恋愛ゲームかよw」

「え、未成年だから酒は飲まないから忘年会ではないねみたいな。あと、俺の誕生日パーティーも含めるからって」

「忘年会の基準ってそこなの…?」

「らしい」

レンの友達って意味不だな

まあ、男子校だもんな。

「あ、そろそろ行かなくちゃ」

「いってらー」

そして、引っかかる記憶を置いていくために元気よく家を出た





「あれ、ミク早いね!パンもくわえてないし。今日どうしたの?」

「さすがに今年最後の部活ぐらいは早起きしようと思って。へ、変かな?」

「一般的には普通だけど、ミクの場合変かな」

「何それ!あ、そういえば今日リン誕生日だよね!誕生日おめでとう!」

「あ、ありがとっ!」

「やだ、リンってばテレてる?そのままデレてもいいよ?」

「いろいろ違うけどね!?」


やっぱまだ人に”おめでとう”とかいわれるのは慣れないな

まだ私の中に失った色が帰って来ていない証拠だ

あの時の傷はどうやら深すぎたようだ

嫌だな、思い出したくないのに


「リン、どうしたの?」

「え、いやなんでもないよ」

「レンくんとケンカしたー?」

「誕生日にケンカする双子って残念すぎるよね!?」

「それもそうだねーw」


とりあえず笑顔を保つだけで精一杯だった

記憶は何故こんなにも鮮やかなのか


少し早足で歩き出した。




「終わったー!!」

「お疲れ様でしたー!」

「どうする?元旦は一緒に…」

「お土産よろしくっっ!」

「来年も頑張ろうね!」


…年内最後の部活が終わった

部室には様々な声が飛び交う

この休みにスキーに行く人もいれば夢の国に行って年を越す人もいる

中には私のような非リアには縁のない会話も聞こえたが聞かなかったことにしておこう


「あっ、そういえば今日リンの誕生日だよね!」

「え、あ、うん!ありがとう!」

「マジで!おめでとう!」

「ありがとうございます…!」

グミちゃんに芽衣子先輩…

あ、そういえば芽衣子先輩って海斗先輩とリア充なんだっけ

「先輩、海斗先輩と良い年を迎えてくださいね♡」

「ち、ちょっと…//全然、そういうのじゃないよ!?」

「めーちゃん、行こう。あ、リンちゃん誕生日おめでとう!みんな良いお年を!」

「ったくもう…//」

テレてる芽衣子先輩も可愛い

でもとりあえず空気は読んどこう


「リンー、今日リンの誕生日パーティーってことでどっか行こー!!」

「ありがとー!!言うと思ったw」

「あ、アタシも行きたい」

「全然いいよー!暇人同士でリンという名の小娘のバースデーを祝ってやろうじゃないかい!」

「ミク何キャラだよ。あ、私も行くー!」

「よし、メンバーは揃ったね?じゃあ駅前のファミレスでいいー?」

「全然いいよー!!」

「あ、なんかありがとう!!じゃあさっそくいこー!!!」


ハイテンションなフリして、ココロの中では泣いてたり


ダメだ。ムダな思考は消さないと。

笑ってないと。


「リンー、いくよー!」

「はいはーい、なんか奢ってー?」

「生意気な小娘じゃな、仕方ない、今日だけ割り勘で一品奢ってやろうじゃないか」

「まじでなんなのそのキャラw」



「ただいまー」

「おかえりー、リンにしては早い気がするな」

「なにそのいつも遅い的な感じの」

「いや、だって本当じゃん」

「まーそうだけどさー」

「どーせお前のことだから、あの日のことでも思い出して苦しかったから早く帰って来たとかそんなノリだろ」

「レンのくせに生意気な」

「…図星だろ?」


そーだよ


あの日

あの日に


永遠に変わらないものはなくて

約束なんて所詮文字を並べたものに過ぎなくて

言葉だけの同情に嫌気がさして


人を信じることが出来なくなって


死なんて仕方がない。

たしかにそうだ。

だけど、

だけど、

”だって、きょうはたんじょうびでしょ?”

”おかあさんが、けーきをつくってくれて、おいわいしてくれるはずなんでしょ?”

なんで、あの日なのか

それが受け入れられないだけなのか

何故今もこんなに、こんなに、

私は偽っているのか

苦しんでいるのか


わかんないだけだ


「レンの馬鹿。」

「お前なー…過去のことばっか気にしててもしょうがないだろ」

「じゃぁ何。お前は一ミリも覚えてないの?」

「覚えてるよ、気持ち悪いくらい」

「人のこと言える立場かよ」

「あーもーマジリンめんどくせぇ。俺は寝る。」

「逃げたな」

「ちげーよ。でもいつまでも引きずってばっかいたら前に進めねーだろ。高校生ならそれくらい理解しろ」

「ちょっと夢の国行ってくる」

「逃げたのはどっちだよ…」


早く今日が終わって欲しい。

時計はまだ8時をさしているが、勢いよくベッドに潜り込んだ








”リン”


聞いたことのある優しい声

誰?

”いやだな、わすれてしまったの?”

”にしても、リンは私に似てまな板ね…”

誰?まな板は余計だ

でも、今 私に似て って言ったよね

もしかして…

「おかあさん?」

”あたり。よかった、覚えてくれてて”

嘘…でしょ?

お母さんは、昔の今日に倒れて別の世界にいるはず…なのに……

「なら私のキライなたったひとつの食べ物、わかる?」

”ザクロでしょ?”

…間違いない。おかあさんだ。

この微妙すぎるキライな食べ物は友達に言うとバカにされるので家族しか知らない

ねぇ、私は、もう一回、あなたに会いたかったんです

何年分もの悲しみや愛しさがこみ上げて、おさまらない

”ねえリン、今日は伝えたいことがあって私はここにいるの”

「伝えたいこと?」

”あなた、私がいなくなってから素直になったことある?レンにも友達にも嘘ついてるでしょ?”

なんで、

なんでわかるの

”なんでわかるのって思ったでしょ、当たり前よ。昔と全然顔色が違う”

顔色?

”昔のリンは、もっと…笑顔だったわ。でも今のリンはとても辛そう”

辛い…?

「辛くなんかないよ」

「元気だよ」

言葉で誤魔化しているのはわかっている

でも

胸の奥が痛い

”嘘をつかないで”

「嘘じゃない」

”ならなんで、今、笑顔じゃないの?
泣きそうな顔なの?”

泣いてなんかない

苦しくなんかない

「おかあさんと会えたからだよ」

”…リン、よく聞いて”

”私がこうしてあなたと会えるのはこれが、最初で最後なの”

”あなたが16歳になった瞬間、私とは会えなくなるの”

耳を疑った

最初で最後?

最後?

私が十六歳になったら会えなくなる?

”だから、あなたにこれから先明るく生きてもらいたくてきたの。ずっと私のこと引きずっているから、悲しそうだから”

ストレートで嘘のない言葉が突き刺さる

いままでのどんな言葉よりも苦しくて、痛い

”本当は元気にやってるとおもって、あなたとは会わないつもりだったんだけど…全然予想外だったから…”

予想外、

そのために…?

私、おかあさんに迷惑…かけた……?

「おかあさん、ごめんなさい…」

”もうこれ以上悲観的にならないで、''凛''。あなたには心からの笑顔が似合うから。

あなたは私に縛られる必要はないの、だからしっかり受け止めて歩き出して”


縛られていた


確かにそうかもしれない

あの日見た景色は、もう過去だ

覆すことはできないし、受け入れるしかない

だけど信じたくなくて、ずっと私だけ、時間が止まっていた

…何故レンが今私と違ってあんなに前向きで、同じ傷があると思えないほど普通なのかわかる気がした

あのときは

クラスメイトから大丈夫かと言葉だけの同情をされたり

親族のおばさんにいろんな悪口を言われたり

近所でも会うたびに「大丈夫?」しか言われなかったり

それが人間なのか、と早々に理解してしまい、結果人を信じることが出来なくなってしまった

上辺だけの笑顔

上辺だけの友情

上辺だけの涙

上辺だけの世界で、私は回っていた

でも

レンはとっくに気づいていた

偽りが全てではないことを

だからケンカした、って言って泣きながら帰ってきたり

友達に彼女ができたって悔しそうに報告していたり

テストで自己最高点をとって嬉しそうな顔で自慢してきたりしてたんだ


…やだな、

涙が出てくる

なんで最初から全部決めつけて諦めてたんだろう

受け入れることができないなんて言い訳にすぎなくて、

結局、素直になれなかっただけで、

だから私の感情は、随分前に枯れてたんだ

涙も笑顔もよろこびも、色を無くしてたんだ

「ぅうぅぅぅぅ……」

みっともないな、

明日笑われちゃうかも

でも夢の中だから誰も見てないか

素直になれなかった少女は泣き続ける

”凛は、いい子。とってもいい子。だから、もっと素直でいいの。本当の自分でいいの”

…おかあさん。私を産んでくれてありがとう。

私の色を取り戻してくれてありがとう。

私、精一杯生きるよ。

おかあさんが上から見て一目でわかるくらい、

明るい、凛になるから


”凛、お誕生日おめでとう”


止まっていた時計の針は進み始めた

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リンレン誕】Birthday in the memory

ギリギリ間に合った……!

頑張ったもののこんなのしか書けませんでした。

そして異常に長い。無意味に長い。

…まあいいや。

リンレンふたりとも誕生日おめでとー!!←

閲覧数:246

投稿日:2013/12/27 22:40:42

文字数:4,589文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    その他

    母性ある人っていいよね、安心するもん
    ぎゅっとされると

    まぁ、私が人にくっつくのが好きっていうのはありますがw

    2013/12/31 11:03:41

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