じっとり湿った機能不全の愛が
部屋の片隅で腐っていったとき
燦燦(さんさん)と注ぐ空白感
燃え失せた熱情に瞳を揺らすの
かつては確かにあった萎びた愛の顕在にそっと蓋を

あなたのくれた真珠のピアス
海に投げ捨てたからきっと泡になったわ、だとか
お揃いで買ったブラックベリーの香水
あとは空気に溶けて消えるだけなのね、とか
言いたいことは後から積もるばかり

あなたの愛ってまるで剥製みたいね
って、捨て台詞みたいにその背中に投げつけて
颯爽と立ち去ればよかったなんて
今更そんな
「最低」の中にだってきっと
何か意味があったなんて馬鹿みたいなこと
私たちの恋は見返りで成り立っていたのかもしれないね

歪な欠片を探さないで
そうやって解(ほど)こうとしないで
瞳に黄玉(トパーズ)がさんざめくとき
あなたは何を諦めたの
かつてはまなざしに含めたやわらぎをそっと伏せて

きっとあなた、あの夜景を思い出して
最悪だって私の嫌いな笑い方するのよ
出会ったときの温もりを忘れたあなたの指先
ライターを弄ぶみたいに手持ち無沙汰で
抱(いだ)いた空走感を転がすばかり

子供じみた「もし」ばかりが積もっていっても
あなたの心の輪郭を掴めないまま恋は終わったの
渇いた眩暈の行く末をまぶた持ち上げ見つめていた
剥がした皮下には槐夢(かいむ)と未視感が
とぐろを巻いて蹲っていた

私の恋ってまるで人形遊びみたいね
って、もう伝えることはできなくて
私たちの関係が薄氷みたいな危うさで成っていたなら
この結末も初めから決まっていたのかもしれないね
って今更思ってみたりするけれど
ただ、もしあなたにひと言だけ告げるなら
さよならお元気で

ライセンス

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剥製の恋

とあるボカロ曲に触発されて女性目線の失恋の歌詞を書きました。

無断使用はご遠慮ください。

閲覧数:899

投稿日:2021/04/08 19:14:34

文字数:711文字

カテゴリ:歌詞

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