詩っぽいものを書きます
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幼いころ、ひどく夢見の悪かった翌朝
本当に体内に赤い血が流れているのか
一晩にしてその普遍性が揺らいでしまうことがあった
そんな時は温かいミルクでも携えて
毛布にくるまっていればいいのだと
もう少し大きくなってから知った
花を紡いで創った地獄に黒い鐘が鳴るらしい
茫漠とした海原では渡る風を孕む白い帆...夜に抱かれて見る夢は
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砂上の虚像
作詞:瀬川 隼
砂よ お前はいずこから来たのだ
在るべき処へお帰りと告げたくとも指先は動かない
畳の上にざらつく違和感
闇明かりがぼんやりと覗き込む六畳半には
重なるように横たわる二つの体躯
死体のように冷たく湿った足先が触れる
岸にくだける波の音(ね)はゆっくりと立ち昇り
その名残りは...砂上の虚像
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白々した観念を前頭葉に飼っている
生まれ落ちてしまった生涯最大の不幸を携えて
地べたで泥をすする代り映えしない毎日を
漠然と明日が来なくても困らないような
今日をやり過ごしている
他人(ひと)の褒めてくれた白い翅はもうないけれど
飛び方をすぐに忘れてしまうわたしには丁度いいくらい
気圏に焦がれるわた...天使は燃えていた
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旧校舎の春めく窓辺ではけやきの梢にて
下手くそな囀りがくり返し聴こえてくる
国語準備室では切れかけの蛍光灯が瞬き
まばらな親しみを囁いている
文明の証によってほとんどが死滅してしまったのは
どこか見覚えのある冷たい隙
ブラインドの隙間に切り取られた光の刺繡を
リノリウムの床に施して
視線を少しずらせ...未明に嘯くプレリュード
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五月、無垢の残像が君の向こうで揺らめいた
絶対零度の夏の吐息は気配
土瀝青(アスファルト)に散っていく濃灰(のうかい)の劣等感
曇天に飽く僕はすがめた片目に
あの日の君を白昼夢に見る
さざめく都会の狂騒は鼓膜をすり抜けて
僕だけが鮮やかな無彩色の世界を嘲笑う
君の声を忘れてしまいそうな愚か者をどうか...灑ぐ夏の移り気は不条理に
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じっとり湿った機能不全の愛が
部屋の片隅で腐っていったとき
燦燦(さんさん)と注ぐ空白感
燃え失せた熱情に瞳を揺らすの
かつては確かにあった萎びた愛の顕在にそっと蓋を
あなたのくれた真珠のピアス
海に投げ捨てたからきっと泡になったわ、だとか
お揃いで買ったブラックベリーの香水
あとは空気に溶けて消え...剥製の恋