五月、無垢の残像が君の向こうで揺らめいた
絶対零度の夏の吐息は気配
土瀝青(アスファルト)に散っていく濃灰(のうかい)の劣等感
曇天に飽く僕はすがめた片目に
あの日の君を白昼夢に見る

さざめく都会の狂騒は鼓膜をすり抜けて
僕だけが鮮やかな無彩色の世界を嘲笑う

君の声を忘れてしまいそうな愚か者をどうか
その手で罰してくれないか
馬鹿みたいな青を独り切り裂く飛行機雲
まなうらに凝(じっ)と焼きつけて

六月、逃げ水は微かな匂いだけを残した
無味乾燥の昔日に手を振って
混凝土(コンクリート)の上に融け落ちるありさまは生々しく
炎天を倦(う)む僕はかざした掌の下、
頭上の碧空(へきくう)に押し潰されていく

無人の市街地に響く蝉の音は鼓膜を穿って
僕だけが鮮やかな無彩色の世界を嘲笑う

君の声を忘れてしまいそうな愚か者をどうか
その手で罰してくれないか
嗤えるくらいかそけく一筋の光芒(こうぼう)
指先でそっと触れたくて

世界は次第に静寂(しじま)に覆われて
白銀に彩られた幻像も薄らいでいく
ほどける現世(うつしよ)の剥片に
僕はゆっくりと両つの目を閉じる

馬鹿みたいな青を独り切り裂く飛行機雲
まなうらに凝と焼きつけて

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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  • オリジナルライセンス

灑ぐ夏の移り気は不条理に

ボカロ曲二曲に触発されて初夏の歌詞を書きました。

無断使用はご遠慮ください。

閲覧数:895

投稿日:2021/04/08 19:22:20

文字数:516文字

カテゴリ:歌詞

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