「ねーねーレンー」


「ん?」



本屋から帰ってきたリンが僕に話しかける



「さっき,本屋に行ってきたわけね」


「うん
 新刊が出たんでしょ?」


「そう」


「で?」


「でね,中身は一緒なのに表紙が3種類出てたわけね」


「あぁ……」


「で,全部買ってきたわけよ」


「うん」


「……店員に変な目で見られた」


「それは,何となく分かるかな
 ゲームもさ,初回限定版とか通常版とか,特典CD付きとか応募券付きとか,いっぱいあるわけ」


「うんうん」


「だから,結局全部買っちゃうんだよー」


「だよね?」


「……え?」



リンが追い詰めてくる



「これって,普通のことだよね?」


「ま,まぁ……」



僕的に言わせればそりゃあ普通のことだ
まぁ,流石に自分用,布教用,保存用,観賞用とかはしないけど……



「だよねー」



ホッとしたようなリン
どうしたんだ?



「いや,ね?
 他人の目ってちょっと気になるじゃん?
 だからさ,一応意見聞いておこうと思って……」



『他人』で僕をチョイスしたのか?
僕は,どちらかというとリンの同類だと思うけど……



「あ,そういやさ」


「ん?」



リンが買ってきてくれたバナナを袋から取り出し,食べようとしていると忘れていたかのように手紙を取り出した



「依頼?」


「うん」


「……」


「どうしたの?
 読まないの?」


「……レンが読んでよ…………」



リンが僕に手紙を押し付けてきた
いったい何が書いてあるんだ!?



「じゃ,じゃあ見たまま読むよ」


「おk」


「『リア充爆発しろ』……」


「……」


「なぁに,これくらい気にしなぁい」


「そ,そうだね」


「『あぁ,毎日がダルい
  ダルすぎる
  宇宙人とか,未来人とか,異世界人とか,超能力者とか現れないかなぁ……』」


「……そう簡単には出てこない輩だよね」


「『そこで,お願いです!
  優秀な探偵さんがいると聞いています』」


「宇宙人探しはしないよ!?」


「『私の,退屈を潰して欲しいのです
  私にはバリバリの趣味があります』」


「おお」


「『アニメ見ることと,漫画読むことと,ゲームすることと,パソコンすることと,漫画描くことと,ラノベ読むことと,ファンレター書くことと,コスプレの衣装作ることと,えぇと,グッズ買うことと……
  書ききれないのでここら辺で終わらしますが,そんな感じです』」


「……」


「『でも,私はこの趣味を周りに打ち明けることが出来ません
  だって,皆偏見の目で見てくるでしょ?
  だから,お願いです
  一日だけで良いんです
  私の趣味友達になっていただけませんか?』」


「……ま,まぁ,僕は構わないけど…………」


「何日?」


「へ?」


「それ,何日?」


「えぇと,『この依頼を受けていただけるのであれば,3日後,お宅に伺わせていただきます』だって」


「無理」


「えぇ!?」


「わたし,3日後,予定が入ってるのよ」


「え……」


「だから,行くならレン一人だよね」


「……が,頑張ります…………」


「よろしい」








どうしよう……

この文章を読むだけででも,依頼主の容姿が容易に想像できてしまう


―――あれ?
   容姿と容易……
   あ,別にかかってないか―――


これは,偏った自分のイメージだけで作るすごい悪い姿なのかもしれないけど,
イメージは『眼鏡』『リュック』『ぽっちゃり』『バンダナ』とかそんなワードが浮かんでくる……


嫌じゃないけど,話せるかどうかも分からない
もしかしたらマイワールドに飛んでいって,帰ってこないかもしれない

リンにも来て欲しかったなぁ……

























3日後,朝,インターフォンが鳴った







「すいませーん
 依頼した者ですがー」



家の外から聞こえてくる声

あれ?
可愛らしい女の子の声……?



「はぁい」



部屋から返事をする
外まで聞こえているかは分からないが,とりあえず大きな声を出してみた



「行ってくるねー」



リンはまだ部屋の中だろうから,廊下から声をかける












鞄を持って,家を出ると驚きの光景が広がった



「初めまして
 依頼させていただいた者です」


「は,初めまして」



ペコリとお辞儀をしてきた依頼主さんは,何というか……

可愛い…………


予想外の展開だった



「じゃあ行きましょうか」



笑顔で話しかけてくる依頼主さん



「あ,名前言ってませんでしたね
 私,現在,この下界に修行しに来ました天使のグミです」


「て,天使!?」


「はい」



満面の笑みを浮かべるグミさん
へ……?



「私はこの三次元という荒んだ世界に堕とされてしまったのです……」



あぁ,そういうこと……























「まずは,何処に行くんですか?」


「この近くでイベントがあるからそこに行く」


「分かりました」



彼女の足取りに迷いはない
よく行く場所なのだろうか?



「ねぇ」


「はい?」


「レンくん,だったよね?」


「はい」


「コスプレに興味はない?」


「え……?」


「こすぷれ
 分かる?
 こすちゅーむぷれいやーの略」


「いや,そうですけど……」


「いや,あのね
 私,作るの好きでこの前ノリで,男のコが着るやつを作っちゃったわけ」


「はい……」


「どう!?
 着ない!!??」


「着ませんよ!!」


「えぇ……
 絶対似合うと思うのにぃ」


「嫌ですよ
 は,恥ずかしいじゃないですか……」


「楽しいよー?」


「いや,そうかもしれなけども……」
































2時間後,僕らはイベントとやらを終え,次の目的地に向かっていた









「2時間って結構いましたね」


「え……?」



グミさんの心底不思議そうな顔
可愛い顔
うん
黙っていてほしい



「2時間とか,短すぎでしょ?
 本来なら朝から夜まで居てもいいぐらいなのに……」


「マジで……?」


「うん
 でも,今日は他にも近くに目的地があるからさ
 ってか,そっちが本題だしね」


「あー,そーなんだー」


「棒読みだよ?」



はは
何のことだい?



「次は何処に行くわけ?」


「行ってからのお楽しみ」



楽しそうに笑うグミさん
とってもとっても可愛らしい美人さんだ
うん
目は癒されるよね

目『は』





























30分後,僕は複雑な心境でいた







今身につけている服は,可愛らしいフリフリのついたお洋服
きゅぴーんのくるりーんのきらきらぁ,なオーラ漂う服


『次の目的地』というのはコスプレ会場だった
で,ここはコスプレ以外の人は入れないらしくて……

半強制的に着せられたこの服
せめて,ズボンは無かったのか!?



「あ,あのさぁ……」


「ん?」



グミさんはグミさんで何か凄い格好をしてる
その片手に持ってるやつ,何?
バズーカ?



「他の衣装はない……かな…………?」


「何で?
 すごい似合ってるよ?」



そんな,濁りの無い目で僕を見つめられても……



「ろ,露出度が……高くない…かな…………?」


「えー
 普通普通
 もっと多い人いるよー」


「え,いや,そうかもしれないけどさぁ……」


「大丈夫!
 完璧だよ!!」



グミさんが僕の手を引く

あぁ
これが普通の格好で,場所も近所の公園とかだったらデートっぽくなってたんだろうなぁ……



「すいませーん」


「はい?」



誰かに話しかけられたようだ



「…………」


「…………」



?
声が聞こえない
グミさんの前にいる人を見てみる

ふむ
カメラを持った男の子だ



「な,なんで……」


「お,お前こそ……」



?
知り合いなのか?



「レンくん!」


「え? 何!?」


「逃げるわよ!!」


「えぇぇぇぇ……」



















腕が千切れるかと思った
グミさんは前も後ろも見ず,ただ僕の腕を掴んで全速力で走っていた
僕が,周りからの目線にぐさぐさと刺され,もう精神瀕死状態になった頃,ようやく人が居ないところまで来れた



「ど,どうしたの?」


「アレ,クラスの男子……」


「え……」


「ヤバイよぉ…………」


「だ,大丈夫でしょ」


「もし!
 もし,言いふらされたらどうしよう!!??」


「相手も見られちゃったんでしょ?
 立場はお互い一緒でしょ」


「そうかなぁ……?」



さっきまでの笑顔は何処へ行ったのやら



「あの,手紙渡してもらってもいいかな?」


「え,あの人に?」


「うん」


「僕は構わないけど……」


「ありがと」














僕は,場所に戻りさっきの男子を探した
その人は結構すぐ見つかって,手紙を渡すのは簡単だった



「これ,グミさんから渡せって言われたんですけど……」


「え?
 あ,ありがとう……」


「何て書いてあったんですか?」


「えーとねぇ……
 『―――くんへ
   学校では,話しかけてこないで』」


「……だけ?」


「……うん」


「ま,まぁ『では』だから,他ならOKだよー,的な感じだと思うよ!
 そんなに,落ち込まないでぇぇ!!」


「折角,趣味の話できる人が現れた思ったのに……」


「まぁまぁ……」



落ち込む人を一人,置いていくのは少し罪悪感があったけど,
早くグミさんのところに戻らないといけなかったので,その場を立ち去った
































「次はねー」


「まだ,あるの!?」


「うん」


「えぇ……」



いつの間にか,僕より年上のグミさんだけど,タメ口で喋っていた
まぁ,いいよね
そんな,お偉いさんでもないだろうし



「これからバイトなんだ」


「え? 何?
 僕も,バイトするの?」


「うん
 今日,一人,体調不良で来れないんだってー」


「ま,まぁ,仕事はね
 ちゃんとやらないといけないからね」





















僕が,『おかえりなさいませ ご主人様ぁ』とか言うようになったのは,それから10分後のことだった
















































「ありがとねー
 助かったよー」


「い,いや,別にいいよ……」


「あ
 お礼といっちゃなんだけど,今日,イベントでゲットした同人誌をそなたに授けましょう」


「え……」


「私のオススメだからさ」


「あ,ありがとう……」



いいのかな……
それに僕,これの原作知らないし……



「いいの?
 僕なんかにあげちゃったら,自分の分は?」


「大丈夫だよ
 まだ,2冊あるからさ」


「あぁ……」
















「それじゃあね」


「うん」



グミさんは僕を家まで送ってくれた
普通,逆な気がする



「今日は,すごく楽しかった!」


「まぁ,喜んでもらえたならいいよ」


「本当にアリガトね」


「うん」


「また,依頼するかもー」


「うn……え!!??」


「じゃーねー」


「ちょ! それは!!」



グミさんは逃げるかのように走り去っていった
あぁ……
















「ただいま……」



この家を出たのが朝8時
現在は夜の8時前

半日も,出かけてたのかぁ……
普段なら有り得ないことだよ……



「おつー」



食卓で,一人カップラーメンの出来上がりを待っているリンが声を掛けてきた



「あ,ゴメン」


「いーよ,いーよ」



リンは自分じゃ料理が作れないから,いつもは僕が作ってるんだけど……



「お腹空いたよね」


「うん
 あ,こっちのはレンの分ね」



なんと!
心優しいお姉さまは,僕の分にもお湯を注いでくれていたようだ

僕がこのタイミングで帰ってきたから良かったものの,この時間よりも遅く帰ってきてたらどうしていたんだろう?
とかいう疑問は頭から除外するとしよう











「レン?」



ラーメンをすすりながら,リンが話しかけてきた



「ん?」


「何か買ってきた?」


「ううん」


「えー
 そこは,何か買ってこないとー」


「あ,グミさんから漫画もらった」


「マジで!?
 見せて見せてー」



勝手に鞄の中をゴソゴソとあさりだしたリン
ま,いっか
別に見られたら困るようなものは入ってないし……



「レン……」


「ん?」


「その『グミさん』ってどんな子なの?」


「えぇ?
 あぁ……
 可愛らしい清楚な子だよ
 まぁ,趣味がアレだけど……」


「……そう」


「ん?」


「レン……
 貴方はお姉ちゃんの知らないところで大人になっていたのね
 分かってるわ
 お姉ちゃん,口出しはしない
 うんうん,そうよね
 14歳……
 えぇ,思春期だものね」


「リン……?」


「お姉ちゃんは,レンの本棚にどんな漫画が並んでようと気にしないからね!!」



ドタドタと2階へ上がっていくリン

漫画?
思春期?





よく分からないが,折角なのでさっきまでリンが見ていたグミさんからもらった漫画を見てみる




……わーお
えろちっくだよー











その夜,リンの誤解を解くのに3時間ほどかかりました

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

こちら鏡音探偵所×「何やってんだこんなところで」by関係者の皆様

ここまで読んでくださった貴方
ありがとうございます!




今回は一応オリジナル……
いえ,思いっきり一曲登場してますね
かたほとりPさんの『隠れオタクでごめんなさい』という曲なのですが,GUMIの曲で,可愛い曲です
今回出てきた,グミの元キャラと、内容に少し使わせていただきました

それでは,素晴らしき原曲様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10471387






色々とぐっちゃぐちゃになりました
あと,ほとんどリンが出てこないという……

リン,ごめんね!
また,ボケが必要なときには出すから!!





あと,何か,学校って怖いですね
PCの前に座る時間を驚くほど割きますwww






ご意見・感想いただけると嬉しいです
よろしくお願い致します

閲覧数:365

投稿日:2011/04/13 00:53:37

文字数:5,861文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • シベリア

    シベリア

    ご意見・ご感想

    こんにちは!!シベリアです。
    以前はメッセありがとうございました^^

    すごいです!グミの気持ちがものすごくよくわかるうちってwww
    このシリーズ好きです! 面白い!
    レンがメイド・・・ああぁ!2828してきた!((黙れ変態
    いいですよね、隠れオタクでごめんなさいっていい曲ですよね!
    クラスの人にばれたくない気持ちはすごい共感できます!

    ブグマもらいます^^

    2011/04/15 22:50:20

    • アリサ

      アリサ

      ご感想,ありがとうございます!

      コメ&ブクマ感謝です!!



      グミ,いーですよねーww
      そして,レンのメイド!
      メイドですよ,メイド!!
      やっふーですよwww!!!

      やっぱ,メイドといったらレン
      レンといったらメイドですねwww

      ↑朝なのに,珍しくテンション上がってますww


      クラスの人はねぇ……
      バレたくないですよねー
      「お前,オタクかよー」とか軽く言われるの,嫌です……

      まぁ?
      自分は?
      ファイルとか,ストラップとかが超キャラ物なので,
      ファイルとかを取り出すたびに「オタクー」とか言われてます……

      人の目は気にしないー気にしないーwwww

      2011/04/16 09:05:21

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