夜。カイトは片手にアイスをメイコは片手にお酒を持ってリビングで談笑をしていた。この時間帯は未成年組のミク、リン、レンはもう寝ている時間だ。なので、大人組のカイト、メイコ、ルカはゆっくりまどろんだり時には家族会議をしたりする。ルカは新曲のレコーディングの為しばらく家を留守にしていて今夜もいない。

ピカッ!!          ゴロゴロゴロ………………

「ん?」
 カイトはスプーンを口にくわえてふとリビングの窓を見た。
「カイト?どうしたの?」
「めーちゃん。さっき、光らなかった?」
 カイトは窓の向こうを指さした。メイコもそれに釣られて窓をみた。

ピカッ!!          ゴロゴロゴロ………………

外は暗闇で支配されていたが一瞬白く光った。そして、微かだが音も聞こえてきた。
「雷ね。」
 そう言いながら、メイコは大好きなお酒を一口飲んだ。
「今夜はお呼び出しが掛かりそうね。」
 チラッと上を見た。
「そうだねぇ。」
 カイトも一緒に上を見ながら好物のアイスを口に運ぶ。
 二人の脳裏には緑の髪をツインテールにした少女を思い出した。
 彼女は雷が大の苦手でいつも大人組の誰かが彼女が寝るまでずっと傍にいた。

ピカッ!!      ゴロゴロゴロ………………

 しばらくして光と音の間が短くなり音も大きくなってきた。
「だいぶ、近づいてきたわね。」
「ほんとだ。」
  ガタガタガタ バタバタバタ!!
なにやら上が騒々しくなった。そして、一気に階段駆け抜ける音がするとリビングに誰かが駆けこんできた。
「メイコお姉ちゃん!カイトお兄ちゃん!」
「「ミク。」」
 噂をすればなんとやら。駆けこんできたのは二人が噂をしていた緑のツインテールの少女、ミクだった。
 枕をコレでもかというくらい強く抱きしめ瞳には涙が一杯たまっていた。

ピカッ!!     ゴロゴロゴロ……………

「きゃぁぁぁぁ!!」
 ミクは悲鳴を上げながらメイコに飛びついた。メイコは慣れた手つきでミクをあやす。
「大丈夫、大丈夫。家の中だから。」
 子どもの頃もこんな光景があった。外が明るい時も暗い時も関係なく自分たちの所に逃げるように飛び込んで来た。
 今もなお雷は鳴り続けている。メイコは笑いながらおもむろに窓の外を指さした。
それに釣られてミクはメイコが指さした窓を見た。

ピカッ!!     ゴロゴロゴロ……………

 しかも、タイミング良く雷がなり、もろに雷の光を見てしまったミクちゃん。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 窓から目をさらし絶対に見ないぞと言わんばかりに目をつぶってメイコに再度抱きついた。
「よしよし。大丈夫。大丈夫。」
 メイコは優しい声で優しくミクの頭を撫でるが顔はミクの反応を思いっきり楽しんでいるようだった。カイトからは面白い獲物を見つけて遊んでいるように見えた。
(めーちゃん、怖いよ。)
 改めてカイトは絶対に死んでもメイコに自分の弱みを握らせないようにしようと固く誓った。

ピカッ!!    ゴロゴロゴロ…………!

 またもや、雷がなった。音も先程より大きくなっていた。
「うわ~~~~!!!」

ドタドタドタ!!!   バタバタバタ!!!!

「なんだよ!!急に!!俺のベッドに入ってくるな!!!!」
「だって、雷が鳴ってるんだもん!!!一人は怖いよ~~~~!!!!」

ピカッ!!    ゴロゴロゴロ…………!

「また、なった~~~~~!!!レン、何とかして~~~!!!」
「うわっ!!!リン!!そんなに抱きつくなぁ!!苦しい~~~。何とかしろと言われても…………」
 急に2階が騒がしくなった。カイトとメイコはリビングの天井を見上げてこう言った。
「「忘れてた。」」
 二人は完全にスッカリ忘れていた。我が家にはもう一人雷嫌いの姫君がいた事を。メイコはアチャーと言いながら額に手を覆った。
「リンの事すっかり忘れてた。」
「僕も。でも、レンがいるから大丈夫だよ。」
 カイトはノホホンとアイスを食べた。

ピカッ!!    ゴロゴロゴロ…………!

「きゃーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
 リンとレンの叫び声と悲鳴が家中に響いた。
「カイト。」
「ん?」
「大丈夫じゃないみたい。レンがリンに殺される。あたしはミクを部屋に連れていくから、行って来い。」
 そういって、天井を指した。
「(え?命令口調ですか?)………了解。」
 カイトは空になったアイスのカップをメイコはお酒を片付けると戸締りの確認をして2階に上がった。
 階段を登りきると各々がおやすみの挨拶をすませメイコはミクの部屋へカイトは未だに騒いでいるレンの部屋に向かった。
 コンコン
「リン、レン。入るよ~。って聞いてないか。」
 カイトはそろりと部屋に入ると静かにドアをしめた。これまた、シズシズと静かにベッドに近づく。
 ベッドにはモッコリと二つの山があった。
「ん?げっ!?」
ベッドを覗いてみる。カイトが見た光景は修羅場となっていた。リン本人はレンに抱きついていると思い込んでいるようだが実際はレンの首を絞めていた。レンは真っ青な顔をしてもがいていた。メイコの言うとおりレンがリンに殺される所だった。
「待った、待った!!リン!!レンが死ぬ!!!」
 カイトは急いで止めに入った。
「ふぇ?カイ兄ぃ?」
 気付いたリンは目線をレンに降ろした。
「きゃっ!!レン、ごめんなさい。」
 レンの顔を見てすぐに首から手を離した。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。だずがっだぁぁぁぁぁぁ。」
 リンの首から解放されたレンは肩で大きく息を吸った。空気がこれほどおいしいと感じたのはいつぶりだろうか?
 落ち着いたところでレンはリンを睨んだ。
「リーンー。」
「ごめんなさい。」
 レンのあまりにも怖い顔を見てリンは冷や汗を出した。リンとレンを怒らせると一番怖いのはレンの方だ。この間、カイトがレンの大事にしていたマイク付きヘッドホンを誤って壊してしまい言葉では言えないくらい大変な目にあった。まぁ、カイトが血だらけになったのは言うまでもないか。
 リンが何度も謝っている時だ。


ピカッ!!ゴロゴロゴロ!!!!!!


 今までより一番大きく雷がなった。
「うわっ!」
「きゃーーーーー!!」
「わお。(今の雷近かったなぁ。)」
 レンは驚き、リンは一目散にスッポリと頭から布団にもぐり、カイトは驚きつつもノホホンと窓を見た。
「ひっく、ひっく、ひっく。」
 布団の中からすすり泣きが聞こえた。
「カイ兄ぃ~~~。何とかしてェ~~~。」
 リンは布団から手だけを出して窓の方を指さした。
「お前なぁ。」
「何とかしてと言われても、自然相手は兄さんもお手上げだよ。」
 レンは呆れた顔でリンを見た。カイトは苦笑いしながらリンの頭を優しく撫でた。
「それじゃぁ・・・・・。」
「「それじゃぁ?」」
「レンと一緒に寝てくれる?」
「いいよ。」
 カイトは空いているリンの左隣に横になった。レンはちょうどリンの右隣にいるのでリンを真中にして挟む感じ川の字になった。
「ねぇ、あの歌うたって。」
頭を目まで出して涙一杯溜った瞳でレンとカイトを見た。
「・・・・・・・・・・・・・・///////////////////」
 レンは顔を赤くしてそっぽを向いた。
「うーん」
 カイトはリンの前髪当たりを優しく撫でながらリンが言った『あの歌』が何なのか笑顔で考えていた。
「もしかして、この間レンと歌った新曲?」
 先日、レンとカイトにデュエットの新曲ができた。新曲の発表はPVの撮影が終わってからになっているのだが、新曲が出来た事を知ったリンが大はしゃぎして早く聞きたいと言い出したので特別にアカペラだがレンと一緒に歌ったのだ。
「うんうん。」
 リンは必至になって首を縦に振った。
「レンとカイ兄ぃの声のハモリキレイですごく落ち着くんだもん。子守唄みたい。」
 布団の合間からリンのちょっと照れ笑いした顔が覗いた。
あの時も二人が歌い終わるとリンは心地よい寝顔をして寝ていたのだ。
カイトはチラッとレンを見てアイコンタクトで歌っても良いか問うた。レンはそれに気付くと無言で頷いた。
 歌うまえにアーと声を出して音を合わせる。
「レン、大丈夫?」
「OK!」
「それじゃ、リンいくよ?」
「はーい。」
 リンは心をときめかせ明るく返事した。
 二人はスーと息を吸うと歌い始めた。
レンの少年じゃないと出せない高いけど低い声とカイトの大人の低い音の声が見事にマッチしていてとてもキレイにハモっていた。
 リンは始め目をキラキラさせて聞いていたが目を閉じてキレイなハモリに耳を傾けて聴いていた。レンとカイトの歌声が胸に心地よく響いていく感覚を感じる。しばらくすると睡魔が徐々に襲ってきた。
 二人が歌い終わった時にはすでにリンは安心した寝顔で眠っていた。
そっと、優しくリンの前髪を撫でてやる。レンの方を見ると疲れたのか眠たそうな目をしてゴシゴシと目をこすっていた。
「レン、お疲れ様。レンも寝ていいよ。」
 カイトはレンの頭もグシャグシャと撫でた。
レンは頷くと床についた。しばらくするとレンの安定した寝息が聞こえてきた。レンが寝入るのを見送るとカイトもゆっくりと床に着いていく。
 雷はいつの間にか遠ざかっていたようで音が小さく聞こえた。
雷の音を遠耳にカイトも夢の世界へと旅立った。





 チュンチュン チュンチュン
 カーテンの隙間から一筋の光が優しくレン、リン、カイトを包む。
最初に起きたのはカイトだった。
「んっ。朝?・・・・・・・・・・・・うわっ!?」
目覚めて早々目にしたのは目の下にクマができやつれた顔でカイトの顔ジーとみているメイコだった。
「バカっ!二人が起きるでしょ!!」
 急いでカイトの口をふさいだ。チラッとレンとリンを見るが二人はまだ夢の中だった。
「ごめん、ごめん。」
 改めて小さい声で話す。
「おはよう。めーちゃん。」
「おはよう・・・・・。はぁ。」
「その顔どうしたんだ?」
「なかなか寝かせてくれなかった。」
 メイコはウ~とうなりながらカイトの胸に頭をうずめた。
昨夜、カイトと別れたメイコはあの後ミクをミクの部屋に連れて行き寝かしたが雷が怖いからと言ってなかなか寝てくれなかった。しかも、自分より先に寝るなと釘を刺されたものだから寝るにも寝られず今に至る。
「それはご愁傷様です。」
「カイト!!」
「はいっ!」
「私の変わりに朝ご飯作って!」
「え!?」
「今すぐ!パンが良い!はい、決定!!」
 私は寝ると言ってメイコはカイトの有無もなしにさっさと自分の部屋に帰って行った。
「やれやれ。んーっ!」
 カイトはメイコを見送ると大きく背伸びをした。二人を起こさないようにそっとベッドから降り部屋を後にした。扉を閉める際、ベッドの二人を見る。二つの山がリズムよく上がったり下がったりしていた。
「おやすみ」
 そう言うと静かに扉を閉めた。
部屋に残ったリンとレンは同じ夢でも見ているのだろうか?ベッドの中で天使のような可愛らしい笑みを浮かべて寝ていた。
 そんな二人をカーテンから差し込んだ光が優しく包む。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

雷の夜に

ニコニコ動画である歌い手さん達のコラボの動画見てピーンと頭に浮かんだ話です。私自身、雷が大っ嫌いなのでこういう事があったらいいなぁという妄想も半分入ってます。

私の中のカイトは皆に優しい頼れるお兄ちゃんです。

ピアプロで初めて小説を投稿します。ダメダメ文ですが、そこは暖かい目で見てください。

閲覧数:367

投稿日:2011/03/28 21:56:16

文字数:4,648文字

カテゴリ:小説

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  • シベリア

    シベリア

    ご意見・ご感想

    面白い!
    私、ボカロファミリーの小説大好きなんですよ
    雷を怖がってるリンとミクがすごくかわいかったです///
    兄さんとリンレンの組み合わせも好きなんで、兄さんがリンレンの部屋にいって、リンをあやすところとかすごいよくて、俺得でした☆

    続きとか見てみたいです(´ω`)ノシ

    2011/03/25 11:15:51

    • ホクト・リュウセイ

      ホクト・リュウセイ

      シベリアさん
       ありがとうございます^^
      こんな小説を面白いって言ってくれるなんてすごく嬉しいです(*^_^*)
      続きかぁ、全然考えてませんでした(^^ゞ
      そうですぇ、いろんな日常を書くのも良いですねぇ

      2011/03/28 22:15:05

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