11月下旬、閑静な公園にはミクとリンの姿があった。


「ねえねえレンちゃん、そのマフラーどこで買ったの?」


「あ、これ? レンが『寒いだろ』って買ってきたからわかんないんだー」


 黄色と黒を基調としたボーダーマフラーはふわふわとしていてとても温かそうだった。


両手を擦り合わせてハーッと息を吐くと空に浮かぶ雲のように白く、やがて消えた。

その様子を見たリンがふと口を開く。

「そういえば今日から一段と寒くなるって、ニュースで言ってた」


「嫌だね、今でも十分寒いのに」


 会話をしていてミクははっと何かを思いついた。
悴んで赤みを帯びた両手の平を天に向けると、急にミクは立ち上がりこう言った。


「オペを開始します」


 その一言にリンは相好を崩して笑い始めた。
腹を抱え捩れるように笑いをこらえる。

下を向いたまま肩を震わせているリンを見てミクは満足そうに笑った。


「ミク姉ちゃん面白すぎるよ……。っ、あはははは!」


「今度メイ姉ちゃんにもやってみようね」


 ポケットに手を入れると体を強張らせてすとんとベンチに腰掛ける。
背凭れに凭れかかり雲の泳ぐ寒空を見つめる。

飛行機雲が飲み込まれる様に雲を突っ切る。
鳥一羽もいないなんとも寂しい空だ。



「ちべてっ」


「どうかした?」


「雪……かな?」


「うそ、傘無いのに」


 空中を羽が舞うように漂い降りてくる白い妖精が、冬の訪れを鐘の音とともに届けた。


リンはホットココアの缶を大事そうに持っている。


 次第にひどさ増す雪。

ミクはリンの持つ缶と雪を交互に見た。


「もしこの雪がココアみたいにあったかくて甘ければいいのにね」


「あ、いいなーそれ。リン絶対雪合戦したい」


「体がココアまみれだね。ちょっと夢かも」


 ひらひらと自分の下に降りてくる雪をミクは掌で受け止めた。
体温にさらされて瞬時に水となったそれはミクの瞳を捉えてやまなかった。


「もし雪がこんなさみしい白じゃなくて水色だったらいいのになー」


 自分の髪の一束を指に絡め呟く。
リンは前髪を指先で摘み目をぱちくりさせた。


「黄色でもいいかも、明るい色」


「二つ合わせて緑になっちゃうね」


「だね」


 他愛もない会話に自然と笑みが零れた。



 公園内を行き交う学校帰りの子供や主婦、6時を回り若者が増え始めた。

雪の間からちらほらとのぞく雲はまるで自分を目で追わせるように速く流れる。
ある程度遠くまで流れたら今度は違う雲を、それが流れたらまた別の雲を。
飽きることは無かった。


「雪ってなんで白なんだろう」


「んー、雲が白いから?」


「ああ、なるほど。リンちゃん頭いい」


「でも今ある雲ってどちらかといえば灰色……」


 すっかり熱を奪われたココア缶。リンは人差し指でプルタブを開けようとしたが悴んでうまくいかない。
そんなリンを見たミクが缶を渡すよう促した。


「はい、開いた」


「ありがとう」


 一口口に含むと、すっかり冷めたココアを飲み下した。
眉間に皺を寄せ悶絶する。


「冷たい!」


「冷めちゃったもんね」


 
「冷たいからあったかいのが幸せって思うんだよね」


 憂いを秘めた顔で意味深な言葉を落とした。

そんなミクをリンは不思議そうに見つめていた。



 もう一口ココアを口にするとわかったようにリンは言った。


「うん、冷たい」




-了-

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

白い空、冷めたココア

ミクとリンの他愛もない日常のひとコマ。

そんなイメージで書きました。


VOCALOID作品は初投稿ですので口調やらなにやらまとまりg(ry


一部実話をもとに。(主にオペ)

自分自身曲以外あまり詳しくないのでVOCALOID知って日が浅い方でも読めるかな、と。

未熟ですがお楽しみいただければ幸いです。

閲覧数:193

投稿日:2008/11/20 14:58:15

文字数:1,471文字

カテゴリ:小説

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