レンくんは、少し心配そうに言う。
「あいつ、何か最近、落ち込んでるようなことが多くて」
「あら、あのいつも元気なリンちゃんが?」
ゆくりさんは、聞き返した。
彼は話をやめて、手に持ったガチャのカプセルを、筐体に入れ終えた。
そして話を続けた。
「うん。あいつの部屋に行っても、ぼーっとしてることも多いし。こないだなんか、夜、部屋の窓を開けて、外を眺めてるんですよ」
彼が眉をしかめて言うので、思わずゆくりさんは笑った。
「でもー、女の子なんだもの。メランコリーになることもあるでしょー」
「いやいや、だって、あの跳ねっ返りのリンですよ。それが、黙って月を眺めてたりするんだもの」
「月を?」
●調子が狂っちゃいますよ!
レンくんは、売り場のゆくりさんの横に来た。商品の並べ替えを手伝いながら、話を続ける。
「で、きのう、用があってあいつの部屋に行ったら、ちょっとドアが空いてて、中で話し声がするんです。スマホで友達としゃべってるのかと思って、ちょっと覗いたら…」
「うん?」
「手に持った“リンリン・はっちゅーね”に向かって、一人で喋ってんすよ」
「えー? それは、ちょっとヘンねー」
ゆくりさんは、商品を並べる手を止めて、言った。
「でしょう?あいつは元気で生意気だからこそ、あいつなのに」
レンくんは、口を尖らせてつぶやいた。
「メンヘラちゃんじゃ、こっちまで調子が狂っちゃいますよ」
●月光企画でしょ?
さて、その頃。りりィさんのお店「上海屋」では。
新発売の“テト・ドール・ナチュラル”の売れ行きがなかなか良いようだ。
今日も、品物を奥から出して棚に補充する作業を、りりィさんが行っている。
すると…
「こんちは。どうですか、テト・ドール」
店の戸を開けて入ってきたのは、知人のコヨミくんだった。
「あら、いらっしゃいませ。いい調子のようですよ」
りりィさんは、にこやかに答えた。
テト・ドールの新製品は、デザイナーの重音テトさんと、ホソノさんのコラボのデザインで作っている。
ナチュラルでちょっとガーリーなテイストは、女の子たちに人気だ。
コヨミくんは、雑貨の売り場へのプロデュースやイベント企画を行う。この新商品でも、積極的にあちこちでプッシュしている。
「いやあ、人気のようで嬉しいですね」
そういって、売り場のドールを見やった。
「でも、ガチャの製品は、やらないんですよね?つまらないなあ」
コヨミくんは腕を組んで言った。
「もっと、ブームになるような仕掛けもできるのに…。もったいないですよね」
りりィさんは、ふと思いついて彼に尋ねた。
「ガチャの製品は、たしか“月光企画”という会社が、企画してるんですね」
コヨミくんは、大きくうなずいた。
「そうなんですよ!あそこがからむと、ヒットするんですよ。でも」
彼は、ちょっと残念そうに言った。
「月光企画はいま、“リンリン・はっちゅーね”と組む、という噂、ですヨ」「(ーヘー;)
コメント1
関連動画0
オススメ作品
*3/27 名古屋ボカストにて頒布する小説合同誌のサンプルです
*前のバージョン(ver.) クリックで続きます
1. 陽葵ちず 幸せだけが在る夜に
2.ゆるりー 君に捧ぐワンシーンを
3.茶猫 秘密のおやつは蜜の味
4.すぅ スイ...【カイメイ中心合同誌】36枚目の楽譜に階名を【サンプル】
ayumin
(Aメロ)
また今日も 気持ちウラハラ
帰りに 反省
その顔 前にしたなら
気持ちの逆 くちにしてる
なぜだろう? きみといるとね
素直に なれない
ホントは こんなんじゃない
ありのまんま 見せたいのに
(Bメロ)...「ありのまんまで恋したいッ」
裏方くろ子
それは、月の綺麗な夜。
深い森の奥。
それは、暗闇に包まれている。
その森は、道が入り組んでいる。
道に迷いやすいのだ。
その森に入った者は、どういうことか帰ってくることはない。
その理由は、さだかではない。
その森の奥に、ある村の娘が迷い込んだ。
「どうすれば、いいんだろう」
その娘の手には、色あ...Bad ∞ End ∞ Night 1【自己解釈】
ゆるりー
A1
幼馴染みの彼女が最近綺麗になってきたから
恋してるのと聞いたら
恥ずかしそうに笑いながら
うんと答えた
その時
胸がズキンと痛んだ
心では聞きたくないと思いながらも
どんな人なのと聞いていた
その人は僕とは真反対のタイプだった...幼なじみ
けんはる
Hello there!! ^-^
I am new to piapro and I would gladly appreciate if you hit the subscribe button on my YouTube channel!
Thank you for supporting me...Introduction
ファントムP
彼女たちは物語を作る。その【エンドロール】が褪せるまで、永遠に。
暗闇に響くカーテンコール。
やむことのない、観客達の喝采。
それらの音を、もっともっと響かせてほしいと願う。それこそ、永遠に。
しかし、それは永久に続くことはなく、開演ブザーが鳴り響く。
幕が上がると同時に、観客達の【目】は彼女たちに...Crazy ∞ nighT【自己解釈】
ゆるりー
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
enarin
ご意見・ご感想
今晩は♪
さーて、ちょっと心配なリンちゃんの状態ですね~、メンヘラ気味と傍目からは見える状態ですが、実際内部事情を知っている人から考えると、やはり、あの”月光企画”に秘密があるようですね。大成功を手に入れる代わりの”対価”が、今のリンちゃんの不思議現象なのかなぁ?
あ、でも、私はリンちゃん心配ですが、私自身、こういう経験(つらい事があったときに夜空をぼーっと見たり、聞こえないように不満を漏らしたり)あるので、あんまり偉そうな事は言えません…。
やっぱり、元気で明るいリンちゃんに戻って欲しいですね♪
ではでは~♪
2015/02/22 19:35:17
tamaonion
enarinさん 感想を有難うございます!
>メンヘラ気味と傍目からは見える状態ですが、
>大成功を手に入れる代わりの”対価”が、今のリンちゃんの不思議現象なのかなぁ?
するどいご指摘ですね! この辺りは(タネあかしではありませんが)、よく日本の民話とかに出てくる、心理的なものと交換で物理的なプラスを得る、みたいなメソッド?と似てるかもしれません。
>つらい事があったときに夜空をぼーっと見たり、聞こえないように不満を漏らしたり
私にもあります。でも、そういう時間のない人は、何かを作り出したり、あるいは競技とかで何かを極めたりするということは、難しいと思います。
>やっぱり、元気で明るいリンちゃんに戻って欲しいですね♪
そうなんです。このお話のメインテーマは、登場人物たちの楽しい日々、ですからね?(と、作る側としては思っています)
また、感想を聞かせてくださいね!
それでは、また。
2015/03/01 13:50:05