『オオオオオオオオオオオオオオオオオっ!!!!!!!!』


力強く鮮やかなミクとルカの咆哮が響き渡っている。

そのうち、徐々にルカの体から発せられる光が収束していった。

光はルカの両腕にまとわりつき、薄い金色の模様を描いていく。

そして淡いエメラルドグリーンの瞳が、鮮やかな桃色に変わった瞬間―――――



『はぁあああああああぁああぁああああああああ!!!!!!!!!!!!』



ルカの叫びの―――『質』が変わった。

それと同時に――――――――――



《―――――ブツッ》



濁った音と共に、メイコたちを掴んでいたリュウトの鬣が千切れた。


『うわ!?』


まともに体を動かせないメイコたちは、成す術もなくそのまま地上へと落下していく―――――

―――――ことはなかった。突如その落下運動は緩やかなものとなり、ゆっくりとメイコたちの体は地上へと降ろされた。


「え……え!?」

「これは……!!」


メイコがルカを見上げる。


―――――宙に浮いていた。ルカの体は、誰にも支えられることなく空中に浮かんでいる。

冷静で、しかしその奥に熱く炎を燃やすような瞳でリュウトを見据えるルカ。

そのリュウトに向かって、すっと静かに手を掲げた。


『……ハッ!!!』


小さな叫びが発せられる。

それと同時に―――――



『……う、うわっ!!?』



リュウトの体が音もなく浮き上がり―――――凄まじい勢いで地面に叩き付けられた。


『ぐ……な、何……!?』

「何がっ……起きてるのっ!?」


驚いたのはリュウトといろはだけではなかった。メイコたちも、いやルカ本人でさえ驚愕していた。


(これは……!! 何気なくいま、『持ち上げて叩き付けたい』って思っただけなのに……!!)


「手を触れずに……物体を動かした……まるで、念力……!!」

「……念力? ……そうか、自分の脳波とシンクロさせたのか!」


リンの言葉を聞いたメイコが思わず声を上げた。理屈がさっぱりわかっていない一同がメイコに注目する。


「ルカの『心透視』は、相手の脳波や、物体の発する波長に音波をシンクロさせることで相手の考えを読む力……だけど今のルカは、音波を『自分の脳波』とシンクロさせることで、考えていることを『そのまま』攻撃に転じている……! 投げ飛ばそうと思えば音波を当てただけで相手を投げ飛ばし、触手をねじ切ろうと思えば叫んだだけで片っ端から触手をねじ切れる……!!」



「まさに念動音波……『サイコ・サウンド』とでも呼ぶべきかしら……!!」



サイコ・サウンド。新しくその身に宿った力の凄まじさを、ルカはじんわりと噛み締めた。

ようやく手に入った、本当の自分の戦う力。だけどこの力、町が平和になったらどんな楽しいことに使おうか。

悦びでいっぱいのルカは、思わずミクの方に振り向いて―――――





そこでその表情は驚きへと変わった。





ミクの姿は、今までと違う姿になっていた。

いつもの衣装は消え、代わりに白いスーツを纏っている。

腰回りにはスカートではなく、青緑の光を放つパーツが展開している。

髪留めもメカニカルなリングとなっていて、淡いピンクの光を放っている。


その姿はどこか近未来的で―――――そしてどこか、神々しくもあった。


そんな浮世離れした姿のミク―――――だが、ルカたちはその姿を知っていた。

それも、数百年前から。


「ね……ねえ、めーちゃん、あれって……」

「……ええ……あれは……『Miku Append』の……姿……?」


淡いエメラルドグリーンの髪をふわりと靡かせ、起き上がったリュウトに鋭い目を向けるミク。

そして小さな声で、一言つぶやいた。


「……『Solid』」





《――――――ズドンッ!!!!》





―――――誰もが目を疑った。

豪快な音を立てて地面に落ちたのは―――――リュウトの右腕。

あっさりと弾かれていた『Solid』が。リュウトが歯牙にもかけなかった『Solid』が。


リュウトの右腕を―――――肩から切断していた。


『グ……ギアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!?』

「……ほんの少し、痛い目にあってもらうよ。……『Light』!!」


瞬時にミクの姿が掻き消える―――――そこまでは今までの『Light』と同じだった。


違ったのはそこからだ。―――――金色の軌道が駆け抜け、その周りで空気が弾けた。

―――――衝撃波! 目にも止まらぬ―――いや目にも『映らぬ』速さの黄金の矢が、リュウトの左肩を抉りぬいた。


『ぐっ……!!』

「な……なんなのよあの速さっ!?」


いろはが若干怒りの混じった、困惑の声を上げる。それほどまでに―――――ミクの速さは増していた。


「めーちゃん……!! ミクの速さ……あれって……!!」

「……あの衝撃波の強さからして……マッハ5は軽く超えてるわね。蛸足滅砕陣じゃもう追いつけないんじゃないかしら?」

「え……どんだけ速くなってんの、それ!?」


リンや、つい数秒前まで自身に満ち溢れた表情をしていたルカまでも開いた口が塞がらない。

そんな中、メイコだけはどこか面白そうな、しかし悔しそうな顔をしていた。いや、あるいは本当に悔しいのだろう。『妹』の成長の目覚ましさに喜びつつも、自分を置いてどんどん成長していってしまうその進化が。


「恐らく今の二つだけじゃなく、他の四つも今までの音波と基本は変わらずに、だけど能力自体は遥かにパワーアップしている……拡張された『Append』……さしずめ『Append&Extend』ってとこね。単純に強くなっただけに見えるけど、こいつは強いわ……! 今までできなかったことが、簡単にできるようになる!! 今のリュウトの腕を切り落としたみたいに……!!」


その時、まるで燕の如くリュウトの周りを飛び回っていたミクが、その超高速のまま、後方へと距離をとった。

そのままルカに向かって突っ込んで―――――


『ってちょちょちょ……せぃあぁっ!!』


叫びながらブン!! と両腕を天空に向かって振り上げる。するとミクの体が空中高く舞い上がり、そのままアーチを描いてルカの後ろに着地した。


「危ないでしょ―――――がっっ!!!」

「あはは、ごめんごめん……にしても、ルカ姉の力……凄いじゃん!! 一瞬空の彼方まで吹っ飛ばされるのかと思ったら、ものすごい勢いで地面に叩き付けられそうになったもん!!」

「あんたこそ……『サイコ・サウンド』の力を振り切れるなんて、今までと似たような力の割にはやるじゃない!!」

「……えへへ」

「ふふっ」


お互いに顔を見合わせ、思わず笑みがこぼれる。

町を守る力。町に響かせたい声。


新しい―――――自分たちの歌声。


「……守るわよ、ミク!! この町を!!」

「うんっっ!!!!」


二人は力強く地面を蹴り、空へと飛び出した。

迎え撃つは、既に全身の傷の再生を完了した火竜―――――

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

仔猫と竜とEXTEND!! ⑪~激突!!VOCALOID軍団⑤念音と超拡張

ネギトロなめんなっ!!!
こんにちはTurndogです。

サイコ・サウンドとAppend&Extend。
この二つの能力は私の技の構想の中でも最大級にチートクラスな業ですw
チート能力な業は時として制限を掛けられる運命にありますねww
さてさてどうなるか……


因みにグミちゃんが気絶中なのはリュウトが手加減なしで締め上げたせいであり、
決して入れどころに困ったわけじゃないですからね。

後今回長すぎて入らなかったため2段階にしました。つづきは前のバージョンにあります。
普段みたいに前後編にならなかったのは沸ける点がなかったからです……。

閲覧数:367

投稿日:2013/12/01 18:09:51

文字数:2,977文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    はっはっは、いつかはやると思っていたよ、君ww
    いや、冗談じゃなくw
    こればっかりは、予想通りww

    やっぱり、アポト○シン4869は、すごいな←

    2013/12/07 20:04:58

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      あははははは……ww
      まぁ予想つくか、そりゃw

      理系としては割りと仕組みが気になる薬ですねあれ……

      2013/12/07 20:12:05

オススメ作品

クリップボードにコピーしました