男子陣2人が豪華な鎧へ目を奪われていると、リンがこう言った。

「あのね。近衛兵っていうモブキャラみたいな役割のあんたたちに、カッコいい鎧なんか装備させてもらえないわよ」

 その台詞、容赦なく現実味を帯びた、ひと言であった。リン・S・ソレイユは、カッコいいモノへ憧れを抱く男のロマンなど、一撃で破壊してしまう14歳なのだ。
 モチベーションが下がってしまうレンとフーガの2人、僕たちにはカッコいいシーンなんかないのに…せめて装備品ぐらいは良いのが着たいと思ってしまう。

「みんな、ここが私たち用の寮みたいだよ♪」

 回廊のなかを先頭で歩くミクは足を止め、部屋を発見していた。木で造られた扉にも【雇われ近衛兵用】と丁寧に表札が貼られており、ここが自分たちの寝泊まりする場所だと理解する。

『カチャッ…ドタッドタッ』

 扉を開けるとき、──I WiSH 明日への扉──そんな気持ちがパーティーメンバーに芽生えていた。なぜなら……4人は今から、“あいべや”をするからだ。

[雇われ近衛兵用の部屋]

 部屋のなかはログベッドが四つ、ロッカーが四つ、丸型テーブル1つに椅子が四つに外の景色が見える窓があった。配置されているモノは、4人パーティーにちょうどいい数となっている。
 それぞれログベッドの上へ腰を掛けると、マットのスプリングが『ギィ〜ッ』と音を鳴らす。プライベートルーム内は、リラックスできる環境であり心地よさを与えてくれる。

「なんだろ…あのポスターは?」

 ふと…ベッドの上で横になったレンは部屋の壁に貼られた、あるモノに視線をやっていた。それにはイラスト付きで、こうかいてある。

[セクハラダメ! ゼッタイ。女性騎士へのセクハラは犯罪です!]

 謎のキャッチコピーの下方に描かれたイラストには、男性の胸ぐらを掴んで拳で殴ろうとする女性騎士の姿がデフォルメされて画かれている。

「セクハラ受けてる側が、思いっきり反撃してるじゃんッ!?!?」

 別の意味で、セクハラが引き起こしてしまう恐怖をレンは感じていた。卑猥な犯罪行為は、侵した側がボコボコにされてしまうと云う恐怖をだ。

「えっと〜っ、今からみんなに本を読み聞かせるね」

 ミクはリーダーらしく、ローランドから手渡された本を開いた。そしてそれを、仲間たちへ読み聞かせる。


【ミク・F・ヴェールがする読み聞かせ】
◎騎士が秩序を護るのは寮生活から Ver 2.0◎


 ──えっと〜っ、英雄の騎士が集いし国フォレスタ・キングダムの騎士団へ配属された近衛兵のみなさん。大陸の秩序を護るまえに、あなたたちは寮生活で秩序を護ってください。

 あなたたちが所属する組織は階級社会です。騎士→近衛兵と明確にランク付けされてますので、近衛兵のヒトは騎士の命令をきかないとなりません。
 逆に騎士のヒトも上司だからと調子にのって、近衛兵のヒトにパワハラやセクハラも厳禁です。

 前にあった事例をあげると、騎士団内で宴会をしていました。騎士たちは仕事の疲れを癒やすため、みんなで仲よくお酒を飲んでいましたが、その宴会にお城の王さまが参加したのです。

 気の良い王さまは、宴会中の騎士たちへ手土産に生ハムとモッツァレラチーズをたくさん持ってきてくれました。騎士のみんなは、王さまの差し入れに大喜びしました。

「今日は無礼講ッ! フォレスタ・キングダムに集いし騎士たちよ、王と酒盛りナイトをするぞ!」

 王さまは、そう言って騎士たちとの階級に分けへだてなく宴会に溶け込みました。みんなはワイワイ、ガヤガヤと赤ワインや甘いリキュールで乾杯します。
 王さまと騎士たちが、一致団結して楽しい宴会になっていましたが、そのとき事件が起こったのです。

 みんながお酒を深く飲みすぎてしまい、ベロベロになった状態で王さまは、ある一人の騎士に絡み酒をしてしまいました。

 その騎士は、メイ……じゃなく、Mさん(仮名)という女のヒトです。このMさん(仮名)もベロベロに酔っぱらってしまい、普段はクールな口調もいつもと違う感じだったそうです。

「おぉ〜うぅ〜いっ、英雄の娘であるM(仮名)よ〜っおぉ〜っ」

「なぁ〜んッスかぁ〜っ、王さまぁ〜っ」

「おまえも〜ぅ、そろそろぉ〜っ。けっこ〜んしてもお〜っ、よい歳だろぅ〜うっ」

「わたしはぁ〜っ、そぉんなぁ〜オンナじゃないんッスよぉ〜っ。こどくなぁ〜っ、オンナなんすよぉ〜っ」

 Mさん(仮名)がそう言ったときのことです。王さまは、無礼講でもやってはいけないことをしちゃいました。

「またまた、Mちゃん(仮名)!。そんなこと言っちゃって! こんな立派なモノがあるのに♡」

 ベロベロに酔っぱらた王さまは調子に乗りすぎて、Mさん(仮名)に『πタッチ』をしてしまったのです。アイマス紳士でもないのに、お酒の席でやってしまった王さまはそのあとMさん(仮名)に……。

 王さまのする下劣な行為に怒ってしまったMさん(仮名)は、すぐさまその場でストリートファイトをはじめてしまいました。

 お酒でテンションのあがった他の騎士たちも──団長が王さまに下克上だぜッ!──

『ラウンドッ! ワンッ! ファイッ!』

 と言って止めようとせず、王さまとMさん(仮名)がするストリートファイトに喜んでいました。Mさん(仮名)の強さは凄まじく、顔面への強パンチ1発で王さまをK.O.してしまいました。

「ウゥオッ…ウゥオッ……」と言う断末魔とともに王さまは酒樽のほうへ、ぶっ飛んでいきました。

 王さまは、Mさん(仮名)から受けた強パンチにより、初代ストII ケンの負け顔になって鼻血を垂らしてしまいます。
 倒れた王さまはコンテニュー画面で、シラフだった騎士の手により100G払ってもらって一命を取り留めました。

 このときのできごとが切っ掛けで我々、フォレスタ・キングダムに集いし騎士団は、寮内の生活を改める必要が生まれたのです。

 なのでお酒の席であっても寮内の秩序は、みんなで護りましょうね!。パワハラ、セクハラはしちゃダメですよ。


◎ミク・F・ヴェールがする読み聞かせ おわり◎

この作品にはライセンスが付与されていません。この作品を複製・頒布したいときは、作者に連絡して許諾を得て下さい。

G clef Link 雇われ近衛兵1

次話
https://piapro.jp/t/lpvX

いかなる時も
秩序を護りし騎士団

Mさん(仮名)が王さまをぶん殴ったイメージ↓
http://i.meet-i.com/wp-content/uploads/1403171730-1370x2394.png.jpg

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投稿日:2020/01/27 03:33:42

文字数:2,557文字

カテゴリ:小説

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