友人が体調不良で早退したらしい。身体が弱いわけではないはずだけど、早退するほど体調を崩すなど珍しい。
そう思っていた矢先、そいつから電話があった。それがまた妙な電話で、奴は一言も言わないまま電話を切った。
声が出せない程体調が悪いのだろうか。
助けを求めたかったのか何なのか、電話の意図を確かめるために俺は奴の家に来ていた。
来たのはいいが。
…出ねぇ……。
チャイムを数回鳴らした。しかし誰も出てこない。…死んだか?

「…おーい……来てやったぞー」

呟きながらドアノブに手をかける。ちょっとした出来心だったのだが、鍵が開いていたようでそのままドアが開いた。
無用心な。
思いながら家に入る。勝手知ったる他人の家ってね。
おじゃましまーすと言いかけてすぐ傍の扉に目がいった。
扉の下の方、床の上。小人がいた。
身体の半分を壁に隠し、こちらの様子を窺うようにしている。
小さな人形のような人…人?人なのか、これ?人形?
見間違えかもしれないと数度瞬きをして見直す。やっぱりいた。俺、コンタクトの度変わったのかな…。
混乱していると小人の影からもう一人小人が出てきた。二人の小人は何かひそひそと話している。
俺は唐突に昔読んだ小説を思い出した。もしかしてこいつらって…。

「コロボックル!?」

思わず大きな声が出た。ビックリした様子のコロボックルが部屋の中へと身を隠す。
やっべえ俺妖精とかコロボックルとか見えたんだ。霊感とかまるでないけど関係ないんだな!
感動しているとコロボックルの入って行った部屋から体調不良の友人が出てきた。めっちゃ不機嫌そうな顔でこっちを見ている。

「づっきーづっきー!今コロボックルが!!俺初めて見たよコロボックルっ」

俺の友人“づっきー”は怪訝な表情で「は?」と言った。
そいつの肩には二人のコロボックルが乗っていた。


コロボックルはKAITOの種と言う種から生まれた生き物らしい。
遠目にはわからなかったが茶色のコロボックル…じゃなくて種KAITOがカフェモカから生まれたモカ。透明…透明かこれ?光の当たり方でラメが光るみたいにキラキラと色が変化する髪をしたのが氷から生まれたコウ。
我が友人ながらネーミングセンスがねぇな。安直すぎだろ。
種KAITOは俺に警戒しているのかづっきーの傍を離れない。じぃっとこっちを見ている。特に茶色い方。

「こんな面白いの飼ってんのに何で教えてくんなかったんだよ」

ぐったりとベッドに横たわる友人に呟く。確かに体調は悪そうだ。

「………説明…めんどうだったし……………ペットじゃない、し…」

ぼそぼそと喋るづっきーは心底疲れている様に見えた。俺がコロボックルって騒いでその説明させちゃったから余計疲れたんだろうなー。なんかごめん。言わないけど。
でも種KAITOかー。コロボックルじゃないのかー。ちょっと残念。
残念がる俺をづっきーが一瞥する。一瞬目が合った。
……あっ。

「俺見舞いに来たんだった!づっきー元気?」
「……………そう…みえるか…?」
「んじゃ飯作ってやるよ!」
「……………おまえが………?」

胸を張って言ったのだが言い返される。全く信用されていないらしい。文句を言おうとしたが昨日作った味噌汁が泡だらけになったのを思い出し止めた。
俺は料理は出来ないのだ。

「じゃあ掃除っ」
「……………お前が……そうじ…」
「そう!そう、じ…」

一昨日埃を掃っていた時棚が丸ごとひっくり返った事を思い出す。
俺は掃除は出来ないのだ。
づっきーは大きくため息をついて腕で目元を隠した。

「………何しにきたんだ……」
「…悪い」

昔、何も出来なくて散々づっきーに世話してもらった記憶がある。づっきーとは結構長い付き合いなのだ。
づっきーは突出した特技はないけれども何でも出来る奴だ。正直凄いと思う。
悩んでるのか呆れてるのか、づっきーは二度目のため息。それを聞いてか枕元で大人しくしていたコウ君が騒ぎ始めた。

「みーっ、みみっみーみ!」

…何言ってんのか聞き取れないと思ったけど、もしかして「み」しか言ってない?
コウ君の言葉を聞いてづっきーがどうした、と声をかける。
俺が騒いでたら殴るんだろうな。今のづっきーにそんな根性なさそうだけど。
扱いの差を感じつつ様子を見ていると、横でモカ君が何か囁いていた。小さくて聞こえないけど。

「………ああ、だいじょうぶだ……………そんなに…警戒…しなくても……」

…もしかして俺の事?
聞く前にづっきーがこっちを見た。
段々と閉じていく瞳とほんの少しだけ目が合う。

「……おまえ、が……………………」

消え入るづっきーの言葉。耳を澄ますがその先は聞こえなかった。

「…づっきー……?」

呼び掛けるも反応はない。
規則的とはいえない呼吸音だけが耳に届く。
…熱高いのかな?
意識を失ったんだか眠ったんだが、ともかく奴が言いたかった事はしばらく聞けそうにない。気になるじゃねーかアホっ。
起こすのも気が引けるけど…勝手に帰んのもなぁ。見舞いーとか言っといて何もしてないし。
今後の事について考えていると種KAITO達が騒いでいるのが聞こえた。

「みーみーみ?」
「………マスター……?」

どうやら急にづっきーが黙ってしまったので不安になったらしい。
ペシペシとコウ君がづっきーの頬を叩く。
体調悪いんだろうから寝かしといた方がいいんだろうなー。

「ほら二人とも、お前らのマスターなら大丈夫だから寝かしといてやりな」

声をかけると二人の視線が集まる。こっちを観察しているような瞳は、まだこの二人の警戒が解けていないと示している。
怖がれてる、のか…?
まあ初対面だし。コロボックルとか言っちゃったし。ビビるちゃービビるか。
こんなちびっこい二人からしたら俺とか巨人だよなー。づっきーより身長高いし。
よし、優しくしてやろう。
こっちを見続ける二人に自己紹介を始める。

「俺はづっきーの友達。悪さしにきたわけじゃねぇから、心配すんな」

本当は親友とか言いたいけど一方通行だったら立ち直れないから自重。…なんか切ねーなぁ。
しみじみそんな事を思いながら二人と目を合わせる。
数秒、その状態は続いたのち、コウ君がにぱっと笑った。おお、向日葵みてぇ。

「みみー!」
「………………よろしく…だそう、です………」

条件反射なのか、俺が意味を聞く前にモカ君が翻訳してくれる。のんびりしているようで、結構素早いな。
よろしく、と笑い返すとコウ君はみーと鳴いた。
そんな俺らの様子を見ていたモカ君。笑いかけると数秒の間の後、こくりと頷いてくれた。
ん、何か仲良くなれそうだ。後でづっきーに自慢してやろ!
意気込む俺を種KAITOの二人は不思議そうに眺めていた。
よろしくな、二人とも!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

KAITOの種 番外編6(亜種注意)

31の次の日。マスターの友人目線。
意地でも続きを今月中に出してやる…!

料理も掃除も出来ない、ついでに頭も割と残念な友人。決して頭が悪いわけではないのに…w
名前が出てない事を書き終わってから知った。次…出るかな……。
名前と言えばマスターのあだ名が出ました。あだ名ですよ本名じゃないですよ。



コロボックルではなくKAITOの種です。
http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=on

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投稿日:2010/03/25 16:00:57

文字数:2,817文字

カテゴリ:小説

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  • 藍流

    藍流

    ご意見・ご感想

    こんにちは、藍流です。先日はコメントありがとうございました。
    チキンなものでコメントできてませんでしたが、実はブクマさせていただいております…!
    みーみー無邪気なコウ君と、無口ながらも気配りやさんなモカ君のコンビに癒されてます。やっぱり可愛い種KAITOは良いですね。
    ウチの子はギミックを優先した結果あんなことになってしまったので、そのうち違うアイスの子でリベンジしたいですw

    沢山テキストがあるので何処にコメントをつけようか迷ったのですが、最新のこちらにお邪魔しました。
    種KAITOをコロボックルと思ってハイテンションな友人さんが楽しくて好きです! マスターさん、お大事に。

    2010/07/19 13:20:32

    • 霜降り五葉

      霜降り五葉

      藍流様
      お返事が遅くなって申し訳ありません;
      ついでに三月とか言っておいて新作出てなくてすみませんorz
      ブクマ…!?あ、ありがとうございますこんな輩を…。
      可愛いと言っていただけて嬉しいです。よかった可愛くて…。
      藍流様宅の子も可愛いですよ。兄さんカッコいいし。自分のとこにはカッコいい奴はいないので羨ましいです。
      友人は書きやすくていいです。気にいっていただけたようで安心しています(コロボックルとかいうので;)
      早いとこ続きを書き上げて更新しようと思うので、またコメしてやって下さいな。

      2010/07/27 22:27:46

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