「お前とは遊びで付き合ってたんだよ」
この一言で深く傷ついた
悲しみの海へと沈んでいく
みんなの笑う声
仲間に入れない私
もう、誰にも見つけられないの…かな
話す人もいないのに何をすればいいのだろう…
そう、私は深海少女なのだ
夏休みが開け、新学期が始まったとき転入生が来た。
明るそうな人だった
彼は私の席の隣になった
「これからよろしくね」
優しげなこえだった
「よ、よろしく」
私に差し込んできた一筋の光
勇気を出せば仲良くなれるかな?
そう思っていると他の人たちに誘われ、彼は教室から出て行った
それからまた私は読書をはじめた
一人の世界に閉じこもる
…知りたい
彼はどんな人なのかな?
知りたいよ
昼は学校で一人、夜も一人
何もすることもなく寝るはずなのに
彼のことを考えて眠れなくなる
すぐ友達もできて自由な彼が輝いて見えた
翌日、授業中に教科書を見ているフリをして彼を見ていたら目が合い
「どうした?」
と聞いてくる彼に
「な、なんでもないよ」
と嘘をつく私
今度はしっかり授業に集中する
でも顔は赤くなっていた
彼はたまに優しい言葉をかけてくれる
本当は話したい
でも、私は暗い深海に沈んだばかりなのだ
前付き合っていた人もこんな感じだった
友達がたくさんいて
明るくて
こんな私にも優しくしてくれた
告白されて私はOKを出した
でもそれは遊びだった
だからまだ彼を信用できない
こんなに惹かれていっているのに
本当のことを話すのを自分の黒い心が許さない
私は心が汚れてしまった
笑顔なんて出せない
もし出せたとしてもきっと醜い笑顔なんだろうな
彼に合わせる顔なんてない
それを見た彼はどう思うのだろうか
きっと嫌われる
いや、嫌われなかったとしても彼が嫌われてしまう…
どっちかを選ぶなら、自分が嫌われるほうを選ぶ
それなら少し前に戻るだけ
別にどうってこともないはず
彼がみんなに嫌われるよりはいいと思う
「ねぇ一緒に…『もう放っておいてよ!』
…あぁ、言ってしまった
もう後戻りはできない
自分できめたことなのに何かが心につっかえていた
「…じゃあ君にはもう関わらないよ」
そして彼はみんなの中に消えてしまった
私は焦る
また一人になる
怖い
どうしてなの?
ほんの少し前はずっと一人でも平気だったのに
みんなが彼を隠してしまった
その昼食まえの授業が始まった
私は勇気を出して
手を伸ばす
「あ、あのね…」
彼は振り向く
「さっきはごめんね」
彼は私を見ている
「もし良かったらまた仲良くしてくれませんか?」
…やっぱりあんなこといっちゃったからダメだよね
「いいよ」
彼はそう言った
すごく嬉しかった
「ありがとう!」
久しぶりに元気な声が出た気がした
すると彼が
「やっぱり君、素敵な笑顔が出せるじゃん」
といった
「えっ」
驚いた
私そんなにいい笑顔だったのかな?
授業が終わり、昼食の時間
「ねぇ一緒に昼食食べない?」
と彼が誘ってきた
「いいよ」
と答えた
すると私は手を引かれて何人かいるところに連れて行ってくれた
「みんな、初音さんも一緒にいい?」
…どう答えるのかな?
やっぱり無理なのかな
返ってきた答えは
「いいよ」
だった
それから私は友達が何人かできた
彼ともよく話すようになった
そう、深海から抜け出したの
彼のこと、もっと知りたいな
END
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