<第4話 末文より>

(刀剣屋「神威」内)

ルカ:教えていただきますよ、貴方のこと、この駅や商店街の事、あの世界の事、わかってますね?、がくぽさん!。
がくぽ:勿論、承知しているよ。いや、むしろ、私の方が“待っていた”よ。

二人は椅子に座って、じっくり話をする事にした。

***

(刀剣屋「神威」内)

ルカ:まずは話し相手である貴方の事を教えて。それ次第で話を聞くかどうか、もう一度考え直すかもしれないから。
がくぽ:ここまで来られたなら、おおかた解っているはずだ。聞いてみたい、君の見解を。
ルカ:信じられないけど、言ってみるわ。“守護神『神威』関係の誰か”。
がくぽ:99%ご名答だ。だが“関係者”ではない。「当人」だ。つまり私が「守護神・神威」だよ。
ルカ:私のファンタジーとSFの知識から言わせて貰うと、“化身”の間違いなのでは?。
がくぽ:こっちの世界では、あなたが前にいた世界と違って、思念など抽象的な物すら、人間の体を成すことが出来る。“身を化ける=化身する“必要がない。この”侍型の姿“が、”神威が体を成した姿”なのですよ。ここまでの話を信じて貰えますか?。
ルカ:「信じざるを得ない」が回答よ。
がくぽ:ご配慮、感謝する。

ルカ:次の質問。この駅や商店街は、一体なんなの?。そして、あのモニターに映った世界との関係は?。
がくぽ:モニターに映った方が、あなたがココに来る前の世界で、こっちの駅と商店街は、別の世界。どちらも“現実”の世界だ。
ルカ:“どちら”も現実???。
がくぽ:“平行世界”、一般的には“パラレルワールド”と呼ばれているもので、“こっちだけが異世界”というわけではない。どちらも“存在している”現実世界だ。全てが同じ世界なら、パラレルになる、つまり“別れる”必要がない。だから、ここの世界の“律”と、向こうの世界の“律”は、違っている。
ルカ:“律”?。
がくぽ:「ルール」ということだ。貴方が元いた世界では、“思念の体現化”、など出来ない。そして「商店街から出ない」という律があるのも、こちらの世界だけだ。
ルカ:・・・・・こっちの現実世界を作ったのは、“貴方”なんですか?。
がくぽ:私ではない。そして誰なのかもわからない。10年前に突然、向こうの世界とこっちの世界、2つにスプリットした。思念体の間では、こっちの世界を“天”、向こうの世界を“地”と呼んでいるので、これからはそう呼ぶことにする。私はスプリットした時に、この異常状態を治せる物なら治す、そうでなくても調査するために、貴方と同じように「地」の世界からこちらに来た。勿論私は元々人間ではないから、“神威という守護神”、“像”の2つの要素としてこちらに“存在”させる事にした。当時知らなかったとはいえ、こちらで“体現”する事が出来たので、この店を作り、調査しながら様子を伺う事にした。
ルカ:あなた自身では、戻すことが出来なかったのですか、守護神ほどの力がありながら。
がくぽ:残念ながら、ここの世界の“機構”に干渉するためには、“人間としてこちらに入ってきた存在”でないとダメだった。それが「天」の律。だから私は待った。掲示板に書き込みをしながらね。
ルカ:あの怪しい書き込みですね。

がくぽ:あのメッセージの真意がわかる人間の条件は、「天」の世界に疑いを持った人物だけ。“天の世界の機構に疑いを持たない”人間には、全く意味がない。待っていたが、該当者はこなかった。だからもう1つのフラグを作ってみた。それが、広場の小さい広告モニターだ。
ルカ:あれも貴方が!?。
がくぽ:そう。地面の下に結界を作って置いたので、「地」の世界の情報を映し出す“可能性”だけはある。だが、掲示板の時と同じように、「地」の世界の情報を映し出せるのは、「天」の世界に疑いを持つ事ができた人物のみ。
ルカ:・・・・待てども待てども、ここにはお客さん以外、誰も来なかった。
がくぽ:そう。誰もこの「天」の世界に疑いを持つ人間はいなかった。当たり前だと思う。こんな幸せな世界をわざわざ疑って変に思われようとする人間はいない。「地」の世界から来たあなた以外はね。

ルカ:そもそも私はどうやってここへ来てしまったのでしょうか?。ここへは、えっと、「地」の世界の北海道から電車を乗り継いで、木之子駅で降りて商店街に入っただけです。
がくぽ:ここからは推測だが“来てしまった”のではなく、“連れてこられた”のでしょう。「地」の世界の電車に乗っている時、向こうでは既に存在しない“木之子駅跡地”の付近で、「天」の世界のレールに変えられてしまった。そして、「天」の律に変わった事で、貴方が「地」の世界で持っていた、“行くはずだった目的地関連の情報”が変わってしまい、こっちの木之子駅で下りて商店街に入っていった。そしてそれは貴方だけではなく、ここの商店街の住人、全てだろうね。おそらく。
ルカ:だから「地」の世界、つまり連れてこられた人々が“いた”世界では、私達が“行方不明”になったという結果になったわけね。誰がそんな“犯罪”に近い事を!。
がくぽ:考えられる人物は二人いる。こっち、つまり「天」の世界を守護している者達。だが、事実を確認していないので、あくまで憶測の範疇だが。

ルカ:誰!、その「天」の世界の守護者達って!。

がくぽ:二人の「木」之「子」、木之子神社の2本の銀杏の大木が体現した二人。鏡音レンと鏡音リンだ。

ルカ:!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

がくぽ:喫茶店のマスターや土建屋として人間の活動を行っている彼らの話を聞いたことがあるなら、思い出してみて欲しい。あの二人だけが“この地元出身者”だ。この世界がスプリットした時、商店街にいる人間は、おそらく彼らだけ。存在した建造物は、「地」の世界で“開発予定”になっていたものと神社だけ。この条件でスプリットした世界のため、人間は増えない。本来の人間ではないため、子供を産み育てる事が出来ない。だから「地」の世界から、人間をこちらに連れ込んできて、この商店街から出さなかった。他にも色々な“情報の整合性”を取り、怪しまれないように彼らを監視していた。
ルカ:・・・・・・・
がくぽ:結果、この街は彼らが情報のコントロールを強制しなくても良いほどの繁栄を遂げ、いつしか“誰もこの商店街から出なくてもいい”という律を自然に受け入れるようになった。
ルカ:・・・・・・・
がくぽ:最初の頃に来た人たちには、かなりの思念強制を行っていただろうが、“フロンティア精神”が強い人間を選んでいたのだろう。それほど無理が無かったからこそ、「天」の今の世界があるのだと思う・・・・ん?、どうした?。

ルカ:・・・・マスターとリンさんが・・・・・・マスターとリンさんが・・・・・
がくぽ:気持ちは分かる。私ですらあの喫茶店の和やかな雰囲気や楽しい商店街に埋もれそうな気持ちになった事はある。勿論、すぐ我に返ったが。

ルカ:うそ・・・・・うそよ・・・・・あんないい人達が・・・・

その刹那、大きな地響きが聞こえてきて、店内が軽く揺れ始めた。

がくぽ:・・・・酷な話になるのだが、どうやら、落ち込む時間をも与えてくれないようだ。この反応の早さから考えて、君はずっと彼らのどちらかに「ツケられていた」ようだ。

ルカは半分涙目だったのだが、今の状況に驚く事は出来た。店内が揺れる。

ゴゴゴゴゴゴゴ

がくぽ:この商店街を「リバース」させているようだな。商店街を完全に彼らが掌握した時の姿、「支配世界」だ。

ゴゴゴゴゴーーーーーーーン!

がくぽ:終わったか。そろそろ、手下となった“強い意志を持つ人間”が放たれる頃だ・・・・おい、聞いているのか?!。
ルカ:そ・・・・そんな・・・・あり得ない・・・・。
がくぽ:・・・・・・・・・「覚悟」の2文字を持っているか?。
ルカ:・・・「覚悟」?
がくぽ:もう後戻りは出来ない。君が“この世界の律に気づいた”事がフラグとなり、こうなった。私としてはチャンスだと思っているから、私自身は“覚悟”が出来ている。これから先どうなるか、はっきり言ってわからないが、戦うつもりだ。勿論「殺生」の意味での戦いではない。守護者が殺生してしまったら世も末だ。それにここに向かっているのは“「地」の世界の人間達”だ。どうにかして気絶させて、出来れば「地」の世界に帰還させてあげようと思っている。君には、やはりこの支配世界でリンとレンに会う事、向かってくる“知り合い”と対峙する勇気と覚悟は、生まれないか?。

ルカ:うぅ・・・・・マスターとリンさん、話せばわかってくれるかな?。

がくぽ:保証はない。だが確率は0ではない。私も彼らの行動次第では戦わずに、話し合いに持ち込もうと思っている。
ルカ:・・・・わかった。どうなるか全然解らないけど、私も・・・・運命に立ち向かうわ!。

がくぽ:グッドだ!。では、これからの作戦を話しておく。まずはコレを使え!。

がくぽは“刃先の無い束だけの剣”を渡した。ルカは震えながら手に持った。

がくぽ:それは“分霊刀”という立派な“刀”だ。しかし、“身を切る剣”ではない。君にも間違っても殺生をして欲しくないからね。それは、“守護霊”と“本体”を分離させる特殊刀だ。

ルカ:守護霊?、分霊刀?。
がくぽ:その剣の刃先があるはずの部分で、今から来る人間を斬る“仕草”をして欲しい。勿論身を斬る事はない。効果は、レンとリンが植え付けた“守護霊”という力を体から分離させる事が出来る。そして、すぐに私がこの“封印刀”で刃先にその出てきた守護霊を入れて封印する。これでその人を正常な状態で“気絶”させることができる。
ルカ:ど、どうしてそんなことを知っているんですか?。
がくぽ:私たちの「地」の世界では、神事の1つとして行っていた事だからだ。実際に守護霊とかが出てくるわけではないが、これで“退魔”の効果があると信じられていたのだろう。その分霊刀はそれだけで能力を発揮するが、封印刀の能力は、私の力も合わせないと効果を発動しない。だから、こういう役回りなのだ。君は“斬る仕草”だけで良いんだ。わかった?。
ルカ:は、はい、やってみます。
がくぽ:よし!。では出かけよう。目的地は、リンとレンがいる“木之子神社”だ!。・・あ、そうだ、持っているであろう“商店街マップ”は役に立たない。ここは“支配世界”、全く地図とは違う世界になっているから、移動の時は私についてきてください。
ルカ:はい!。

こうして二人は、暗くなっている支配世界である外に出た。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ようこそ!、きのこ駅前商店街へ! 第5話 天の律と地の律

☆オリジナル作品第2弾である、「ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!」の第5話です
☆遂に語られた真実!。でもまだ“推測”の部分もあるので全部の真相ではないわけで・・・。
☆ここから先の神社までは、この話の通り、“戦闘パート”となります!。
☆まだまだ戦闘には不慣れなルカさんです。

第1話:http://piapro.jp/content/gd0jb59ytd308t92
第2話:http://piapro.jp/content/0a4lbg5h8w17bo26
第3話:http://piapro.jp/content/tgh0ul4dkragiduz
第4話:http://piapro.jp/content/92pp7g2rnd88oid3

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投稿日:2010/03/02 17:28:03

文字数:4,382文字

カテゴリ:小説

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  • tamaonion

    tamaonion

    ご意見・ご感想

    こんにちは。
    第3話~第5話、読ませて頂きました。

    第1・2話の時は、“閉塞感のある謎”の状況が、かなり長く続くのでは...?と、想像していたのです。

    意外と早く、世界観があらわになって、面白いなと思いました。
    その点、スッキリしていて、「いいな!」と感じました。
    (先の見えない長編は、マンガも小説も、ちょい厳しいですネ)

    パラレル・ワールドという設定も、面白いし、今後が楽しみです。

    私がここまでで予想するに、出口を求めて動くRPGというより、
    むしろ「活劇」の要素が強いのでしょうか?

    また、楽しみに読ませて頂きますね!

    2012/07/22 14:39:37

    • enarin

      enarin

      tamaonion様、こんにちは!

      > 第3話?第5話、読ませて頂きました

      まことに有り難うございます! 第3話が異変で?になり、第4話で実際に実行し,第5話で、この物語の”本編”とも言うべき姿が出現します。第1,2話のノリでは考えられなかった活劇が始まります

      > かなり長く続くのでは...?と、想像していたのです

      はい、第5話以降の激しい活劇とのギャップを付ける意味で、第1,2話はほのぼのになってました

      > 意外と早く、世界観があらわになって、面白いなと思いました

      そうですね、この頃は、全体で何話くらいで終えようか、という基準が短かったので、世界観が結構大きいストーリーなのに、コンパクトにしてます。なので、思った以上に早く”本編”がやってきた感じですね

      > その点、スッキリしていて、「いいな!」と感じました

      有り難うございます! ざっと見る限り、当分、こんな進行のシリーズが続く感じです

      > 先の見えない長編は、マンガも小説も、ちょい厳しいですネ

      これは私も同感です! これ、中、長編小説だと、早くて冒頭、普通で1/5あたりでやってくるんですよね。そこで読み進められる作品が結構少ない感じもします

      > パラレル・ワールドという設定も、面白いし、今後が楽しみです

      この”パラレル・ワールド”という設定は、私のボカロ小説では、結構多いです。私の願望もあり、小説のテーマとして使いやすい事もあり。ただ、いつも同じパラレルではないように気を付けてます

      > 出口を求めて動くRPGというより、むしろ「活劇」の要素が強いのでしょうか?

      はい。RPGでいう、”戦闘シーン”を活劇として持ってくる感じです。これは私のゲーム好きが凄く反映してます。そしてその読みやすい表現方法として、というか私が書ける文章表現として、セリフ形式を取ってます。これは今でも変えてないスタイルだったりします。

      > また、楽しみに読ませて頂きますね!

      有り難うございます! この頃のシリーズは1話が長いので、ほんと、まったりとご閲読頂ければと思います。

      このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!

      2012/07/22 16:24:13

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    hata_hata様、今晩は~!

    > 全然それを上回るパワーでした!

    有り難う御座います!。今回はこれまで貯めてきた”異変”を思いっきり、波動砲のように発射しました!。ギャップが大きいので、ヘタにやると白けてしまう、怖い話でもありました。

    > 明かされた謎。これはがくぽ一人の話を聞いただけ

    がくぽさんも所々で言ってましたね、”ここからは推測になる”。そう、彼は知っている所はともかく、憶測で話している所もそれなりにあったのです。こうしないとシナリオが進められないのですが、とりあえず、当人である”リンレン”と会話することで、その”憶測”だったところが”真実で修正される”事に成ると思います。

    > nai☆さんの「刀を構える凛々しいウェイトレス・ルカさん」は絵にしたいかもw

    これは私も想像したら萌えました。刀にウェイトレス・・・(→今風ならメイドさんかも)

    > 日本人に宇宙は似合わない

    ゲームとかアニメの知識から、この小説を書いている関係で、どーもそういう風になっていってますね。でも初志貫徹、これで行きますよ~。ただ、ロボットアクションが今回は入れられないような感じです。研究所で派手にやりましたので~。

    毎度のご閲覧、コメント、有り難う御座います!。

    2009/02/23 17:57:35

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    nai☆様、今晩は~!。

    > 最初のほのぼのはどこいった~? みたいなハラドキ突入ですねw

    前半のほのぼのって牧歌的な風景は、真実とのギャップを大きくしてインパクトを持たせるためでもあるんですが、ほのぼのの中にも”真実に繋がる表現”もありました。それで繋がってます~。

    > 華麗な剣の舞!

    殺陣シーンですよね。これはもう派手にやろうと思います。でもあくまでアクションが派手ということで、がくぽさんも言っているとおり”殺生系”には絶対にしません(規約もあるし)。

    > メガテン、というか、ペルソナのような感じが、俺的には結構ツボですよw

    当方、それなりの”メガテニスト”(メガテン系ゲームのファン)なので、どうしても、今回の場合、ペルソナ、のイメージが入って来ました。出来るだけ差別化させるため、姿は全部白い霧にしてます~。それと守護霊その物には戦闘能力がない事にもしました。

    > リリスにメタトロン

    今回使う守護霊の名前は、全部”よく知られている物”だけにしました。それと出来るだけ”上位悪魔”を選びました。なんか最上位の”メタトロン”を使っちゃったのは、どうしようか、まぁその・・。

    > 刀を構える凛々しいウェイトレス・ルカさん

    これはhata_hata様も反応されてましたね。刀にウェイトレス、真逆ですが、そこにシビれる!、萌えられる!。

    > きっと何か秘められたナニかが

    さぁ、ルカさん、どうなるのでしょうね~。お楽しみに!。

    毎度のご閲覧、コメント、有り難う御座います!

    2009/02/23 17:48:59

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    nonta様、今晩はです。

    > 初めからは全く予想のつかない展開

    有り難う御座います!。導入部分と真実~戦闘部分のギャップは、どうも私の作風になっているみたいです。書いていて自然にこういう風になっていました(策の部分もあります)。楽しんで頂けてなによりです~。

    > 自然な形で進んでいる

    今回は途中途中でキーを叩くのを止め、「熟考」した所が多々ありました。これは”矛盾、あまりにかけ離れた設定”を出来るだけ少なくするための措置でした。よって、研究所に引き続き、初期設定がかなり修正されて行きました。その度合いは研究所よりかなり高い結果になってます。

    > これからの展開にも期待しております。

    有り難う御座います!。これからちょっとは”戦闘編”で進めるつもりですが、パターン化しないようにします。

    ご閲覧、コメント、有り難う御座います!。

    2009/02/23 17:26:28

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