もう戻れなかった
リンの胸はミクでいっぱいだった
その心があと数分で砕け散ってしまうとは知らず…
秘蜜~黒の誓い~ 第二話【偽りの愛】
「…え?」
ミクの一言にリンは頭を撃ち抜かれたような衝撃を受けた
その一言とは
―私、結婚するんだ―
リンは信じられなかった。信じたくなかった
たった今目の前にいる少女が
たった今愛した少女が
幸せそうに他の男との幸せを話してくる
私には返事しかできない
「そう…なんだ。幸せになるんだね」
「なれるといいな…とってもいい人だから。
リンに会ったときは、吃驚したよ。私たちを祝福しにきたのかなって思っちゃった」
私が幸せを運ぶ天使と思ってるのだろう
だが否定する必要はない。人間は天使をそう認識しているんだろう
それを正すなんて容易ではない
魔物や悪魔の存在を証明しなければいけないなんて考えただけでため息がでる
人間は不思議だ
なぜ自分たちにとっていいか悪いかでそのものを崇めたり祟ったりするのか
天使がいいもの。悪魔は悪いもの。そうやって決めつけている
まあ悪魔は私たち天使の敵だから訂正するつもりはないが
…ミク、私は君の幸せを祈れるだろうか
君の思う、『幸せを運ぶ天使』のままでいられるだろうか…
…そんなことを考えてるうちについたらしい
先ほどの路地から5分ほど歩いただろうか
ここがミクの家。ミクの住まう場所
…というよりミクの『婚約者』の家らしい
ミクが重そうな木でできたドアを開ける
リンッ…
ドアについていた鈴が鳴る
ミクによると、この地域では鈴は魔除けの効果があると信じられてるらしい
気持ちのいい鈴の音…
「おかえりミク、寒かったろう?」
「大丈夫よがくぽさん。」
『がくぽ』
透き通るような紫色の髪をした青年をミクはそう呼んだ
正直最初は変な名前と思ったがそれは気にしないでおこう
黒いタキシードを身に纏っている
まるでマジシャンのようだった
怪しげな仮面でも付ければ妖艶な青年にかわるだろう
「…この少女は誰だい?」
「リンというの。怪我もしてたし、顔色も悪かったから連れてきたの。
今日一日だけでも泊めてあげたいのだけど…構わないかしら?」
というか、連れてくる前に確認をとっておくべきじゃないかと思ってしまった
「…構わないよ。でも、部屋はあいてないし…」
遠まわしに泊るのは無理だ。泊めたくないといいたいのが伝わる
私はこいつを一瞬でいけすかないと思った
見た目は美形で親切そうな青年だが、なかなかの腹黒さをもってそうだ
「私と一緒でいいじゃない?」
「ミクと…?そんなの…」
「浮気するとでも思ってるの?大丈夫よリンは女の子だし、ね?」
…正直天使に性別なんてない。見た目が女らしいか男らしいかで名前は決まる
性別がないからこそ、私はミクを愛してしまったんだ
…許されないんだ。許されない恋なんだ
叶える術などない。あるはずがない
もともと、愛した人の幸せを祈れるのが本当の愛ではないのか?
ならこれでいい…ミクが幸せになれるように見守ろう。祈ろう
それが最善だろう…
「わかった。リンちゃん…だね?今夜はミクの部屋でお休み。
俺はやり残した仕事があるから戻るよ」
軽々しく名を呼ぶな。そう言いたかったがやっとの思いで堪えた
「ありがとうございます」
幸い、ミクは私が天使ということを秘密にしてくれていた
「ありがとう、がくぽさん。さ、リンこっちよ」
ミクが案内してくれた
ミクの婚約者…がくぽの家は豪邸だった
どうやら、がくぽは有名な資産家の息子でミクは大企業の娘らしい
最初は政略結婚だったらしいが、次第に二人は惹かれあい、恋におちたという
どちらの家にも利益があり、愛しあってる二人も結ばれる
なんて平和な政略結婚だろう
これじゃ普通の恋愛結婚だろうと口をはさみたくなるようだった
しかし、本当にミクは幸せそうに話す
がくぽとの出会い。あいつの優しさ、暖かさ
本当にがくぽが好きなんだな
そう思うと同時に、嫉妬が頭に渦巻いた
がくぽとかわりたい。ミクの思い人は自分でありたい
これ以上幸せそうに他の男を語るミクを見たくなかった
「ごめん。ちょっと外の空気吸ってきていいかな?」
ミクの話を遮った
ミクは少し戸惑っていたが
「いいよ?気分悪くなっちゃったかな?ごめんねしゃべり続けて」
「いいよ…ごめん遮って」
外は雨が降っていた
どんよりとした空。曇天
私は泣いていた。雨と涙がまざり、自分でも泣いてるのに気付かなかった
「ミク…!」
小声で呟いた。届くはずのないこの想い…
「う…ク…」
苦しかった。初めての恋は初めての失恋へと変わるのだ
でも、でも
でも…
この羽がある限り叶うこともありえない
なぜだろう…なぜだろう…
なぜ私は人間じゃないんだ…
なぜ天使で生まれたんだ…
こんな気持ちになるんだったら、悪魔になりたかった…
そんな思いを雨とともに流していた
そろそろ戻らないとミクが探しに来てしまうだろう
そう思って私は屋敷に戻った
「…あれ?」
私はどうやら方向音痴らしい
屋敷のなかで、どこからきたのかわからなくなってしまった
彷徨い歩いてると、がくぽの声が聞こえた
ドアが少しあいていたのでのぞいてみた
「…?」
がくぽの傍らに、女がいた
ピンク色の艶やかな髪で、真紅のワンピースを着ていた
私は妹か何かかと思っていたが
それは間違いだった
聞こえてくる会話を聞いて
私は立ちすくんだ
手は怒りで震えた
がくぽはあの女にこう言っていた
『ミクとは結婚したらすぐ追い出すさ。あんな女、ただの金づるだからな
そしたらルカ、お前と一緒になるよ』
私はいつの間にか走り出していた
許さない許さない許さない
ミクを道具として扱っていた。あの男は
少し調べたら簡単にあいつの狙いがわかった
ミクはただの金づる。あいつの本命はルカだ
しかし、ルカは一般庶民。親が許すわけがない
だからミクといったん一緒になり、ミクの富を得る
そして、ミクを裏切り、ルカと逃げるつもりなのだ
許さない。ミクを利用するなんて
私の大事なミクを
ユルサナイ
私は走り出し、ミクを探した
あんな男と一緒になってはいけない。ダメだ
ミク…
ミク…
ミク…!!!
ミクの笑顔が脳裏に浮かぶ
あの笑顔は私が守る
あんな男に穢させない…!
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