サンディは寝入った途端に仔犬の姿に戻った。
それを確認したレンは姿こそ見えるが世界には干渉できない身体になると、自室へと引っ込む。
10年前に起きた戦争で、レンは沢山の人の魂を奪った。冷えた心をリーリアとの日々という蝋燭で温めていたが、どんな物にも限界が来る。
レンは再び、人恋しさに囚われてしまったのだ。
人間は、『捜し屋』の自分が人を殺せない死神と知っている。
だから、人間以外がよかった。
だが結局彼を癒せるような存在はなく、10年の歳月が過ぎた。
そして、見つける事ができた。
世界と人間を呪う、暗い目の仔犬。冷えきった瞳が、温かさを求める瞳が、彼と重なった。
服を買うのも、食器を買うのも楽しかった。
この冷え切った身体では手に入らない、誰かの温もりを久しぶりに感じた。
サンディに、この温かさは伝わるだろうか。
『寂しいのを、どうやって耐えたのか』
そう問い掛けたサンディに、レンは
『例え時間は短くとも、温かい記憶があれば』
と答えた。
『温かい記憶のない僕は、いつか一人になった時にどうすればいい?』
サンディの言葉が本当になる事はない。死神であるレンは、彼の命が3週間後に終わると知っているからだ。
あの頃と違い、レンは生きる者の余命を知る事ができるようになった。

どうか、その残り時間が有意義で温かい物になりますように。

願いながら、彼に返した言葉を呟く。
「温かい記憶は・・・これから、一緒に作るんだ」
意識が暗闇に落ちる中で、幼い頃のリーリアを見た。

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【白黒P】捜し屋と僕の三週間・4

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投稿日:2011/06/10 21:40:52

文字数:639文字

カテゴリ:小説

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