FLASHBACK4 K-mix side:B
気付けばかなりの時間、そのバーでウイスキーを飲んでいた。
時計を見て、慌ててカイトはそのバーを出てきたのだ。
それから、酩酊感に足下をふらつかせながら、まだ雨の降る中カイトはルカの家へと向かっていた。
(ルカのやつ……怒ってるかな。遅くなったこと)
わずかに残っていた理性の欠片で、カイトはぼんやりとそんなことを考えてみる。
思い出したようにケータイを取り出してみると、ミクとルカの二人から、何度となく着信がきていた。ジーンズのポケットに入れていたのに、ケータイのバイブレーションに全く気付いていなかった。
最後の着信もかなり前のことだ。カイトは折り返して電話することも諦め、画面を閉じてジーンズのポケットにまたケータイをしまい込む。
繁華街を抜け、ルカのマンションがある方へ。
しばらく歩くとネオンと喧騒は消え去り、静かな道をどこかレトロなデザインの街灯がカイトを照らしていた。
冷たい夜気が、酔っぱらったカイトには心地よかった。酔いを覚ましてくれそうなその冷たさだったが、いつもよりもかなりの量を飲んでいたカイトにはさしたる効果は無かった。
一人でぼんやりと歩くカイトの脳裏に浮かぶのは、ルカとミクの二人だった。
カイトのそばにいつもいた二人のいったいどちらが好きなのかと聞かれるのは、カイトには割といつものことだった。
誰もが知りたがるのは、そう、いつだってそんな最新の男女関係なのだろう。
仕事場では、皆がその話題をこぞって訊きに来た。正直に言って、それはカイトにとってあまり気分の良いものではなかった。
三人で一緒にいるのが当たり前だった。そうしている方がカイトは楽しかった。どちらかを選んでしまえば、どちらかとは今まで通りの関係ではいられなくなる。それが嫌だったから、ミクとルカの二人のどちらとも仲良くしていたかったから、今までどちらかを選ぶということはしなかった。したくなかった。
だが結局、カイトはルカを選んだ。選んでしまった。
二人の関係を変えたくなったというわけではなかった。ただ、もっと深い関係になりたかったというのがカイトにとっては正直なところだった。しかし、ミクとルカ、両方とそうなることは出来ない。だから、先に告白してきたルカに応えることにした。それだけだった。ミクを手放したいと思ったわけではない。
変わらない物など無い。
時は歩みを止めることなく淡々と進み続ける。
からからと鈍い音を立て、時計の針を進めるべく歯車は回っていく。
進んでしまった時間は、もう二度と戻りはしない。
ルカを選んだという事実を取り消そうなどと考えたところで、時の流れを戻すことなど出来はしない。
だが、ミクの身体に抱きしめられたあの感触は、その事実を覆したいと思ってしまうほどだった。
(ミク、俺は――)
かすかに残された、カイトの理性はそれがやってはならないことだと分かっていた。だが、足下すらおぼつかないほどに酔ってしまっているカイトには、それは大した力を持たなかった。
カイトの脳裏で、ミクの身体が欲望にまみれていく。それでも、ミクは嫌がらないだろうなどと都合の良いことをカイトは考える。
その、カイトの歪んだ思いを正す事の出来る物など、その場には何も無かった。
ACUTE 5 ※2次創作
第五話
ようやく2番に突入。再びカイトソロ。
元々、原曲のようにカイトが嫌なヤツにならなくて内心焦ってましたが、ここを書いてる途中でようやく原曲に近付いてきたような、そんな気がしてます。気がするだけなのかもしれませんが。
ちなみに、ただいま絶賛スランプ中の文吾です。きっと読み返してみるとあまりのひどさに悶絶すること間違いなしでしょう。
「AROUND THUNDER」
http://www.justmystage.com/home/shuraibungo/
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