結局、沢口は雅彦とミクが見舞いにいった数日後に意識を失ってICUに入り、さらにその数日後、その意識はもどることなく亡くなった。葬式は沢口の遺志により親族と関係者のみで行われた。雅彦とミクも沢口の遺志で参加し、沢口の遺体の入った棺を担いだ。

 ここは、とある墓地、その墓地には雅彦とミクと幸田がいた。三人が向かい合う墓石には<沢口家乃墓>と刻まれている。三人で敷地内の草をむしり、ミクが花を添え、幸田が墓石に水をかけ、雅彦が線香に火をつけ、墓に添える。そして、三人は墓に向かって手を合わせた。
 「…沢口さん、どうぞ安らかに眠ってください」
 雅彦がつぶやく。
 「…これで、全てが終わりましたね」
 幸田もつぶやく。
 「そうですね。…それでは、このバケツは持っていきます」
 そういってバケツを持つ雅彦。
 「そうですか。お願いします」
 幸田がこたえると、雅彦がバケツを持っていく。雅彦が十分離れた所で、幸田がミクに耳打ちする。
 「…ミクさん、安田教授の精神状態は大丈夫でしょうか?」
 「やはり、幸田さんも分かりますか?」
 「ええ、これでもジャーナリストとして長いので、人の心理状況を読み取るのには自信があります。安田教授は今、かなり精神的に危うい状況にいらっしゃるような感じがしますね」
 「はい、実は沢口さんと最後に会った時に…」
 そういってミクは二人が最後に沢口と会った時の話をした。
 「安田教授に、そんなことがあったんですか。私と接する時の安田教授からは想像できませんね」
 幸田が驚いたように話す。
 「はい、私は雅彦さんと長年一緒にいますが、あんなにひどい雅彦さんを見たのはほとんどないです」
 「…と、いうことは、安田教授がそのようなひどい状態になられる時があるのですか?」
 「はい、数えるほどしかないですが」
 そのミクの言葉を聞いて、考える幸田。
 「何か私にできることはありませんか?」
 「…すいません、私も何をしたら良いか分からないんです。私も雅彦さんを助けたいと思っているのですが…」
 その言葉から、ミクが苦悩しているのが分かる。
 「そうですか…」
 心配そうに話す幸田。
 「幸田さん、ミク、どうしたんですか?」
 二人がそんな話をしていると、雅彦が戻って来た。
 「ああ、なんでもないですよ」
 幸田がとっさにごまかす。
 「そうですか。それでは、戻りましょうか」
 「そうですね」
 そういって、沢口の墓を一瞥したあと、墓地をあとにする三人だった。

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初音ミクとパラダイムシフト4 エピローグ1節

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投稿日:2017/03/09 22:32:48

文字数:1,052文字

カテゴリ:小説

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