≪ジベタトラベル【自己解釈】≫


「よく聞け。諸君ら王の御前だ」

 大観衆の前にある高い台にはひとりの男が登っていた。男は話を続ける。

「新世紀の幕開けとなり、帝都は終りを告げた」

 その言葉を、聞いているのかは解らないが老若男女かかわらず皆が踊りっていた。

 その隊列が群がる。時刻はもう暁の太陽が沈んでいないにもかかわらず、八時を回っていた。

 九番街といわれるこの場所はこの街の一番端にあり、そこから延長戦に太陽が見えるのだ。視界は良好といえよう。

 今、この国は新法案の設立に民衆がひどく高ぶっていた。それを嫌味に地底から睨む子供たち。それに対抗するように虚空へと落ちていった子供たちはあちらこちらへちっていった。地底は反転する世界。何もかもが反転する世界で、この世界とはとても相性が悪い。

「……だから我々がいるのです。安楽必須のジベタ教」

今や政治も彼らに従う。神前では政治の実権を握る党も降伏せざるを得ない。すなわち、政治の実権を握っているのは彼らジベタ教であるというのだ。

「――さあ、気嵩なる王の御布令で今こそ」



 空虚の果てに飛び込んだ焦燥は糧として無理矢理飲み込んだ。――即ち彼はその稀代の腕を見込まれたらしいのだ。

 ――そして、彼を竦然の地中大都市が出迎えた。




 まだ、話は続く。

 極楽浄土とは違った考えを示すジベタ教はまずこの新天地を開拓させ、帝都を流転するに考えた。

 散在するアンテナの感度は常に良好で、新法案の宇宙トラベルも果てまで遠くに行けるようになった。

 這いずってでも、深海・天界どちらの奥にも飛ばせるようになったわけだ。



「――予言の黙示録に書かれた通りのことがおきようとしている! 今すぐ逃げるのです!」

 流星群が墜落・反照を起こし地響きが唸る大地を、虚構の樹脂ケージから脱出し回避する人間がいた。

 おそらくジベタ教もさすがに今日の大災害を予想はしていなかっただろう。あの団体はカルト団体に違いなかったからだ。

 しかし、悲しいかな、桃源郷は確かに存在する。この樹脂ケージに閉じ込められていた人間は知っていた。




「さあ。この船で外界へ逃げる時が……来たのです!」

 曇天に包まれた幽霊船だった。

「さあ! 今こそ!」


 しかし、それをも予想できない――








 ――事態が発生した。




 散々たる光景をも飛び越えたものだった。

 あちらこちらへの紫煙が粒状となり――飲み込まれた。

 知っている大穴は、もう穴ではなかった。

 そこから地底が開かれ――展開し――騒然の地中大都市が膨れ上がった。







「……そんな昔話があった」

「ほんとのことなの? 今のは?」

「ああ。だって、今もジベタ教はあるだろ?」

「うん、そうだね」

「じゃあ、おやすみ」

「うん、おやすみ……」

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ジベタトラベル【自己解釈】

本家:http://www.nicovideo.jp/watch/sm18800075

続き
「アンダワ【自己解釈】」:http://piapro.jp/t/02x2

閲覧数:7,113

投稿日:2012/09/05 20:32:21

文字数:1,219文字

カテゴリ:小説

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