なぜだ? 俺はそう思い、足を止める。
なぜまたやってくるのか。どうして同じことを繰り返すのだろうか。あの国は。
一体、何が目的なのだろうか。
耳に聞こえるのはあのスクランブルを告げるサイレン。恐らく興国だ。
俺が通路で立ち尽くしていると、向こうからフライトスーツを着た隊員が全速力で疾走してきた。そして俺に目もくれずに横を走り去っていった。
俺には海の向こうのことなどまるで分からない。
無論どうしてこのように空からの侵略行為を繰り返すのかも分からない。
いや、そんなことはもうどうでもよいことかもしれない。俺達の役目は命を賭して日本を護ることだ。何が理由であれ何が襲い掛かってこようとそれに立ち向かうことが日本防衛軍軍人の俺達の使命だ。
あのサイレンを耳にした瞬間、もはや俺は深く考えるのを止めていた。
・・・・・・来るなら来い・・・・・・。
「ゴッドアイ、二人は武装しているのか?!」
「はい。今、判明しました。対人装備の黒奏刀とブラッディチェーンのみです。」
「そんなもので戦闘機とやり合えるわけがない! 呼び戻せ!!」
「しかし、先ほど何度も命令しましたが全て無視されました。」
「だろうな・・・・・・くそッ。」
わたしの頭は、敵がどこから飛んでくるのかしっかり分かっていた。ヘッドセットに付いているアンテナがわたしの頭の中に情報を送ってくれる。
数は8機。あれならすぐに片付けられる。
そのとき、ヘッドセットからアラームが鳴り出した。
「な、なに?!この音!!」
「撃ってきた!!ワラ、避けるんだ!!」
向こうの空から白いものが近づいてくる。あれがミサイル。それはあっという間にわたしとワラの目の前に飛んできた。
わたしは翼を一気にまわさせた。そしてぐるっ、と丸を描いて飛んだ。ミサイルがわたしのすぐ隣を通り過ぎた。
「ワラ!!」
わたしはワラのほうを見た。よかった。何とか避けれたみたいだ。もうワラは完全に翼を使いこなせているみたいだった。
「だーい丈夫!!あたしにもコツがつかめてきた!!!」
今度は灰色の大きなかたまりが幾つか近づいてきた。
「んじゃ、始めますか!!!」
「ワラ、あんまり無理はするな!!」
「わーかってるって。」
ワラはその中の一つにまっすぐ飛んで行った。
「おい!!何してるんだ!!そんなことしたら撃たれる!!!」
「へーきだって。」
ワラは敵に正面から突っ込んでいった。危ない!!ぶつかる!!
「イィィィヤアァァッ!!!」
と、思ったそのとき、敵の戦闘機のコックピットが縦に割れた。そして敵はそのまままっすぐ海に落ちて行った。
「いっちょ上がり♪」
ワラの手からは真っ赤な何かが伸びていた。あれがワラの武器なのだろう。しかも戦闘機を丸ごと切り落とすなんて。
「!!!」
いけない。いつの間にか敵に後ろに付かれている。わたしは翼を広げ空中で跳ねた。すると真下に敵のコックピットが見える。今だ。
「ふんっ!!!」
わたしは武器をコックピットのパイロットに突き立てた。窓を貫き、敵パイロットの頭に深く突き刺さる。そしてそのまま・・・引き裂く。
パイロットの頭が半分に割れて、コックピットが真っ赤に染まった。これは、血。あとから来る敵も同じように切りつけた。弾丸やミサイルが飛んでくれば全て避けた。
ワラもあの赤いもので敵を真っ二つにしていった。よく見るとそれは鎖だった。
敵は倒せるが、さすがにレールガンがないと手間取ってしまう・・・。
「ミクやーるぅーう!」
「まだいる!全部倒すぞ!!」
「とーぜん!!!」
「ソード5、シック3、こちらはゴッドアイだ。聞こえるか?」
「どうした。」
「なにさ?!」
「こちらからスクランブル機四機が発進した。今お前達がいる座標に到着するまでおよそ五分足らずだ。あとはダガー隊に任せてお前達は帰投しろ。繰り返す。ダガー隊に任せてお前達は帰投しろ!」
「こちらダガー1。すぐにそこへ駆けつける。それまで持ちこたえてくれ。その後は俺達が対応する。」
「えー。まだやれるってよー!!!」
「シック3、命令に従え。」
「ナニーーー!!!」
「・・・・・・ワラ、残念だけど、さすがにこの武装じゃこっちが弱い!!あとは任せよう。」
「むー・・・・・・ちぇっ。けどまぁいっか。」
「これより帰投する。」
わたしとワラは敵に背を向けると最大まで加速して逃げた。
敵のミサイルが追ってきたがなんとか避けた。途中で味方とすれ違い、わたし達は基地に向かって飛んでいった。
基地に帰る途中、ワラが話しかけてきた。
「ところでさぁ、一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「昨日さ、あんたのタンス、ちょっと見たんだけど。」
「ん・・・まぁべつに構わないが。」
「そんで気付いたんだけど、ミクってもしかして・・・。」
「ん?」
「や、やっぱいいや。」
「どうしたんだ・・・タンスがどうかしたか?あれには着替えのシャツとかしか入っていないが。」
「な、なんでもないってば!!」
「ふっ・・・へんなやつ。」
「こちら水面コントロール。ソード5、シック3、着陸を許可する。」
「了解。」
「りょーかい!」
わたしが滑走路の機械に足のフックを引っ掛けて着陸すると、ワラもそれを真似て同じように着陸した。ワラは物覚えが速いのだろう。
基地に帰ったそのあと、ワラはタイトにたっぷりしかられた。
わたしはワラと飛べて、ちょっと楽しかった。べつにそんなにしからなくてもいいじゃないか。タイト。
『どうしたんだ・・・タンスがどうかしたか。あれには着替えのシャツとかしか入っていないが。』
「うーん。これは興味深いことを聞いてしまいましたね・・・・・・。」
「司令・・・顔がにやけています・・・・・・・。」
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