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今年の仙台の冬は寒い。もう十二月に入ったばかりであるのに、風のせいで顔が強張る。幸宏は仙台駅西口から連絡通路を通り、東口へと抜けた。ロフトの黄色い壁が訪れた者にインパクトを与える。
幸宏はペテストリアンデッキを、イービーンズ脇の階段から降りて地下鉄入口へと向かう。そして南方の富沢方面の車両に乗り、帰路についた。
彼の満たされぬ思いは、この地下鉄の車両に乗っている時がピークに達する。
キャンパスライフは充実しているし、講義の内容はしっかり理解できるし、テストはいつも高得点で抜かり無しときたものだ。
(彼女がいない、からか?)
恋人がいないのが原因かと、彼はふと思った。しかし現在の幸宏には彼女が欲しいという願望も、結婚願望も枯れつきたように皆無である。ゆえに、恋愛関連という疑惑はほぼ皆無となった。
幸宏はふと見上げる。すると彼の視界に、歌手育成の専門学校の広告を見つけた。『沢山の人に、感動を届けよう』というゴシック体文字が、広告サイズギリギリに書かれていたのである。
「感動……」
その広告を見た幸宏は、はっとした。
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