僕の言葉に応えてくれますか?
返事はこないまま。


僕は、ずっとこの箱で生きていく。
それは、僕がタイムリミットを迎えるまで?









<<【カイメイ】明日への希望を【音を失った少女に】>>








×年×月×日


僕はひどい病気にかかってしまったらしい。
一生治ることはないけど、薬とかで症状を和らげたりすることはできるらしい。
それでも長くて五年、短くて半年しか生きられないらしい。僕の家族はとても悲しんでいた。
僕自身はこうなることはわかっていたから悲しくなかった。
でも僕が死んだら家族はとても悲しいんだろう。だから、今日から日記を書くことにした。
僕が生きた証っていうのを遺してもいいと思うから。

僕は入院した。部屋は個室だった。




×月×日


どれだけ強く願っても、叶わないものは叶わない。
だから、この人生に意味はない。
僕がそう結論づけたのはいつのことだろう。
気づけば、無機質な日々を過ごしていた。

まるで時限爆弾がついているかのようなこの体は、なかなか僕の思うように動いてくれない。
いつ作動するのかもわからないし、解除も不可能だ。
行きたいところにも行けないし、やりたいこともやれない。
結局、いいことなんて一つもないじゃないか。

だから、毎日を無意味に生きると決めた。
この箱で永遠に生きると決めた。

この箱には何もない。
自由も、感情も、色も、そして幸せも。
それでも、この箱から出たくなかった。




中略>>* 翌年4月上旬




4月6日

今日は中学校の入学式があった。
今日から学校に行ける。でも期待はしないほうがいいかな。




4月29日

中学に入って一ヶ月くらい経ったけど、僕がその学校に行けたのは最初の約一ヶ月だけ。
また病気が悪化して入院。再び院内学級に移ることになった。




中略>>* 同年11月末




11月27日

いつものように、先生が僕の病室を訪ねてきた。
「始音、調子はどうだ?」
「まぁ、ぼちぼちですよ」
「そうか。これ、クラスの皆から」
甘い香りが鼻をくすぐる。今日彼が持ってきてくれたのは花束らしい。
「ありがとうございます」
その後先生はいろんなことを話してくれたが、僕は適当に返事をするだけだった。
やっと先生が帰ってくれた時には、時刻はすでに夜7時を過ぎていた。
はっきり言って、あの先生は話が長すぎて嫌いだ。まぁ今日は短いほうか。




11月29日

今日はクラスメイトの鏡音君がお見舞いに来てくれた。
「元気か?」
「まぁ今日は良いほうかな」
鏡音君とは仲がいいほうなので、僕は笑顔で対応した。
「そうだ、これやるよ」
「何?これ」
鏡音君が僕に手渡したのは、ペガサスの形に彫られた、少し小さめの木の置物。
「休み時間中に適当に作ったやつの一つ」
「これ、本当に木材から彫ったの?」
「あぁ」
「相変わらず器用すぎるなお前」
鏡音君は相変わらず手が器用だ。少し羨ましい気もする。
僕はありがたく置物を受け取った。




12月1日

痛み止めの注射を打ちに来た看護婦さんは、手紙を持ってきてくれた。
その手紙はここに入院している女の子かららしい。
手紙を読むとなんだか嬉しくて、元気になったような気がした。
だから僕は差出人である『咲音さん』に返事を書いた。
僕の手紙は看護婦さんが持っていってくれた。




12月12日

忙しかったからしばらく日記は書いていない。
でも文通は続けていた。
あと、今日は先生が悲しそうな顔をしてやって来た。
どうやら、クラスメイトが二人亡くなった…らしい。
そのうちの一人は4月に僕と仲良くなった子。……自殺した、らしい。
それから、僕は最近呼吸がつらくなってきた。
僕も、もうすぐ死んじゃうのかな。
それだけは嫌だ。せっかく、あの子と仲良くなれたのにな。
でも…それも、かなわないんだろうな。
カミサマなんて、いやしないんだからさ…





12月23日


多分今日で日記は終わる。
本当はペンを持つのも辛いけど、最後だからがんばろうと思います。

咲音さんへ。
昨日、最後の手紙を書いた。
もっと書きたかったけど、六行くらいにまとめちゃった。
ぼくは、君のおかげでがんばれたんだよ。
今まで希望の手紙をありがとう。

鏡音君へ。
今までずっとぼくをはげましてくれてありがとう。
君が作ってくれたものは、ずっと大切にかざっていたよ。
君の手先の器用さは、ほんとにすごいと思っていたよ。
今書くことじゃないけど、ぼくは君のひみつを知ってるんだ。
でも誰にも言わない。そのひみつは、いつか彼女に伝えてあげてね。

家族へ。
ずっとめいわくをかけてごめんね。
結局、ぼくはなんにもできなかった。
でもぼくはがんばって生きたと思えるよ。
ぼくに会いたくなったら、このノートをひらいてね。
たいしたこと書いたきおくはないけどな!

お医者さんへ。
ぼくを助けてくれてありがとう。
ぼくを助けようとがんばってくれてありがとう。

…ふう。もうむりかな。
ここまで書いたら、なんだか手がいたくなってきちゃった。
ほんとに、ぼくはだめだね。体力なさすぎだよ(笑)

それじゃあ、ぼくはそろそろいきます。
お医者さんを信じてるわけじゃないけど、ぼくは今日でいなくなる。
それはぼくだけがかくじつにわかってるから、これを書いてたんだけどね。
あと、カミサマ、もしあなたがいるのなら…ぼくをあの世へつれていってください。

それじゃあ、みなさま。どうかお元気で。
行ってきます。






【タイムリミットまで あと5人】

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【希望の手紙】明日への希望を【音を失った少女に】

「僕の言葉を届けてくれるなら」
【CASE3 : 始音 和人】

今回は日記っぽく書いてみたつもりです。
これを書いてる作者本人が日記を書かないので、はたしてこれが日記らしいと思えるのだろうか…w

「キミの声が無いセカイ」→「この声が届くまで」→「明日への希望を(これ)」という順番になってます。
とりあえずこのあとはめーちゃんです。

閲覧数:1,852

投稿日:2012/08/02 19:52:02

文字数:2,343文字

カテゴリ:小説

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