「あ~冰音リヌちゃんだ。うわ~可愛い~♪」
「え?タレントなのか?」
「使土、女の子を羽交い絞めにする物ではありませんよ、手を放しなさい。」

その言葉に意外とあっさり手を放してくれた。強盗…じゃ、ない?でも何この怪し過ぎる集団!女装!スーツ!全身黒!思いっ切り疑いの目を向けているとまたピアノの音が聞こえた。今度は直ぐ目の前で。やっぱりさっきの演奏この黒い人が弾いてたんだ。…あれ?この聞き覚えのありまくりな曲は…。

「私の歌!」
「悪い、耳コピなんでタイトル知らない。」
「ううん、すご~い…。」

何度も歌った歌だけど自分の歌じゃないみたい、ピアノで聞くと全然違う…。耳コピって言ってるけどメロディも殆ど間違えてないし、この人凄い!

「涙止まった?」
「ふぇ…?」
「目が充血してますね、涙が出たからと言って目を擦ってはいけませんよ。」
「あははは、チョコ食べる~?ヤな事あった時は甘い物♪」
「え?え?あの…!」

ハンカチやらチョコやら一斉に構われて何が何だか判らなくなった。と、取り敢えず強盗では無いっぽいけど、何なんだろう?この人達。悪い人…じゃないのかな?何て言うか、得体の知れない雰囲気。すっごくハマりそうな穴場のケーキ屋さんを見付けた時みたいな…。

「ん、時間切れ。マネージャーが探してるよ。」
「え?あ…そうだ、私休憩中…。」
「じゃあこちらも引き上げましょう。」
「了解。」
「了~解♪」
「え?え?え?」

引き上げ?何言ってるの?どう言う事?もしかしてやっぱり強盗?!それで私口封じに殺されたりとか…?!

「冰音リヌさん。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!喋らないから殺さないで~~~!」
「ぶっ…!くくくっ…。」
「…殺しませんよ…。そんな事より、今度のコンサート、気を付けて下さい。」
「ふぇ?」
「爆破予告あっただろ?不意打ちと警戒してるのとじゃ全然違うんだよ。
 パニクってっと二次災害とかもあるからな。」

爆破予告?マネージャーが確か『悪戯に決まってるから気にするな』って言ってたアレの事かな?何でこの人達そんな事…。信じて良いのか疑って良いのかさっぱり判らない。頭の中がちっともまとまらないよ。そんな事を考えていたせいだろうか、立ち去ろうとした瞬間思わず黒い人の袖を捕まえていた。

「貴方達…一体誰?」
「………。」
「答えて!」

恐くなかった訳じゃないけど、好奇心が勝ってしまった。微かに手が震えているのに気付いたのか少し笑って言った。

「啓輔、弐拍啓輔だ。」
「おや、宜しいんですか?珍しい。」
「別に…。」
「私は菖蒲翡翠と申します。」
「方舟音ノア。今は『イヴ』って呼んで欲しいけどね♪」
「工音使土。」
「…これ以上の詮索はダメですよ?それでは。」

翡翠と名乗った人が恭しくお辞儀をすると4人はそのまま立ち去ってしまった。

「いたいた!リヌちゃん!ダメだよ、休憩中なんだから!」
「…あの…マネージャー、私ユウ先輩に謝ってから行きます!」
「ユウに?何かあったの?」

気が付けば頭がすっきりしていた。大丈夫、頑張れる。酷い事言った先輩に謝らないとって思った。もっと一杯練習しないとって思った。それと…ちょっとだけ、何でか自分でも判らないけどちょっとだけ思った。

「また…会えるかな…?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -21.不可侵領域-

彼等は何か大切なものを盗んでしまったかも知れません。

よく考えると一人だけパネェ第一印象です。誰でしょうね…。
(A ̄∀ ̄;)アハ…アハハハ…。

※次ページは20~21の舞台裏となっています。

閲覧数:328

投稿日:2010/06/01 16:21:34

文字数:1,381文字

カテゴリ:小説

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  • 遊羅@右肩逝きかけ

    遊羅@右肩逝きかけ

    ご意見・ご感想

    ひーたん!(何
    なにこのひーたん(翡翠)かわゆすなんですけど!(落ち着け
    毎回のごとく2424しながら読ませていただきましたw
    次回作楽しみに待ってますね!

    2010/06/01 20:52:57

  • 門音

    門音

    ご意見・ご感想

    シド兄!やっと女装できたのね!!(←何故喜ぶ
    出して下さってありがとうございます!!
    続きが毎回気になりますね!次も楽しみに待ってます!
    あ、今日明日中にシドの設定絵を上げようと思ってます。よければどうぞ!(←?)
    (服装は以前描いてくださったのを参考にさせていただきました!)

    2010/06/01 20:05:13

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