家に強盗が入った『らしい』との連絡で家に戻った。粉々にされた窓ガラスが嫌な予感を増長させる。寝室の廊下には幸水が項垂れて座り込んでいた。よく見ると頭から首筋に掛けて血が滲んでいるのが見える。
「おい、何があった?」
「…あ…。」
「鈴夢は?緋織はどうした?!」
少し視線を迷わせた後寝室を見遣って言った。
「緋織が強盗と鉢合わせた…俺が着いた時には1人で倒れてて…。」
「なっ…?!」
「すまない…。」
鍵の掛かっていなかった寝室をそっと開けると、暗い部屋に蹲る緋織が居た。
「緋織…?」
声にビクリと身体を強張らせるが、俺を見て少しホッとした様に肩を緩めた。
「ごめんなさい…勝手な事して。それに窓も…。」
「そんな事は良い、怪我は?」
力無い表情でゆっくりと首を横に振る。まだ怯えているのだろう、手がカタカタと震えていた。
「しふぉんが危ないと思ったんです…七海さんが警察に捕まえさせて、1人ぼっちにされたしふぉんを狙うんじゃないかって…でも言ったら今度は凰さんが動くしかないから来留宮先輩がって…どんどん解らなくなって…。」
「だから自分が出るフリをして囮になるつもりだったのか?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…!」
涙を零す緋織を見て胸が押し潰される気分だった。何から何まで後手に回ったせいで見えない誰かに手の平の上で転がされて、しかも俺ではなく周りの人間が傷付いて行くのが堪らなかった。
「相変わらず警察は何やってんだか。」
「…っ雉鳴弭?!」
「そんなに似てんの?まぁ良い、僕が用あるのはそっちのお嬢さん。」
「おい緋織に近付くな!」
無遠慮にズカズカ部屋に入ると、男は震える緋織の前にしゃがみこんだ。
「初めまして、お嬢さん。日高鴇彦と申します。」
「日高…?じゃあお前が聞いてたストーカーの…!」
「…初めまして…。」
「え…?」
キョトンとした様子で緋織はそう言った。本当に全く知らない人間を見る目だった。カウンセラーを必要とする位に酷い目に遭わされた筈のストーカーに対する態度とは到底思えなかった。
「だから警察は嫌いなんだ…。」
日高は自嘲気味に笑うとぽつりと呟いた。
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