いつもミクオは、私の事をちゃんと見てくれない。今も一緒に下校しているのに、こっちには目もくれない。付き合い始めて何ヵ月経っていると思っているんだろう…。
ここまで見てくれないと、私が彼の視界に入っているかすら、不安になる。
私はミクオのカノジョなんだよ?
私は前付き合っていた彼に『独占欲が強くて、ワガママで、その割には寂しがり屋だから、付き合うのが大変』と言われた事がある。
それを言われたとき、正直ものすごく腹が立った。でも、後々になって考え直してみると、案外当たっているのかもしれない。
髪型を変えたら真っ先に気付いて欲しいし、私の事は頭のてっぺんからつまさきまでしっかり見て欲しい。
並んで歩くときは絶対に手を繋ぎたいし、私が話し掛けたら、何がなんでも答えて欲しい。
あわよくば、お姫様みたいな扱いもして欲しい。
だって、カノジョって、好きなカレにとって、お姫様みたいなものでしょ?
でも、自分としては、それがワガママだなんて思ってない。寧ろ、当たり前だとさえ思ってる。
好きな人には大切にされたいし。
「ねぇ、ミクオ」
「んー?」
私が呼んでも、ミクオは私の方を見てくれない。
分かっててからかってるのかな?
そんな事を考えていたら、またミクオはこっちも見ずに言った。
「何?用無いの?」
「ねぇ、こっち向いて」
「何で?」
…なんか、からかわれてる気がしてならないんですけど。
あまりにもミクオがこっちを向いてくれないので、私は、無理矢理でも向かせようと、ミクオの顔を掴んだ。
「ミク、痛いんだけど」
「離して欲しかったら、こっち向いて」
「だからなん」
「だって、ミクオがあまりにもこっち向いてくれないから…」
「…ミク、寂しいの?」
「当たり前じゃんっ!私たち、付き合い始めて何ヵ月経ったと思ってるの!?」
思わず、本音をこぼしてしまったのに気付き、言った後に口を塞いだ。
頬が紅潮しているのが自分でも分かるくらい、熱を持っている。
もう、ひとつ本音が出たら、他の本音達も出てきてしまった。
「だってミクオ、呼んでもこっち向いてくれないんだもん!」
「……」
「ミクオは知らないだろうけど、私、ミクオに見て欲しくて、いっぱい努力したんだよ!?」
「……」
「大好きなケーキもプリンも我慢して、そしたらミクオも、私の事見てくれるかな、って思って」
「……」
「それでも…っ、ミクオは、見て、くれないし…」
「……」
「ミクオ、ホントは…、私の事、嫌い、なの…?」
最後は、何故か涙が溢れてきた。泣くつもりじゃ無かったのに…。
私がひとしきり話し終え、泣きじゃくっていると、何か暖かいものに包まれた。
目の前には、何度も見た、自分とお揃いのネクタイ。
間違いない、ミクオだ。
えっ!?でも、何で急に、そんな…!?
私があたふたしていると、ミクオは突然口を開いた。
「ひかれる。危ないよ」
「…え?」
でも、今、車通ってなかったような…。
刹那、唇に暖かいものが。
………えっ!?
「俺の方に惹かれるだろ?」
「えぇぇぇぇーっ!?」
その瞬間、私は頭が真っ白になった。ミクオと…き…キス……したの?
私の頭がショートした音がした。ミクオが謝ってるような気がしたけど、全然耳に入らなかった。
それから数日、通学路でキスをしてしまった私たちが、散々なまでにからかわれたのは言うまでもない…。
コメント0
関連動画0
オススメ作品
窓を突き抜け夏の夜明け告げる蝉時雨
目を覚まして固く閉ざされた窓を開け放つ
絡み付くような物憂げな空気を肌で受け
夢のような遠い記憶が蘇る
まばゆい陽射し乾き切らないアスファルトの匂い
ただそこに何一つ変わらない夏があった
忘れられなかったあの夏の日の記憶を
君との淡く儚い日々をくだらない
馬鹿を...夏空のレミニセンス 歌詞
さとぅ〜
おにゅうさん&ピノキオPと聞いて。
お2人のコラボ作品「神曲」をモチーフに、勝手ながら小説書かせて頂きました。
ガチですすいません。ネタ生かせなくてすいません。
今回は3ページと、比較的コンパクトにまとめることに成功しました。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓「前のバージョン」でページ送りです...【小説書いてみた】 神曲
時給310円
ねえ、声を聞かせて
その中に宿る光
見えない明日を描くために
私が隣で歌うから
迷いの森を歩くような日も
君の足音は響いてる
たったひとつの小さな音が
やがて大きな歌になる
言葉は雲間から差す光
どんな雨もやがて虹を呼ぶ...オリオンベルト・フォノグラム
ジャヴァノ
熱い気持ちが冷めて他の人にかまけていたら
あなたの事なぞすっかり忘れ大事にもせずに
言葉につまり寄り添えなくなれば恋も終りか
さようなら、我が愛しのメアリーへ
あなたに縋るのはこれっきりにしようか
嵐が来て去っていけば恋は流れて行くか
それでも自分を愛してくれるか試してる
報われなくても 構いやしな...さようなら、我が愛しのメアリーへ
Staying
意味と夢と命を集めて
作られてしまって身体は
終わった命を蒸し返す機械らしい
【これは彼の昔のお話】
人一人は涙を流して
「また会いたい」と呟いた
ハリボテの街の終末実験は
昨日時点で予想通りグダグダ過ぎて
その時点でもう諦めた方が良いでしょう?
次の二人は 街の隙間で...コノハの世界事情 歌詞
じん
ありえない幻想
あふれだす妄想
君以外全部いらないわ
息をするように嘘ついて
もうあたしやっぱいらない子?
こぼれ出しちゃった承認欲求
もっとココロ満たしてよ
アスパルテーム 甘い夢
あたしだけに愛をください
あ゛~もうムリ まじムリ...妄想アスパルテームfeat. picco,初音ミク
ESHIKARA
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想