徳川の時代は終わる。
江戸の町では、そんな話題で持ちきりだった。
京の都の新撰組や朝廷、尊皇攘夷や倒幕派の出現。
徳川の敗北は確実なものになっていった。
人々も、時代の渦の勢いに、恐怖を覚えていた。
もちろん、廉達も例外ではなかった。
「・・・倒幕、か。徳川の世の幕引きも、時間の問題じゃな。」
日差しの差し込む縁側で、洗濯をする凜を見つめ、廉は呟く。
「そうですね・・・。人々はより新しいものに目を奪われます。それが正しい道なのか、難しいところです。」
無言の時が2人を包み、小鳥のさえずりがやけに耳に付いた。
すると、廉が湯飲みに手を伸ばした瞬間、大きな爆音が辺りに響いた。
「きゃ・・・!」
凜が小さく震える。
「な、何じゃ今のは・・・!」
廉は凜の肩を抱くと、家の外へと飛び出した。
爆音を聞いた人々が、次々と路地へ顔を出す。
「あれは・・・」
廉と凜は目を見張った。
雲1つ無い江戸の空に浮かぶ、黒い煙。
心を重くするようなその色は、人々の不安を増幅させた。
「廉さん・・・!」
凜がきゅっと廉の着物を掴む。
廉は何も言わずに凜の肩に回した手に力を込め、空を見つめていた。
江戸の空に突如上がった大砲の黒煙から数日。
ついに幕府は朝廷に大政奉還を行った。
新時代の幕開けの為、日本の未来を見極めた武士の姿を見かけることは少なくなり、散切り頭に洋装、という格好が目立つようになってきた。
「・・・どうじゃ、変か?」
肩まであった髪を短く切り、洋服に身を包んだ廉は、襖から顔だけ出し、目を見開く凜の前で困ったような表情を浮かべていた。
「・・・凜?」
廉が顔を近づけると、凜は顔を真っ赤にして、小さく言った。
「え、あ・・・か、格好いい、と思います・・・。」
「そうか!?どれ、凜も出てこい!きっと似合ってる!」
「わ・・・笑わないでくださいね・・・?」
凜は顔を俯かせがちに、おずおずと襖の奥から出てきた。
大きめのフリルが段になった、白を基調としたドレス。
廉の顔が阿呆な顔の能面のように硬直する。
「え、れ、廉さん?」
あわあわと凜が廉の顔の前で手を振る。
「あ、わ、悪い!その・・・凜が、可愛くて・・・。」
「・・・っ!」
2人の顔が蛸の様に真っ赤になる。
「・・・。」
「・・・。」
目線を反らせずに、ただ見つめ合う2人。
耐えられなくなった廉は、わざと明るい声で言った。
「・・・っと、じゃ、じゃあ外にでも行くか!」
「は、はい!」
ぎこちない会話に、どちらぁらともなく、笑顔が零れる。
江戸の町は、西洋文化で溢れていた。
人々は皆、洋装し、見たこともないものに瞳を輝かせていた。
そんな賑やかな町に、悲鳴が響く。
「きゃあああああああああ!!!」
誰かの断末魔。
鮮やかな赤が飛ぶ。
「女の子が斬られたぞ!」
「誰だ、やったのは!」
「あいつだ、外国人だ!」
「おい、大丈夫か!おい!」
少女はすでに絶命していた。
騒ぎを聞きつけた役人達が人だかりを掻き分けてくる。
「こりゃあひでぇ・・・。おい、犯人は!?」
役人が近くにいた女に聞く。
「犯人は・・・外国人でした。」
瞬間、ばっと視線が廉に集中する。
「っ違う!俺はなんもやっとらん!」
必死に説明する廉に、役人が詰め寄る。
「やってないだぁ?何処にそんな証拠があるってんだぁ?」
「そんなもの、此処におった奴らが証明じゃ!俺はやっとらん!」
役人が人だかりを見渡し、にやにやと笑いながら高らかに言った。
「犯人はこの男だ!そうだろう?」
人々は何も言わず、ただ俯いていた。
「・・・!?おい、見ていただろう!?俺はやってな・・・」
「残念だな、外人。此処にいる奴らがいうにやはり犯人はお前らしい。」
かちゃり、と役人が腰の銃に手を掛ける。
「っ何を・・・!」
乾いた音が響く。
「もしもあなたが望むのならば、わたしは貴女の盾となり、貴方は私の矛となり。運命が2人を裂こうともいついつまでも共に在りましょう。それがあなたの過去となり、未来となり、永久に2人を繋ぐ鎖となるならば。」
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ゆるりー
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