「リリアンヌ様?どこへ行かれたのですか?」
僕は先程突然リリアンヌに呼び出された。そのためリリアンヌの部屋へ向かったが、そこには彼女はいなかった。
待っていれば来るだろうと思っていたが、数十分経ってもリリアンヌが部屋に来る気配はなかったため、今僕は城中を捜し回っている。
全ての階を回ったつもりだが、リリアンヌは未だ見つからない。ネイやシャルテット、他の使用人にも訊いたんだけどなあ。
どうしても見つからないので、僕はリリアンヌの代理で呼び出しにきていた使用人に確認すると、あることに気づいた。
リリアンヌは場所について何も言っていないらしい。
いつもの呼び出しがリリアンヌの部屋なので癖でそちらに行ってしまったが、本当はリリアンヌは別の場所で待っている可能性が高い。
しかし、城は全て捜したのだから、他に呼び出す場所なんて……。
……いや、あるかもしれない。
今思い出した。
あの時も……幼い頃も、それからこの前の誕生日パーティーの前にも。
もしその場所なのだとしたら、使用人に言わなかったのも納得できる……。
僕は急いでそこへ向かった。
「遅いではないか、アレン」
やっぱりだ。ここにいた。
「今まで何をしておったのだ?お主でなければ、即行首をはねておったぞ」
「大変申し訳ございませんでした……」
「まあよい。突然呼び出したのもわらわじゃ。それに……場所を伝えなかったのもな」
僕とリリアンヌの秘密の場所。幼い頃、よく城を抜け出して遊びにきていた砂浜だった。
一体こんなところで僕に何の用だろうか。
「アレン。わらわは近頃、周りの人間が怖いのじゃ。カイルお兄様も突然婚約を破棄された。この前には召使いに襲われた。それに……民衆も。どうして皆、私に逆らってばかりなの?どうして……」
リリアンヌは涙を流していた。僕はそっとハンカチを渡す。
「アレンは覚えてる?誕生日パーティーの前に、この場所で私が、『一人ぼっちだ』って言ったこと」
それははっきりと覚えている。あの時僕はその意味がよくわからず、適した言葉をかけられずにいた。
でも、今ならわかる。
「……覚えています」
「……そう……」
「でも」
僕は決心した。あの時は善意で傷の手当てをしようとして平手打ちを食らったが、今泣いている彼女を安心させられるのは僕だけだ。
二度平手打ちを食らおうとも、それはリリアンヌの涙を見るよりはるかに楽である。
「リリアンヌ様は、一人ぼっちではありませんよ……僕が……僕が、リリアンヌ様を一人ぼっちになんてさせません」
「……!」
「例え全ての人間がリリアンヌ様の敵になったとしても、僕は絶対にリリアンヌ様をお守りします」
「……アレン……!」
どうしよう。リリアンヌは再び泣き出してしまった。
「リリアンヌ様……、」
しばらくの沈黙のあと、泣き止んだリリアンヌはいつもの彼女に戻る。
「……嬉しいぞ、お主がそう言ってくれるのは。しかしわらわはお母様のように強い女なのじゃ。ほれ、すぐ泣き止んでおるではないか。用はもう済んだのじゃ。帰るぞ」
本当に君は強いなあ。いつものリリアンヌらしく、颯爽とジョセフィーヌに乗……る前に立ち止まり、優しい声で言った。
「アレン、相談に乗ってくれて……ありがとう」
酷い。私は酷い子だ。
弟を身代わりにしてしまった。
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我が侭で、簡単に人の命を奪うような私に、あの子は優しくしてくれた。
一人で泣いている時には、慰めてくれたし、相談にも乗ってくれた。
そして……ずっと、寂しかったんだろうな。私が記憶を失ったせいで、昔の楽しい思い出も共有できずにいた。
最後には笑って私を逃がしてくれて。
何が一人ぼっちだ。
自分のために何人の命を犠牲にしてきた?一人ぼっちに感じられたのは結局そのせいだ。自分のせいなんだ。
私は悪人。
今まで私が処刑してきたどの人間よりも、私は悪い人だ。悪魔だ。
本当に粛清されるべきなのは、私だ━━━━。
今背後に近づいてきている「彼女」を、別に咎めはしない。
今現在もあなたが私を守ろうとしてくれていることにさえ、
気づくのが遅れてしまった。
罪に気づくのはいつも、
全て終わった後。
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