序章
波の音。潮の匂(にお)い。足から伝う冷たさ。頬(ほお)に伝う温もり。
月明かりの中、一人の少女が夜の海に足をくるぶしまで浸していた。顔を隠すかのようにフードを深くかぶっていた。包むように手で小瓶を持っていた。
フードの中から、ぽつぽつとしずくが降り注ぎ、海に波紋を描く。
「レン…。」
教会の鐘の音が、双子の誕生を祝っている。
黄の国の待望の王族の子供が生まれたのだ。しかし、1つの問題が起こっていた。それは、産まれたのが双子ということだった。世継ぎも王族の血も1人ではいけないのだ。
王も妃(きさき)も頭を悩ませた。そして、1つの結論が出た。六歳まで育て、どちらかを選ぶことにした。
時が過ぎるのは早かった。あっという間に双子の六歳の誕生日が間近に迫っていた。
そんなある日、双子は母である妃に呼ばれていた。
パタパタとかわいらしい足音が二つ、幅の広いきれいな廊下に響いていた。
「リン…そんなに走ったら、転ぶんじゃ…」
双子の弟のレンは、双子の姉のリンの後を追うように、走っていた。リンは器用にも、長いスカートを持ち上げることなく走っていた。そんなリンを心底心配しているレンは、少しおどおどしていた。
「母様がお呼びなの。お待たせしたら悪いわ。」
リンはスピードをゆるめることなく、足を運んでいた。しかし、次の瞬間レンの視界からリンが消えた。それと同時におきたドスンッという音で、レンは何が起こったのかわかった。
レンは、足をとめ膝を折ると、視界にリンが現れた。
リンは派手に顔を打ったらしく、かわいらしい顔をゆがめ、片手で顔を覆っていた。
レンは苦笑いしながら手を差し伸べた。
「だから転ぶって言ったのに…。大丈夫?」
リンはううっとうめきながら、差し伸べられたレンの手に顔を覆っていない手をのせた。
その時、突然すぐ真横の扉が開いた。
レンとリンは何事が起こったのかわからず開いた扉の方を見ると、凛とした女性が立っていた。
その女性を見たリンは、痛みがどこかに飛んだようで、目を輝かせて、自力で立ち上がった。行き場を失った手はむなしく下ろされ、レンは文句一つ言わず、微笑みながら立ち上がった。
リンは女性に抱きついている。女性はそんなリンの頭を優しくなでた。そして、少し離れたところでその様子を見ているだけのレンは、微笑んでいた。少しうらやましそうに見えるのは、気のせいだろうか。でも、そう思ってもいいはずだ。レンは物心ついた頃から、この女性、妃である母に甘えてこなかった。いつも一歩…いや、それ以上引いて、リンのために感情を抑えこんで生きてきのだ。
「さぁ、部屋におはいりなさい。母から渡したい物があります。」
女性は離れようとリンの肩に手を添えて、部屋に入って行った。レンは戸の閉まらないうちに、それでも距離を置いて部屋にはいっていった。
レンは、戸を音のしないようにそっと閉めた。
「そこに座ってください。」
レンは言われたように、ベッドの上に座った。先に入っていたリンは、ベッドの上でぴょんぴょんはねてはしゃいでいた。レンはその様子を見守っていた。
何かを手に持ってきた女性は、リンに座るようにうながしながら、レンの隣に座った。それを見たリンは、はしゃぐのをやめ、女性のレンの反対の隣に座った。
それを確認すると、握っていた手をスカートの上で開いた。そこには、二つの丸いペンダントが二つあった。女性はそれを二人の首にかけてあげた。
二人が首にかかったペンダントを不思議そうに見ているのを見て、女性はリンのペンダントに手を伸ばした。
ペンダントが、貝のように開くと同時に、きれいな音楽を奏で始めた。そして、二人の写っている写真があった。
「母からの、六歳の祝いです。受け取ってください。」
女性はそう言うとリンの頭をなでた。リンはうれしそうに笑っている。しかしレンは、ずっとペンダントを見つめている。だからレンは、女性の愛おしさと悲しさのまじった視線に気づかなかった。
「今日はもう遅いです。部屋に戻って休みなさい。明日は祝いで忙しくなります。」
二人はそう言われて、部屋に戻ろうと、廊下を歩きだした。
歩き出したといっても、リンはまた走り出し、レンはリンと距離をとるため、とまったままだった。
レンがやっと歩こうとした時、女性はレンを呼びとめた。
「レン。たとえ離れたとしても、彼方は私の子で、リンの弟です。せめて、リンとは離しません。だから、何もできない母をどうか許してください。」
レンには、その言葉の意味がわからなかった。
「母様から、プレゼント貰っちゃった。」
リンはうれしいあまり、自分の部屋に帰ってもはしゃいでいた。ペンダントは、手に握っていた。
リンは女性の部屋同様に、ベッドではしゃいでいた。しかし、そうしているうちにペンダントを握る手がゆるんでしまい、手からペンダントが落ちた。
床に落ちたペンダントは、蓋があき、音楽が始まった。
リンはあわててベッドから下り、ペンダントを拾った。
リンはペンダントを見た瞬間、青ざめた。
「写真が…。」
リンはあわてて床を探した。しかし、どこを探してもペンダントにあったはずの写真はなかった。
しかし、リンはあっさりしていた。
「あとで、母様からもらえばいいわ。さ、寝ましょう。」
リンは、ペンダントを棚に置いて、ベットに入った。
翌日、レンが消えていた。死んではいない。城下町に捨てられたのだ。
きっと終わりは この時から 決まっていたのだろう
そして舞台は、八年後に移る。
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お読みになる前の注意事項
・作者には文章表現能力が皆無なため、基本会話のみで進行します
・キャラの性格がほどよく崩壊しています
・実際のとーや宅とは色々設定が違います
・なんていうかフリーダムです
おkおk何でもщ(゜Д゜щ)カモオオオンな方はドゾー。
<導入>
某笑顔動画でみっくみk・・・じゃなか...うちのふたご #1
fumu
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