響さんが警護として入って、あっと言う間に学校中の注目の的になっていた。確かにあの人は目立つ。心なしかわざと派手に振舞っている様にも見えた。放課後、大学側への連絡通路をてくてく歩いてる響さんを呼び止めた。
「どうしました?鶴村さん。」
「何考えてるのかなーと思って。」
響さんは少し辺りを見回してから笑顔で口を開いた。
「参加者の安全。」
「本音は?」
「目立ちまくって犯人を挑発しつつ燻り出しだな。」
「…緋織ちゃん入院してた事知ってますよね?10日間位…それに彩花ちゃんやしふぉんちゃんも…。」
「ああ、聞いてる、無論そっちも調査中だ。」
事務的で素っ気無い態度に何と無く苛々した。ずっと自分の事好きで居てくれる女の子が10日間も入院してたって言うのに冷た過ぎるんじゃない?
「どうして緋織ちゃんに会ってあげないんですか?!真壁さんが居るからですか?!」
「そうだね、俺も命は惜しいから。」
「でもちょっと冷たいんじゃないですか?!ほったらかしなんて…緋織ちゃんが可哀想じゃないですか!」
その言葉に響さんは笑ってこっちを見た。だけど私の背筋には寒気が走った。はっきり言って目が全く笑っていなかったから。
「余計な事心配する暇があったらさっさと帰って俺の仕事減らして。」
「んなっ…?!」
一瞬バッグで殴ってやろうかと思った。緋織ちゃんには悪いけどこの人酷過ぎる、意味解んない、優しいのも仕事だって言うの?!
「…もう良いです!」
「あ、おい、ちょっと…!」
声を無視して私は踵を返すと一歩一歩踏み付けてる気持ちでその場を後にした。何よあれ!もう少し言い方って物があるでしょうに…緋織ちゃんの事にしたっていきなりあんな手の平返すみたいに態度変えて!もう良い、私も真壁さん応援しちゃうんだから!
「…むにゃ…。」
「ん?…って、緋織ちゃん?!何でこんなベンチで寝て…風邪引いちゃうよ?起きて~?」
どう言う訳か緋織ちゃんがラウンジのベンチで眠りこけていた。幾ら何でも無防備過ぎる。
「…あ…。」
追い駆けて来たらしい響さんは、熟睡してる緋織ちゃんに気付いて暫く言葉を詰まらせていた。だけどこのままにもして置けないと思ったのか、緋織ちゃんの肩を揺らして起こしていた。
「起きろ、風邪引くぞ?」
「…ん~…う~ん…。」
「真壁はどうした?お前置いて帰っちゃいないだろ?それとも送って行こうか?」
「ひっ…!!」
緋織ちゃんは飛び起きると真っ青な顔で目を見開いていた。そして私に気付くと、弾かれる様に私の手を掴んで走り出した。
「えっ?!えっ?!ひ、緋織ちゃん?!どうしたの?!何で…。」
「逃げて下さい!」
「えぇっ?!」
「あの人…侑俐さんじゃない!幸水さんの変装でもない!あれは…!きゃぁっ?!」
悲鳴に振り返って、目に飛び込んで来た光景に私は膝からカクンとへたり込んだ。そこには緋織ちゃんの髪を鷲掴みにして笑っている響さんと同じ顔の『誰か』が立っていた。
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