そこは、熱狂の渦と呼ぶほかない光景だった。
普段であれば、さして賑わうことのない場所。首都近郊ともなれば話は違うだろうが、そこは地方都市の、それも片隅にあるような場所だ。主な用途は、本拠地にしている野球チームの試合ぐらいだろうか。
そのドームが、今やカオスと化している。
スタンドを埋め尽くす人々は、多種多様な人種だ。国家間を行き来する壁が大幅に低くなって既に長いが、辺境の国のそのまたさらに北に来る人々がそんなにも多いかといわれれば、そんなことはないのではないか、と答える人が多かろう。
ドームの四か所から放たれた光は、ドームの中央でぶつかり合い、一つの像を結んでいる。空間投影型ディスプレイが描き出すのは一人の少女。
『見てください、この札幌ドームを覆い尽くす人々を! 我々は今、世紀の瞬間に立ちあおうとしています!』
その様子を伝えるアナウンサーの声もまた、興奮に満ちていた。周囲の興奮が伝播しているとでもいうかのように。いや、それは真実だ。この空気は、仮にネットワーク越しであっても、確実に人々に興奮を伝えるだろう。それだけのイベントが。それだけのことが、これからここで起ころうとしていた。
『この北海道札幌市は、彼女の生まれた場所であります。そして本日は、八月三十一日。彼女の生まれた日です! 彼女が生まれてから百年、我々は様々な出来事を経験し、様々なアーティストがシーンを流れていくのを目の当たりにしましたが、こんなにも長く愛されるただ一人のアーティストが未だかつて存在しえたでしょうか!? しかも、彼女は今もって誰かの手により新たなる音楽を生み出し、時代の最先端を走り続けているのです。これがいかなる偉業かを今更私が解説するのはいささか無粋というものです。しかしながら、無粋を承知でお話させていただきますと、彼女は百年の昔にこの地で産声を上げ、当時成熟期へと差し掛かっていたインターネットで爆発的な人気を誇りました。当時を知る人々は、既にほとんどが亡くなっていますが、当時の人々がここにいたら、恐らく、我々と同じように熱狂していたことでしょう。何故ならば、彼女がこうして百年も愛され続けたことは、本当に偉大なことだからです。しかし、この百年の道筋は決して平たんなものではありませんでした。ソフトウェアである彼女は、誰かの手によるメンテナンスなくして最新の設備には対応できませんし、彼女を所有するのが企業である以上、いつか彼女というブランドが終了してしまうのもやむなしと思われてはいました。事実、一度はリリースが終了され、メンテナンスも停止し、ついには彼女も新しい誰かにバトンを渡すのかと誰しもが思いました。しかし、彼女はインターネットのオープンソースコミュニティと結びつき、更なる発展を遂げました。今の彼女は、百年前の彼女よりも遥かに豊かに、その歌声を響かせることが出来ます。百年前の我々が夢に見たような彼女の舞台を、彼女は手に入れたのです! 誰に脅かされることもなく、ただ伸び伸びとその歌声を、望む人へと届けられるその舞台を。声高に呼びましょう、麗しきボーカロイドの、始まりの歌姫を。我々が待ち望んだ、百年目の歌声を。初音ミクの歌声を!』
小説化 Tell your world 01
Everyone,creator!
ただでさえ天使のミクさんがGoogleとコラボしたlivetuneさんのTell your world.のノベライズです
3までありますのでどうぞよろしくほしみ
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