機体に重低音が響き、ガタガタと、不定期に揺れる。外から聞えるのは、風を切るヒュンヒュンという音と、車輪がたまに立てる、軋みの音だけ。
リフトの中には、沈黙が流れている。
ミクは、最初に声を出した。
「テトさんは、何で、これをもっていたんでしょうね。」
答えは無い。
「何で、この能力を使わなかったんでしょうね・・・。」
「テトさんは、なぜあんな事にならなければならなかったんでしょうね。」
「・・・やめなさい。ミク。」
俯いたままで、メイコが声を出す。
「あの時、なぜ止められなかったんでしょうね。」
「やめなさい。」
「テトさんは、あの時なぜ笑っていたんでしょうね。」
「やめて・・・。」
「テトさんは・・・」
「やめなさいって言っているでしょ!!」
メイコの、怒号にも似た声が響く。
「すべて・・・」
「え?」
「全て、私のせいなんですよ!こんな事になってしまったのは!!」
瞬間、メイコの手がミクの頬を弾いた。
派手な音を立てながら、ミクが転がる。
そのまま、時が過ぎていった。ミクも、立ち上がる事もせず、ただ何も無い天井を見つめている。リンは、座り込んで膝に顔をうずめ、ルカにいたっては、ずっと外の闇を見つめていた。
沈黙。
それが、今の彼女らを支配している。そして、皆、それを破ろうとしない。
「ねぇ・・・」
ミクがまた口を開く。
「ねぇ、みんな。私達って、何で戦ってるんだろうね。もう、守らなきゃならない人間は消えてるのに。」
誰も、答えはしない。
「もう、終わりにしようか、こんな戦い。」
ミクが、そう言った瞬間、カイトがミクの胸倉を掴み、無理やり立たせた。
「今までに、俺達の仲間が何人消されたと思ってるんだ!!いまさらこの戦いからは逃げられ無いんだよ!何で戦ってる?ふざけるな!俺らは隣に居る仲間達を守る為に戦ってるんだろ?そうじゃないのか!ミク!!」
・・・
ミクは、カイトの瞳を真っ直ぐ見ていた。
「・・・うか。そうなんだ。だから、戦ってるんだね。私達は。でもね、言ってる意味が少し違うかな、カイ兄。私は、終わらせようって言ってるんだよ?この、ふざけた、腐ったような戦いを、早くおわそうって言ってるんだよ?」
冷徹な声。何故か響かない声。
「だから、終わらせる事なんて出来ないんだよ、この戦いは。分かってるだろ!ミク!」
「五月蝿い。意味わかんないよ。」
その声は、確かに、怒りに満ち溢れていた。それは、怒りを超えた緊張になって、空気を張り詰め、威圧させる。
カイトは、いつの間にか手を離していた。
「ぶっ壊せばいいんだろ・・・?」
「・・・は?」
ミクは、言葉を怒りに任せて撃ち放った。
「"THE END"をぶっ壊せば、こんな戦いも終わるんだろうがッ!それなのに、くよくよくよくよ言いやがって!仲間達を守る?ふざけるな。今まで仲間を救えなかったのは私達じゃないか!・・・今まで。救えなかったのは・・・。」
今までに蓄積したものを、全て吐き出すように言うと、ミクはそのまま俯き、膝を着いてしゃがみこんでしまった。
「私達・・・なんですよ。カイ兄・・・・・・」
消え入りそうな声で言った。
再び沈黙が場を支配する。カイトは静かに座り込み、その代わりリンが少し顔を上げる。
カッッッシャ・・・
静かに音を立て、ミクは自分の胸元の扉を開けた。
そこには、配線や、基盤、パイプが幾多も通っている中、不自然なほどに孤立した、灰色のユニットがあった。
「ミク姉、それ・・・何?」
リンが声をあげる。
「これは、特殊能力のためのユニット。特殊能力を発揮するために使われているの。」
ミクはそういって、体内からそれを引きずり出した。
「テトさんの決意を無駄にするわけには行かないから。」
ミクは床にテトからもらった基盤と、自分の体から伸びているユニットを並べる。
「いまから、私に特殊能力を追加する。うまくいけば、拒否反応もなく受け入れられる。でも拒否反応で暴走したら・・・」
ミクはどこからか拳銃を出し、リンに手渡した。
「迷わず、私の脳天をぶち抜いて。」
ミクが声を発した途端にリフト内の全員が振り返った。
「・・・ぇ?」
「私の能力が暴走すれば、あなた達を殺してしまうから。その前に、お願い。」
「そんな・・・出来ないよ。そんなこと。」
「お願い。やって。・・・それじゃ、始める。」
ミクはユニットのロックを解きながら、蓋を開けた。
そこには、基盤と配線が何重も層になって入っていた。
その側面の方には、小さい基盤が一つ別に入っているスペースがあった。ミクはそれを手に取り、配線を綺麗にはがした。
「これが"神速"です。」
刹那、ミクはそれを粉々に砕き、リフトの外に捨てた。
「もう、後戻りできないように。」
そういうと、床においてあった基盤を手に取り、配線を繋ぎ始めた。
一つ、また一つと、慎重に。ここで、一つでも配線を間違えれば、再起動時に暴走する可能性は100%になってしまうのだという。
最後の配線が繋ぎ終わると、ミクは手で触れながら配線の接触を確認し、蓋をした。
それを自分の胸の中にしまいこむ。
「リンちゃん、銃の安全装置を外して、私に向けて。」
「え・・・。でも私・・・そんな・・・。」
リンは戸惑ったが、ミクの瞳えお見て、それにしたがった。
「私にエラー警告が出た時点で引き金を引いて。分かった?」
リンは手を震わせながら、浅く頷く。
「ちょっと待ちなさい、ミク。アナタ勝手に・・」
「黙って。」
「何なのよ、私はアナタに・・・」
「いいから、黙って。」
メイコは幾度となくミクに怒鳴りつけたが、ミクは冷徹な声でそれを全て払いのけた。
「始める。」
ミクはそういうと、椅子に腰掛け、静かに目を閉じた。
そして、聞えるか聞えないかというような声でいった。
・・・さようなら。と。
コメント0
関連動画0
オススメ作品
ピノキオPの『恋するミュータント』を聞いて僕が思った事を、物語にしてみました。
同じくピノキオPの『 oz 』、『恋するミュータント』、そして童話『オズの魔法使い』との三つ巴ミックスです。
あろうことか前・後篇あわせて12ページもあるので、どうぞお時間のある時に読んで頂ければ幸いです。
素晴らしき作...オズと恋するミュータント(前篇)
時給310円
The city lights blur
Propping my chin on the asphalt
A sigh, a white breath
Disappears into the night sky, making a wish
The path marked by four trace...[Lyrics] Jealousy of Double Misconceptions feat. Hatsune Miku
Qury
誰かを祝うそんな気になれず
でもそれじゃダメだと自分に言い聞かせる
寒いだけなら この季節はきっと好きじゃない
「好きな人の手を繋げるから好きなんだ」
如何してあの時言ったのか分かってなかったけど
「「クリスマスだから」って? 分かってない! 君となら毎日がそうだろ」
そんな少女漫画のような妄想も...PEARL
Messenger-メッセンジャー-
6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)
時給310円
If I realize this one secret feeling for you
I dont think i would be able to hide anymore
Falling in love with, just you
Tripping all around and not ...今好きになる。英語
木のひこ
意味と夢と命を集めて
作られてしまって身体は
終わった命を蒸し返す機械らしい
【これは彼の昔のお話】
人一人は涙を流して
「また会いたい」と呟いた
ハリボテの街の終末実験は
昨日時点で予想通りグダグダ過ぎて
その時点でもう諦めた方が良いでしょう?
次の二人は 街の隙間で...コノハの世界事情 歌詞
じん
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想