“バケツをひっくり返したような大雨”



そんな比喩がぴったり当てはまるような大雨の中、私は立ち尽くしていた。




傘もささずに、ただそこに存在しているだけ。



(何、してるんだろう)



ずっと雨に当たっていたからか、寒いとすらも感じなくなってきた。



感覚が麻痺しているらしい。



普段ならば自分を嘲ったりしたけれど。





私から何もかもがなくなった。







どれほどの時間が経ったのだろう。



何時から私はここにいるのだろう。




わからない。



わからない。



立ち尽くすことだけが、今の私にできる唯一の行動だった。





「好き、だったのにな…」





雨が好きだった。



彼を想わせるから。






雨が嫌いになった。



―彼を、思い出させるから。





「っ、」





再び眼から次々と落ちてきた其は、空の涙とともに消えていく。





「―の所為だよ…!」

「――の、所為、」





紡がれる其もまた、空の叫びとともに消えていく。




声を発することを無駄だと悟ると、また黙しながら雨に当たり続けた。

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雨の記憶

HPに載せたものを、少しいじってみました!
一応小説となってますが、歌詞のように作りかえる事もできると思います♪

閲覧数:38

投稿日:2009/12/31 21:43:31

文字数:504文字

カテゴリ:小説

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