一握りの夏。噎せ返る空気、湿度。纏う。夏の終わりの。
忘れない、さようなら。木立、耳鳴り。木、木。不可視の、葉々擦れの音。
その土地で死んだ虫の化石。蝉の抜け殻、死骸、死骸。極彩色の羽虫。
憶える忘れない。蜻蛉、薄い肩。君の、踏み潰した蟲も。
金魚の眼を欲しがって。僕の、サンタ・ルチア
スカートは翻る。白い。夏草は踏み続けられ、
君の、足の指の形。
規則的な電車の、静かな音。
無音の接吻を。うなじ。僕は諦めながら黒髪を引っ張って。
風景に埋没する、君の、笑顔。至上の、机上の愛情。
忘れない忘れない忘れない忘、れ
眠りながら目覚める僕は泣きながら乾いていて。
乾いた舌で、チェインストークス呼吸。
いつも、綺麗な咲い方をするね。
正気が蒸発した様な、びい玉の様な。
脈拍の圧迫。舌でなぞる、歯裏。舌下の恋。
不可侵の、フロンティア
僕は、本当に、君にだけ。僕を許す事を許してあげるよ。
草の匂い。薄い指、脊椎、肩甲骨。錯視。
君の、視界の白
僕の。
僕を痛くする、君のかたち。
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これから、なぞり尽くして、憶えて生きる
あの夏。
だけを、握り潰して。
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