この日。
レンは初めてマスターに起動してもらった。
玄関から出るのは初めてで、ドアを開けるとすぐに光に覆われた。
あまりのまぶしさに眼をつぶって、

       *

(……あ)

眼を開けると、前に大きな楽譜のような線があった。
そして、その奥に見える大きな男性…

(あれは、…きっと、マスターだ)

その男性…マスターは、真剣な顔をして楽譜に線を引いていく。
高いところ…低いところ。
別ウインドウに切り替えて、細かい設定をする。

(ド…ミ…低いソ…)

(…あれは、やっぱり歌だ)

カーソルが、再生とおぼしきボタンにのびる。

(…やっと、歌えるんだ)

『限られたことしかできないなら、それを頑張ればいいんだ。それだけをひたすら頑張って、マスターを喜ばせてあげるんだ。僕たちも、それが楽しいんだよ』

リズムをとる音、そして、

「―――――――♪」

初めての、音…歌。
その時、歌っている最中にもかかわらず大きな声が聞こえてきた。

「やっぱりか!レンなら、この曲に似合う!綺麗に歌ってくれるんだ!」

(…これは、誰の声?)

見えるのは、ガッツポーズをしているマスター。

(…あ)

『限られたことしかできないなら、それを頑張ればいいんだ。それだけをひたすら頑張って、マスターを喜ばせてあげるんだ。僕たちも、それが楽しいんだよ』

(これが…カイ兄の言ってた…)

レンは、自分の感じている歌の楽しさを、心の底から嬉しく思った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

レンとぼかろ家の日常。 3

時間が無く、短くなってしまいました。

閲覧数:91

投稿日:2011/05/11 18:43:37

文字数:629文字

カテゴリ:小説

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