#15「前に進むということ」



翌日、私はいつも通りの朝を迎えた……いつも通り、結構ギリギリ

支度をして、リビングにいくと、すでにアイツがいた

両親もそこにいたが、いつもと変わらない様子だった


「おはよ、リン」


何事もなかったかのように笑顔のソイツ

相変わらずボサボサっとした髪質で、うしろで少しまとめている

うん、やっぱり男でそれはないな


「……お、おはよ」


私がそういうと、パリンと台所で母が茶碗を割り、テーブルについていた父もブーっとコーヒーを噴き出す

明らかに二人とも驚愕の表情をしている

な……なんだよ……挨拶が、そんなに珍しいか?


はははと大爆笑のアイツに私は腹が立つ


「もういい!私、学校いくから!」


そういって、不機嫌な私は玄関にどかどかと進む

後ろからは「なんだ……いつも通りじゃないか、びっくりしたぁ」という父の声が聞こえなくもなかったが、無視だ、無視!




私は家を出て歩き出す


「おーい、リーン!」


しかし、後ろからアイツの声がきこえてくる

無視だ、無視……


「リンったら!おーい!」


くっ……近所で恥ずかしいことするなよな……まったく


「なによ?」


私は渋々振り向くと、そこにようやく追いついてきたアイツがいた


「はい、これ。リンは今日のお昼も抜きにするつもりだったのか?」


そういって手渡したのは私のお弁当だった


「あ……しまった……っく、借りだとは思ってないからね!」

「うんうん、いいよ、それで」


……やっぱり、その余裕ある感じがムカつく

……昨日、まともに見えたのは錯覚に違いない



「リン、グミさんにも心配かけたんだから、ちゃんと話せよ?」


そして、ソイツは上から目線でそういった


「うるさいな……わかってるよ、そんなこと!私はアンタよりも、グミのこと真剣に考えてるもーん」

「へぇ、そっか。それはえらいな」


にこにこと感心するバカを見て、私は肩透かしをくらう

そこは言い返すところでしょう……仮にもアンタの彼女のことなんだから……

あ、自分で言ってて腹が立ってきた



「あ、そうだ!リン!」


突然、コイツはハッと思い出して、私の名前を呼んだ……気軽に呼びすぎ……


「今度の週末、グミさんと三人で遊びに行かないか?」


それはバカからの謎の提案


「はぁ?何言ってんの?そんなの私に居場所ないじゃん!それにグミがいないのに、そんなこと勝手に決められないでしょ?」


いや……バカだ、バカだとは思っていたが、ここまでとは……


「そのグミさんからのリクエストなんだけどな?リンちゃんも一緒にって……」


グミが……?


「なんかグミさん、ずっと僕と一緒だと気疲れしちゃうみたいなんだ。だから、いつもみたいにリンが僕の恋路を邪魔してくれればいいから」

「ふーん、なるほどね……って!私のこと、そういうふうに思ってたわけ!」


コイツ、本当にぶん殴ってやろうか?

いや、てか、邪魔なのはそっちだし!


「ははは、それは冗談だけど、グミさんがね、【今後もリンちゃんとの時間を大切にしたい】っていっててさ。……僕としてはちょっと妬けるね」


そういって苦笑いをする兄……

でも、結局、グミのいうことを受け入れてるんだなと思うと、【コイツやるな】と思う

それにグミがそういってくれたことが素直にうれしい



「ふふーん、いっそのこと、そのままグミを私のものにしちゃおうかなー」

「なっ!そ、それは駄目だ!」



私がからかってみると、兄は意外にも反論した

それだけ本気だということなのだろう



「じゃ、しっかりと守ってあげてね!少しでも泣かしたら、私がアンタにハサミを突き立ててあげるから」


ぐへへと出来るだけ悪い顔で笑って見せる


「うん、そうならないように気を付けるよ」


笑顔でそう返されると、私は一人で恥ずかしいじゃないか……

コイツに足りないのはユーモアだな……


「じゃ、先に行ってるよ、リンも遅れるなよ?」

「わかってるから、さっさといけ、バカ」


私たちなりのいつもの挨拶をかわすと、アイツは先に走って行った

その背中は、いつもより大きく見えた








結局、アイツとグミは付き合ってしまったわけだが……

それでも私の居場所はなくならなかった

アイツはバカだけど、なんだかんだで私のことを心配してくれている

グミも私のことを必要と思ってくれている

私はアイツのことは相変わらず嫌いだけど、少しは認めてもいいかなって思えた

それにグミのことは、やっぱりあきらめきれないし、好きなことに変わりはない


私とアイツ、私とグミ、アイツとグミ……

それぞれ思うところは違うのかもしれない……

けれど、お互いに尊敬しあって、お互いに必要と思えたなら、今はそれでいいと思った

私とアイツとグミ、他人から見ると、かなり変わった関係だけど……

それでも、私たちにとって、とてもバランスのとれた三角関係がそこにはあった




私が空を見上げると、今日はよく晴れていて、太陽がとてもまぶしかった

今日はいいことがありそうだ

そんなガラにもないことを思った後、ふっと笑って、私は前を向いて歩き出した

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

私とアイツとあの子 #最終話

こんにちは しるるさんですw
いつもお世話になってます、今後もかまってください←
【私とアイツとあの子】ここまで読んでくれてありがとうございますw

私なりに高校生の恋愛をこじらせたものを書いてみたわけですが、どうでしたでしょう?w
リンちゃん、レン君、グミちゃん、それぞれを際立てることが出来たと自分では思っています( `ー´)ノ



あと、裏話として、序盤、今回はいろんな意味で結構ギリギリでいきますとか言っていましたが……
私のWordの調子が悪くて、何度も作品が消失するという事件から、その部分が面倒になりました←
#10が一回白紙に
#11が二回白紙に
#14に至っては三回白紙になるという


次回作は未定です
というか、まだ何も書いてませんw
今後もよろしくですw

閲覧数:270

投稿日:2014/02/02 19:42:09

文字数:2,217文字

カテゴリ:小説

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  • グラトニー

    グラトニー

    ご意見・ご感想

    しるるさん。はじめまして。グラトニーと申します。
    私とアイツとあの子、とても面白くて一気に読んでしまいました(^^)
    ありがとうございました!

    2014/05/07 20:46:08

    • しるる

      しるる

      はじめまして
      それはそれは…粗末なものをよく我慢して読んでくださいましたw
      こちらこそありがとうございますw

      2014/05/07 20:54:41

  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    わぁぁぁ!!
    よかったです!!
    途中しるるさんに災難がいっぱいかかったかと思いますが、お疲れ様でした!!

    次回作楽しみです!!
    鏡音兄妹のお父さんかわいいですww

    2014/02/03 20:18:01

    • しるる

      しるる

      さすが私の嫁!
      イズミさんには、ずっとお世話になってますw
      恩返しせねば!←

      次回作は……なんだろうねー←他人事

      2014/02/03 21:43:11

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