《第一章・悪ノ娘》
むかしむかしあるところに悪逆非道の王国がありました。それは黄の国と呼ばれておりました。そして、その頂点に君臨していたのはまだ齢十四の王女様でした。
彼女の部屋には絢爛豪華な調度品が溢れており、国中の宝石が集められ、外国の珍しい品々が毎日のように届けられておりました。
そばには顔のよく似た召使が仕えていて、外出なさる時は必ず愛馬のジョセフィーヌに乗っておりました。
まさに全てが全て彼女のものでした。
どこからお金が出て来るか、その心配がいるはずもありませんでした。なぜなら彼女は王女なのですから。
「お金が足りなくなったなら、愚民どもから搾り取りなさい」
当然、国民の暮らしがよいはずもありませんでした。重い税に苦しむ日々が続いておりました。
時には王宮に直訴をする国民もおりました。しかし彼らは決まって首をはねられて帰ってきました。
苦しむ人々の嘆きは、決して王女に届くことはありませんでした。
ある日、王女がお出かけになさった時のことです。王女の目に植物の根を二人でかじっている小さな兄弟が映りました。王女は大臣に尋ねました。
「どうしてあの子たちはあんなものをかじっているの? パンは食べないの?」
王女には不思議でした。どうしてあんなにも泥だらけのものを食べるのか。どうして二人で一つのものを食べるのか。
大臣はありのままの事実を答えました。
「食べるパンがないからです。この辺りは今年、不作だったものですから」
その答えに王女は声を上げて笑いました。本当に高らかに、凛とした声でした。
「アハハッ、本当におかしいわ。パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」
王女のこの発言は瞬く間に王国を駆けめぐりました。人々の不満は日に日に募るばかりでした。
そんな暴君王女も年相応の恋心は持っておりました。王女が恋をした相手は海の向こうにある、青の国の王子でした。
しかし、青の国の王子は隣国である緑の国の娘に一目惚れしてしまいました。
それを知った王女は嫉妬に狂いました。そして、ある日大臣を呼び出して静かな声で言いました。
「緑の国を滅ぼしなさい」
幾多の家が焼き払われ、幾多の命が消えてゆきました。この時も苦しむ人々の嘆きは、王女には届きませんでした。
王女は鐘の鳴る時間になると決まって、
「あら、おやつの時間だわ」
と言いました。そして、召使の作ったお菓子に舌鼓を打ちながら戦況の報告を聞いておりました。
緑の国が滅んでしばらく経った頃、悪の王女を倒すべく人々は立ち上がりました。烏合の彼らを率いるは赤き鎧を身にまとった女剣士でした。
つもりにつもった人々の怒りは国全体を包み込み、赤き革命軍は次々と王国の兵士を倒していきました。長年の戦で疲れた兵士たちなど彼らの敵ではなかったのでした。
ついに王宮は革命軍に囲まれてしまいました。家臣たちも捕まるか殺されるか逃げ出すかしてしまい、王宮には王女一人となりました。
そして、かわいく可憐な王女も捕らえられました。
「この無礼者!」
王女は最後まで王女でした。その堂々たる態度や捕まってもなお、衰えることはありませんでした。
しかし、王女の為の楽園は脆くも儚く崩れていきました。
王女の処刑の時間は午後三時、教会の鐘が鳴る時間でした。
断頭台に立った王女は本当にただの十四歳の娘でした。鐘が鳴り響き、娘の首ははねられました。
彼女が処刑された時、誰かが笑いました。それにつられて周りの人々が笑いました。その笑いは国中に広がり、ついには国が笑いました。
彼女は最期にこう言いました。
「あら、おやつの時間だわ」
後の人々は彼女のことをこう語ります。
「あぁ、彼女はまさに悪ノ娘」
悪ノ娘・完
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