明日の朝には出発と言う事でお土産を含めた荷物をまとめていると、ひおが戻って来た。
「お帰り、大丈夫?ひお。」
「うん、寝不足が原因だったみたい。」
ひおは笑っていたけど、やっぱりちょっと元気無さそうだった。心配になってぎゅーっとひおを抱っこしてみる。
「頼りないかも知れないけど、出来る事あったらちゃんと言ってね?ひお。」
「しふぉん…。」
「ひおが私の事ツマンナイ子だって思ってても、私はひおの友達だからね?」
ひおは暫く黙っていたけど、堪え切れなくなったみたいにポロポロ涙を零した。真っ赤になった顔を何度も擦ってるひおに慌てて近くにあったバスタオルを渡した。オイオイと泣いてるひおの頭を撫でていると、しゃくり上げながらひおがポツポツと話し始めた。
「怖い…。」
「怖い?ひお、誰かに酷い事されたの?意地悪言われたの?やっつけて来るよ?」
「違う…私…1人が怖い…。」
「え?」
「だって…友達も恋人も居なかったの…皆…私の事玩具みたいに扱って…誰も…誰も信用出来なくて…!またあんな風になっちゃうんじゃないかって思ったら…!」
ひおは泣きながらぶるぶると震えていた。私がひおに初めて会ったのは入学式だった。綺麗な子が居るってクラスの子が騒いでて、面白そうだから一緒に見に行った。そしたら廊下でガラの悪い先輩に絡まれた私を王子様みたいに颯爽と現れたひおが助けてくれたんだっけ。今にして思えば、ひおが武道強いのも、怖いからなのかも?
「大丈夫、ひお、大丈夫だよ。皆ひおの事苛めたりしないから、私が絶対そんな事させないからね?」
「しふぉん…。」
一頻り泣いた後、ひおは床に座り込んだまま眠ってしまった。こんな所で寝たら風邪引いちゃうと思って起こしたけど、ぐったり眠ったまま起きなかった。引っ張っても動かせない。途方に暮れて居ると拓十君からメールが来た。天の助けと言わんばかりのタイミングに感謝しつつ事情を説明した。
「泣き疲れて寝るとか、幼稚園児かよ…ったく。」
「わーい、拓十君力持ち。」
呆れつつも拓十君はひおをお姫様抱っこしてベッドへ寝かせてくれた。何だかんだ言って男の子だなぁ。最初の頃とか女の子みたいだったのに、最近はサイト見た他のクラスの子や、先輩や、他校生なんかにも声掛けられたりしてるし、お祭り行った時も綺麗なお姉さんに…。
「どうした?眉間に皺寄ってるぞ。」
「拓十君はさ、何で私をペアに選んだの?佐藤さんが言ってた、バトル最下位だったから拓十君だけは姫の選択権与えられたって。」
「あの女余計な事を…。」
「ねぇ、どうして?」
「どうしてって…。」
じっと拓十君を見ると、見る見る顔が赤くなって行った。つられて私もドキドキしてたけど、今目を逸らしたら何か負けな気がして逸らせなかった。不意に頬に手が置かれて、唇に柔らかい物が触れた。頭の中が真っ白になってパチパチ瞬きしか出来なかった。
「…自惚れとけ、馬鹿。」
「は、はい…。」
そのまま拓十君は部屋を出て行ってしまった。桜華しふぉん、15歳、生まれて初めて腰が抜けました。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想