なまえのないうた(nm7972553)



ゆっくりとギターを手に取り音色を奏でる。

一人の部屋にただその音が響いて、なおさら静けさを強調する。



窓を見ると日が沈みかけていた。あぁ、もう夕方か。

一人でいると時間の感覚がなくなるな。

ギターを置いたその時だった。

窓から道路を覗くと、一人の少年がひたすら走っていた。

その顔がどこか不安そうで、昔を思い出す。

だんだんと周りが暗くなって、なぜか大人もいなくて。



ただ、世界に一人ぼっちの気分になる。



視線を少年にも出すと、彼は走っていた足を突然止めた。

少年の先を見る、そこには買い物袋を持った一人の女性。




「ママッ!」



少年の声が響き渡る。

母親の腕の中に納まり、少年の顔は見えなくなった。



「今日のご飯はっハンバーグ!」



お決まりのようなセリフが響き渡る。

子どもの声は、何故こんなに響くのか。

でも、ハンバーグか…そういえば食べてないな。

久しぶりに食べてもいいかもしれない。

後ろを振り返る。


夕日に染まった台所、僅かに雫を滴らせる蛇口。

今朝朝食手使った食器はそのまま。

食器に溜まった水が奇妙なほど、静かな音を立てる。




「……そっか…」




今、俺は一人なんだ。


突然妙なさみしさに襲われた。

もう、そんな年でもないだろ…。


自分に失笑しつつ、先程まで音を奏でていたギターを手に取る。


この静寂をなんとなく壊したい。




唄を歌おうか。

それは、突然の衝動で。

決まった歌なんてなかった。


「あ……」



そういえば、この前大きな駅に行ったとき。

俺のように明るい髪の少女が路上で歌を歌っていた。

ギターを片手に、とてもきれいな声で。

俺も暫く聞きほれた…。

その少女が最後にやってくれたのが即興だった。



「えっとじゃあ…今から!私の感情?えっと心情的なものを歌にします!」



とか言って。彼女は歌った。

彼女の歌は、今日の夕食は白米がいい…というような歌詞から始まり。

最後は納豆ご飯の歌となり完結した。

ちなみに、それに影響された俺の朝食は納豆ご飯である。




「よし、じゃあ俺も歌ってみるか」




途中は鼻歌を混ぜてみた。

落ち着いた曲にしたくて、鼻歌を歌う。


「……?」



ギターのコードが少し見えにくくなっているのに気が付く。

ふと窓を見ると、もう日は沈みきり何もない町並みが見える。



もう夜か。



それでも、歌は止めなかった。

静けさを紛らわせる曲。


歌に名前はない。


名前なんて要らない。



これは、だれにも知られることがない。





俺だけの歌











ライセンス

  • 非営利目的に限ります

なまえのないうた イメージテキスト

なまえのないうた、があまりにもツボだったので。
曲のイメージを壊していなければ幸いです。

nm7972553 「なまえのないうた」

nm7927775 「Never]

閲覧数:645

投稿日:2009/08/22 19:39:55

文字数:1,172文字

カテゴリ:小説

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