UVーWARS
第三部「紫苑ヨワ編」
第一章「ヨワ、アイドルになる決意をする」
その24「面接試験」
出てきた人は、ショートパンツでスラッと長い足を見せていた。
金髪なので、さっきの「ルナ」さんだとすぐに分かったが、視線を上に移してぎょっとした。
金髪に、ウサ耳が生えていた。
エリーさんもユアさんも、多少引いたところはあったが、平静を装っていた。
わたしも頑張って顔には出さなかった。
ルナさんは手に持ったクリップボードに目を落とした。
「それでは、テストをstartします。名前をcallされた人は中に入ってください」
視線がわたしを捉えた。
「紫苑ヨワさん」
「はい!」
わたしは精一杯、元気を込めて返事をし、立ち上がった。
「All right! 元気があってヨロシイ」
発音がなんだか外人っぽい。それは気にならない。頭の中は受験モードに切り替えた。
あとは集中して、ネルちゃんと練習した通りに動く。ユアさんやエリーさんが合格できるように多くの情報を持って帰る。
ルナさんは扉を閉めて中に戻った。
わたしはその後に続いてドアノブに手を伸ばした。
おおっと。危ない。危ない。面接の基本を忘れるところだった。
伸ばした手を引っ込めて、軽く握り、ノック、2回した。
「どうぞ」
この声はモモさんだなと考えて、返事をした。
「失礼します」
ドアノブを握って回し、手前に引いた。
部屋に入ったら、すぐにドアを閉めた。
そして、一礼して辺りを軽く見渡した。
その後は視線を正面に固定した。
目の前にぽつんと置かれた椅子が一つ。
その向こうに、ウタさんとモモさんが机をはさんで座っていた。
ウタさんの眼光は鋭く光っていた。
モモさんは落ち着いた笑顔でわたしを見ていた。
許可をもらってから椅子に座った。
「では、実技試験の前に、いくつか質問します」
「はい」
「お名前を教えてください」
「紫苑ヨワです」
「お父さんとお母さんのお名前も聞かせてください」
「父の名は、紫苑武流(しおんたける)、母の名は紫苑五十鈴(しおんいすず)です」
「他にご家族はいらっしゃいますか?」
「兄が、一人います」
「お兄さんのお名前も、お願いします」
「紫苑剛(しおんつよし)です」
「住所はどちらですか?」
「埼玉県××市××町×丁目×番地×号です」
「出身中学校を教えてください」
「埼玉県××市立底野中学校です」
「志望動機をお聞かせください」
「はい。UTAU音楽学園高等部は、将来の芸能活動に備え、必要な授業が多く、設備も整っているからです」
「紫苑さんは将来、どうなりたいですか?」
「重音テトさんのようなアイドルを目ざします。少なくとも、『アイドル』は最低な職業ではなく、みんなに夢や希望を与える職業であることを証明したいと思います。そのために努力は必要だと思いますが、ヴォーカロイドのように幼い頃から訓練しなければならないような職業も歪だと思っています」
終始、質問するのはモモさんで、ウタさんは目を閉じず、じっと聞いているようだ。
わたしの右にある机でマコさんが何かをメモしていた。その隣のルナさんは、・・・。
〔バニーガール?!〕
うさ耳だけでなく、衣装がさらに進化していた。進化、って言っていいのかな。いつの間に着替えたんだろう。
〔これも、試験の一部、なのかな?〕
ヨワは努めて平静を装うことにした。
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