頭に包帯を巻いた転校生が先生に紹介され、いかにも重そうな口を少しだけ開いた。
「…今日からこの高校で一緒に勉強することになった黒崎帯人です。色々と至らない所があると思いますが、これからよろしくお願いします」
一見すると礼儀正しい挨拶に聞こえたがグミにとってはまるであらかじめ用意されている台本を読んでいるようにしか聞こえなかった。何というか心ここにあらずといった感じだ。まるでさっきのグミのように。
「それで黒崎くんの席のことなんだけど…ちょうど翠川さんの席の隣が空いているからそこに座ってもらおうと思うの。いいかしら?翠川さん」
「え…あっ、はい、分かりました」
黒崎という生徒が足を引きずるようにして隣の席に来た。グミの後ろにいる女子がひそひそ話をしている。
「ねえねえ、黒崎くんかっこよくない?」
「わかる~、何かおんなじ歳に見えないね」
その会話を耳にしたグミは呆れてしまった。最近の女子は男子など顔が少しでもよければ他は何でもいいのか。
「え?」
黒崎が微かに眼を見開いてこちらを見た。グミは心の中で呟いたと思ってたようだがどうも黒崎に聞こえていたらしい。
「ああ…、何でもないよ、黒崎くんだよね?あたし翠川グミっていうの。初対面でいきなりなんだけどさ、黒崎くんのこと帯人って呼んでいい?」
「……別に、構わないよ。よろしく」
そうぶっきらぼうに言って帯人が隣の座席に座った。なるほど、人と喋るでもあまり他人に対してまるで興味な無いような感じでぶっきらぼうに話すらしい。グミは率直に無愛想な奴だな、と思ったが口に出すようなことはさすがにしなかった。
そしてこの時はまだ、彼が自分にとって重要な存在であり、自分と深く関わりのある人間だったということなど気付いてすらいなかった。
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