10  ゲームじゃイケメン その1




 胸がものすごくドキドキしている。こんなにドキドキしたことはない。どうしよう死んじゃう。あーどうしよう、もしセシルさんが私の好きなアイドル歌手みたいな顔だったらたぶん死んじゃう。
 私は両手で胸を押さえながら今か今かと来るのを待っていた。そしてついに入り口のドアが開き人が入ってきた。
 が、あれ?誰だろあの人?あぁ、よそのギルドのメンバーの人か・・。30歳くらいの小太りな男性が入ってきたのでそう思った。しかし、会場は一気に盛り上がった。

 「いよーまってましたーー。」
 「おつかれでーす。」
 「もーおそいよーー。」
 「おせーぞ、ヒーローきどりですかー。」

 えぇ?誰この人。今私の目の前を通り過ぎていった人を見て、やけに人気のある人だなと思った。まあまあ、まあまあ、落ち着いてといった感じでうれしそうに手を振っている。そして会場からセシルコールが沸き起こった。

 「セーシール、セーシール、セーシール、セーシール。」

 手拍子と共に皆がセシルコールをし、会場の目立つ所で挨拶を始めた。

 「えーー、まず、遅れてすいませんでした。でも僕悪くないもーーーーん!!」

 ・・・なんだこの人・・。会場は大ウケで盛り上がっている。

 「今日もまたこのような会合を開けたことを大変うれしく思っております。日々の皆さんの協力があってこそであります。」
 「もーあいさつなげーよ。」
 「早く飲ませろーー。」
 「えー、まだ若干来てない人もいるようですが、とりあえずもう始めましょう。みなさん乾杯の準備をお願いします。」
 
 会場にいる人達はお互いのグラスにビールを注ぎ始めた。私が唖然としていると、さっきまで話していたよそのギルドの人が私のグラスにジュースを注いでくれていた。

 「はい、君の分。ん、どうしたの?なんか口が開いたままふさがらないみたいな感じになってるけど。」

 その親切な人の声は私に届いている。だが開いた口がふさがらないみたいな感じではなく、ほんとにふさがらないのである。
 
 「それじゃーみなさん、かんぱーーい!!。」
 「かんぱーーい!!。」

 カチンと音を鳴らしたあと、参加者達はうれしそうにビールを飲み始めた。私は口を開けたまま、渡されたグラスを持っていた。

 「どうしたの?急に具合でも悪くなったの?」

 親切な人は心配そうに私に声をかけている。がくっ!と私は頭を落とした。

 「えぇ!ホントにどうしたの?大丈夫?」
 「いぇ、大丈夫です・・。何でもないです・・。」
 「本当に?でももし、具合が悪くなったらいいなよ。」
 「はい・・、ありがとうございます・・。」

 私は体を起しとにかく気持ちを落ち着かせることにした。


11 ゲームじゃイケメン その2へ続く

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

ネットゲームで出会った人達  11 ゲームじゃイケメン その1

閲覧数:179

投稿日:2010/10/16 23:49:32

文字数:1,184文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました