―僕はいつも一人だった。

親の仕事の関係で何回も転校している。
そのせいで、仲の良い友達なんていなかった。

今だって、この空気に馴染むことが出来ていない。
教室の窓側の一番後ろが僕の席。
一人だけ、別の世界に居るみたいだ。

僕はすっかり日常になった動作を行う。
別に読みたくもない本を開く。
そうすれば、外の世界を遮断出来る…ハズだった。

「ねぇ、グミヤ君。何の本読んでるの?」

「!」
話しかけられるなんて思わなかった。
しかも、話しかけてきたのは、明るくて人気のある『鏡音リン』だったから。

「ねぇ、聞いてる?」

「えっ?あっ、うん。」
聞いてたけど、驚いて何言われたか忘れてしまった。
「ゴメン、何だっけ?」

「だから、何の本読んでるの?」

「これ。」
そう言って、前に差し出す。
昔から読まれている本らしい。
父親が僕の誕生日に買ってきた本だ。
こんなのもらったって、困るだけなのに。

「すごいね、グミヤ君。難しそうな本読んでるんだね。」

「いっ、いや…そんなことないよ…」
人と話すのは慣れない。
しかも、女の子だし…

「ううん、すごいよ。グミヤ君のおすすめの本とかある?」

「えっと…」


彼女は僕が話しやすいように言葉を選んでくれる。
二人で話す時間はとても心地よかった。
僕は彼女が好きになった。



―それから、二人で話すようになった。
でも、僕から話しかけるのは何だか怖くて、彼女から話しかけてくるのを待っていた感じだった。
…ホント、男らしくない。
そんな自分が嫌になる。



―そんな時、僕は見てしまった。
「リン!俺と付き合ってくれ!」

告白されていた。
相手は僕と全く正反対の性格のレン君だった。
彼は、顔も性格も良い。
みんなが彼を慕っている。

(僕なんかが勝てるワケないよね…)
僕は二人に見付からないように、その場を後にした。


―次の日
彼女は当たり前のように話しかけてきた。
でも、僕の頭の中はぐちゃぐちゃしていた。

「グミヤ君?」

「えっ、何?」

「顔色悪いみたいだけど…大丈夫?」

優しい言葉をかけないで欲しい。
キミのことを諦めきれなくなる。
僕は彼女から逃げるように、保健室へ向かった。

「僕、何やってるだろ…」

ため息をつく。

僕は彼女との関係が崩れるのがどうしようもなく、怖い。
だから、僕は駄目なんだと思う。
僕は、欲張りなんだ。
キミと今以上の関係になりたいと思ってしまうから。


―ガラッ
誰かが保健室に入ってきた。
(誰だろう?)

「グミヤ君、大丈夫!」

「えっ、授業中じゃ…」

「グミヤ君が心配でサボっちゃった。」

彼女は照れたように笑って、僕の隣に座った。

心臓が跳ねた。
僕の心臓がうるさい。
彼女に聞かれていないか、心配だった。

「「……。」」

何か、何か話さなきゃ。

「「あの…」」

「グミヤ君から…」

「いや、リンちゃんから…」

駄目だ…緊張する…

「私、グミヤ君に迷惑かけてる?」

「なっ、何言ってるの!迷惑なんかじゃないよ。むしろ、リンちゃんと話すの好きだよ!」

彼女の顔が赤くなる。
(どうしたんだろう?)

「グッ、グミヤ君!わっ、私もグミヤ君と話すの好きだよ!」

「!」
今さら自分の失言に気付いた。
でも、本当のことだから。

―僕は覚悟を決めた。
「リッ、リンちゃん!」

「はっ、はい!」

「あの、僕、リンちゃんと話してると楽しくて、リンちゃんとずっと一緒に居たい、って思うんだ。だから、僕と付き合って下さい!」
…言った。

「グミヤ君…お願いします…」

「えっ、ホント?…でも、レン君とは?」

「えっ!見てたの!…恥ずかしいなぁ…レンとはただの友達。付き合うとか考えられないもん。」

「そう、なんだ。」
ホッ、とした。
ただの勘違いだったんだ。



勇気を出さなかったら、ずっと後悔して、悩んでいたと思う。


―僕はこれからも、リンちゃんと一緒にたくさんのことを話して、幸せな時間を過ごしたいと思う。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

かぐみねの日常 ver.魔熊

お題の出し合いです。
今回は禀菟のお題でした。

禀菟・檸檬飴のも見て下さい。

閲覧数:160

投稿日:2011/04/24 15:01:15

文字数:1,693文字

カテゴリ:小説

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  • 檸檬飴

    檸檬飴

    ご意見・ご感想

    グミヤが可愛ゆい(*^^*)
    幸せになって良かった(^^)
    少しくらい文才くれよ!

    2011/04/24 15:09:24

  • 禀菟

    禀菟

    ご意見・ご感想

    良かったね、グミヤ(T_T)
    そしてリンちゃんかわゆv
    かぐみねサイコーっ!!

    2011/04/24 15:06:12

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