<クリスマスSP番外編・鏡音神社の大クリスマスおみくじ大会!(後編)>
(12月25日・鏡音神社・昼・おみくじ売り場)
ミクとルカの二人が鏡音神社に到着した時、会場は相当混雑していました。
ワイワイガヤガヤ・・・・という擬音よりは、アイドルへ投げかける“男性の”声のような、そういう声の方が多かった。なんというか、その混雑の声の種類が、ちょっと違っていたのだった。
参加者:うぉーーーーーー! レンきゅん巫女さん! 大復活ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!
参加者:リンちゃん巫女さん、やっぱ、かわいいいいいいいいい!!!!!!!
その大歓声の中、コーナー1つしかない“おみくじ売り場”に二人で並んで、おみくじの受付受け渡しをしていたのは、当然、巫女姿のリンちゃん、そして、この大歓声の元である“レンくん”であった。
他の巫女さんが全員欠席なので、神主の父は、神主なのに、リンとレンから告げられた番号のおみくじを棚から持ってきて渡す、『パシリ』の仕事をしていた。
自業自得である。
参加者:リンちゃん巫女さん、おみくじの後、お茶しませんか?
パシリの仕事をしている父だったが、その種の声には過敏に反応し、腰に携えている日本刀の柄を握って、目立たない程度に発言者を睨み付け、鋭い眼光が光ったのだった。
神主の父:(ぎろっ!)
参加者:いえ・・・・なんでもありません・・・・
巫女リンファンも凄いが、それを凌駕する程、巫女レンファンのアプローチは凄かった。
参加者:レ、レンきゅん巫女さん、お、お、おみくじ、100枚!
巫女レン:あ、あの、お客様? 100枚お買い上げですと、大会のルールで、自分以外の99枚分の“願掛けしたい人”の物まねをしてからでないと、お渡しする事ができないのです。本日は大変混雑しておりますので、スミマセンが数枚程度にして頂けませんでしょうか…
参加者:きゅ・・・・99枚分全部、レンきゅん巫女さんに捧げます・・・だから、99枚分、レンきゅんの物まね、致します!
こういう面倒くさい客の場合、隣の巫女リンの鋭い眼光が光って、目立たない程度に客に一瞬、視線を合わせる事にしていたのでした。
リン:(ぎろっ! Wryyyyyyyyyn! 他の客の迷惑になるなよ! ゴミがぁ!)
参加者:す・・・・・すみませんでした・・・・自分の分、1枚、お願いします・・・・・
***
その一部始終を眺めていたミクとルカは、某駅の某チケットの件が頭によぎり、自分たちは最後にすることにして、それまで、隣の茶屋で甘酒や軽食でも頂いている事にしたのでした。
(隣の茶屋)
ミク:甘酒と、串ネギ焼き、串焼きタコ3本!
ルカ:私は、甘酒と、串焼きマグロ5本をお願いします
そんなこんなで、客がはけたのは、甘酒の酒麹の酔いが少し回ってきた、なんと夕方頃でした。
***
(12月25日・鏡音神社・夕方・おみくじ売り場)
ようやっと、あのすさまじいファn・・・・もとい、客がはけて、残りはミクとルカだけになったのでした。
リン:えっとぉ・・・・・お客様で最後ですし、サービスで何枚注文してもいいですよ? 物まねh
ミク:も、ものまね、やらして頂きますぅ! ひっくぅ!
ルカ:ミ、ミク、大丈夫??
ミク: ミクわぁ、しーらふ、ですよ~、ひっくぅ!
リンとレンは、困った顔をして顔を合わせた。最後の最後に来たのは、熱烈ファンではなく、少し酔っ払った客だったのでした。
ルカ:あ、リンちゃんとレン君、ごめんなさいね、時間があったから、甘酒をしこたま飲んじゃって、酒麹でミク、ちょっと酔っ払っちゃったの。あ、ミクは未成年だけど、甘酒で酔ったから、セーフよね?
リンとレンは、この言葉に少し違和感を感じたので、一応、変な質問をしたのでした。
リン:えーーーーっと、お客様? 失礼ですが、私たち、お客様は初見だと思うのですが、どこかで知り合った事、ありましたでしょうか? ファンの方々とは、少し違うセリフだったので・・・・・
ルカはその言葉に、はっ、となった。ついつい、“僧侶リンと勇者レンのそっくりさん”である目の前のこの双子に、うっかり使ってしまった気安い言葉。
さて、どう説明しよう…・勿論、この双子とは初見である。だが、これまでの“向こうの世界での出来事”は、アペンドさんとの約束で、『話しては行けない』、事になっている。あの策士ルカですら、うっかりの度合いが大きいため、困ってしまった。できる限り不審な顔つきをしないように気をつけて、こう、“ウソの理由”、を告げた。
ルカ:えっと、実は私たち、アキバでコスプレもやっているんですけど、貴方達のような可愛い双子さんとそっくりの方々と、一緒にイベントに参加した事があるんです。なんというか、その、“RPG”のような世界観でのコスプレでね、男の子が勇者コスプレでレンって名前で、女の子が僧侶コスプレでリンって名前だったの。貴方達の名前はチラシに書いてあったから知ってました。名前まで一緒って、偶然だと思うんですけど・・・・信じてくれますか?
骨の部分は間違ってはいない。異世界ではなく、コスプレ、というところがウソの部分である。
リン:ふ~ん、リンとレンの双子って、変わった姉弟で名前だと思っていたのですが、他にもいるんですね~。よくわかりました
レン:わかりました、って、俺の事、巫女姿なのに、男って呼んでくれて、サンキューな!
さすが“策士ルカ”である。通じてしまったのでした。
***
そんなこんなで、最後の客であるミクとルカは、リンがミクのおみくじ、レンがルカのおみくじを担当する事になりました。ルカの希望で、大会のルールである“物まね”は、割愛させて貰う事にしました。あまりやると、さっきの言い訳が崩れてくる可能性があると、ルカが考えたからである。
更に色々あるので、自分の分は最後に引く事にしました。たぶん、その頃には、ミクの酔いも冷めると、ルカが考えたからです。
ミク: んじゃ~、ミクから~、ほい!
そう言うとリンから渡されたおみくじ箱を、ミクがガラガラ振った後、逆さにして出てきた1本のおみくじをリンに渡した。
リン:えっと、“か-110”ですね。少々お待ちください、おとうさーん! “か-110”!
が、声が聞こえない、ただの屍のようd・・・・・ではなく、あまりの客の多さに、パシリに疲れ切って、おみくじ棚と売り場の中央で倒れていたのは、おみくじ運搬役の父であった。
ルカ:あ、あの・・・・お父様、大丈夫ですか?
するとリンがドスドスと足音を立てながら倒れている父に近づき、こう耳元でささやいた。
リン:あ、カレシ~、待ったぁ~、ごめーん、これから一緒に行くね~♪
その刹那、倒れていたはずの父は、その声に条件反射し、すぐに立ち上がり、左腰に携えた日本刀を抜刀し、リンの周りをきょろきょろしながら、こう叫んだ!
神主の父:リンに近づく、不埒な輩がぁぁぁ!!!! 斬り捨ててやるわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
この時点でミクの酔いが、強制的に覚めた。
ミク&ルカ:(こ、このオヤジ、日本刀と言動以外、姿から神主だけど・・・そのはずなんだけど・・・・)
***
完全復活した父は、ぴんぴんしながら“か-110のおみくじ”を持ってきて、リンに手渡し、ミクが受け取った。
リン:えっと、ご自分のおみくじは最後にされるとの事なので、このおみくじは、どなたのおみくじなんですか?
ミク: え? あーこれは、カイトお
ルカ:あーーーーーーーー!!!! えっとバイト先のカイト・オウさんの分です! ミク、開けて確認して!
ミク:あ・・・・・・・(あ、そうだった、アペンドさんとの約束!)、はい、カイトさんの分、開けますね
開けたおみくじには、こう書かれてあった。
か-110 大凶
何やっても失敗、オワタ
特に一番近い間柄の女性とは、ガチ喧嘩になるので、負けないためには、本気モードになること
“クリスマス”であり、“くるしみます”ではない、言動には気をつけるべし
ミク: ??????
ルカ:???・・・・・ま、まぁ、あのカイトさんらしいから、まぁいいか。次は私がメイコさんの分を引きますね
そういうと、ルカはレンのおみくじ箱をガラガラしながらひっくり返し、おみくじ棒1本を引き当てた。“め-15”だった。父が持ってきて、レンから手渡された。そのおみくじには、こう書かれてあった。
め-15 小吉
一番近い間柄の男性に困らせられるが、本気で戦えば、必ず勝てる。機会を待つべし
深酒には気をつけるべし
“くるしみます”ではないよーん、言動には気をつけるべし
ルカ: ??????
ミク:? さっきから意味わからないけど、ここのおみくじは良く当たるって、評判らしいから、まぁいいや。次は私がテルさんの分を引きますね
ミクは次はテルの分のおみくじを引いた。結果は“て-94”だった。そのおみくじには、こう書かれてあった。
て-94 中吉
一番近い間柄の女性の尻に敷かれますが、ソコニシビレル、アコガレル!
自分の技法や術式を、あまり過信せぬように
周りの友人に、助けられる。感謝するように
ミク: あー、これはわかるわ(クスクス)
ルカ:私もわかる(クスクス)
次にルカが、(勇者)レンの分を引いた。レンからレンの分を引くのもおかしい話だが、これは向こうの世界のレンの分だと、割り切る事にした。結果は“れ-9”であり、おみくじには、こう書かれていた。
れ-9 大吉
隣の異性と、相思相愛になる、良かったな
少し、影が薄い傾向にある、自分をもっと表現するように
周りにやってくる同性、および年上の女性には、十分気をつけるべし 危険なにおいがするべし
ミク: あー(汗)
ルカ:あー(汗)
次にミクが(僧侶)リンの分を引いた。結果は“な-5”だった。そして、内容はこうだった。
な-5 大吉
隣の異性と、相思相愛になる、お幸せに
唯一の清純派を守っているあなた、これからも頑張って!
周りの同年齢の同性異性は大切にすべし。“年上の男性”だけは特に気をつけるべし。危険である
ミク: あー(大汗)
ルカ:あー(大汗)
次にルカが、学歩さんの分を引いた。一応説明は“剣道の道場の師範なんです”と言っておいた。結果は“が-9”だった。
が-9 吉
自分の技術への自信は過信では無い。そのまま腕を磨くべし
茄子の食べ過ぎに気をつけるべし
遠隔地にいる場合は、必ず帰れる。機会を待つべし
ミク:学歩さん、何かあったのかなぁ、ねぇ、ルカ…
ルカ:あれから先に、何かあったのかも…
ミクとルカは、イア誕生以降の事情を知らないので、こういうセリフになるのだが、今の学歩は、このおみくじ通りなのである。茄子は別として…。
最後にミクとルカは、自分の分のおみくじを引いて、一礼してから売り場から離れ、近くのベンチに座って、それぞれ読むことにした。
ミクのおみくじはこうだった。
は-39 大吉
同居人と、これからも仲良く暮らせる。お幸せに!
ネギの食べ過ぎに気をつけるべし
これからも“世界”を引っ張っていってください(願)
ミク:大吉はいいんだけど…。は、はい、気をつけます、頑張ります…
ルカ:クスクス。じゃあ、私はなにかな?
ルカのおみくじはこうだった。
め-69 大吉
同居人と、これからも仲良く暮らせます。お幸せに!
ナイトフィーバーしすぎは気をつけましょう
好きな物(まぐろ等)だけでなく、嫌いな物(タコ等)も食べられるようになりましょう。
ルカ:・・・・な、なんか、やたらと具体的なんだけど、ここの神主さん、私を尾行して・・・
ミク: それはないよ、偶然だよ。ミクのだって、“ネギ”って書いてあるし…
ミク&ルカ:・・・・・・・・・結んで帰ろっか
こうして木の枝に結んで、二人は帰宅したのでした。
***
(クリスマス・鏡音神社・夜・神主の自室)
神主の父:ぬぉぉぉぉぉぉ!!!! 足が痛い! 腰が痛い! 首が痛い! 儲かったが、もうやらん! こんなイベント!
***
(クリスマス・鏡音神社・夜・リンの部屋)
二人はあの後、ナイショで、今日のバイト代で大きめのクリスマスケーキを買ってきたのでした。
リン:はぁぁぁ・・・疲れた。やっぱ、神職がクリスマスに首を突っ込んじゃだめだよね?
レン:ホントだよ。まぁ、ボクたちのコレは、個人的なクリスマスだから、いいけどね
リン:バナナジュースもあるし、クリスマス位、二人で楽しもうよ、ね? レン?
レン:そだね、準備でイヴは見事にパスされちゃったけど、クリスマス当日くらい、ケーキ食べて、楽しもう!
仲の良い、巫女姉弟、お幸せに♪ メリークリスマス♪
(了)
CAST
巫女・鏡音リン:鏡音リン
巫女・鏡音レン:鏡音レン
ミク:初音ミク
ルカ:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン
カイト王:KAITO
メイコ王妃:MEIKO
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
その他:エキストラの皆さん
クリスマスSP番外編・鏡音神社の大クリスマスおみくじ大会!(後編)
☆1話完結の恒例・クリスマスSPお話です。
☆色々忙しくて、原稿が遅くなってしまって恐縮です。
☆今回は、
1)オリジナル作品第17弾である、「Dear My Friends!第2期」の世界
2)オリジナル作品第9弾である、「戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝」の世界
の2つをリンクさせて、クリスマスなのに大おみくじ大会を開くお話です。
☆世界観のリンクのため、以下の設定を“ディアフレ!”(主に1期の時点)の世界に追加します。
1)勇者レンの対応する人物=巫女・鏡音レン
2)僧侶リンの対応する人物=巫女・鏡音リン
***
☆ピアプロの場合、字数制限6000文字があり、今回7500文字越えだったので、ピアプロだけ、前編後編の2つに分けました。説明編とイベント編です。
コメント0
関連動画0
ブクマつながり
もっと見る霧雨さんのブースに向かって、ルカさんがゆっくりと歩いてきた。
「ルカさん!」
「たこるかちゃん、おつかれサマ」
彼女は、たこるかちゃんに向かって微笑んだ。
「あら、れおんさん。どうしたの?」
たこるかちゃんは、ルカさんにこれまでのいきさつを、手短かに説明した。
「そうなの!れおんさん、リンちゃんと“...玩具屋カイくんの販売日誌(192) リンちゃん+“はっちゅーね”の行方は?
tamaonion
「はいはい、並んでね。あ、通路にはみ出しちゃダメよ」
会場のブースには、男の子たちの長い列が出来ている。
雑誌をメガホンのように丸めて、それを仕切っているのは、霧雨さんだ。
雑貨とキャラクター雑貨のショー「雑貨&コミックフェア」の会場。
その一角で、時ならぬ“ミニミニ撮影会”が起こっていた。
ちょっ...玩具屋カイくんの販売日誌(186) ミニ・イベント in イベント?
tamaonion
ブースの前で、コヨミ君と、れおんさんは、にらみあって立っていた。
ザワザワ、と騒ぎ出した男の子たち。
それを見て、テトさんは思わず、コヨミ君に声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? もめ事はよくないですよ」
フッと我に返ったように、コヨミ君は彼女の方を見た。
「あ、テトさん。ごめんごめん。ちょっと、大人...玩具屋カイくんの販売日誌(194) 新商品で勝負だ!
tamaonion
お店の売り場には、コスメや、美容関連のアイテムが、いろいろ並んでいる。
それを、レイムさんは目を丸くして眺めている。
「ワタシ、こういうの詳しくないんだわ~」
そうつぶやく彼女に、後ろを歩いているぱみゅちゃんは、諭す様に言った。
「そうそう。あんたはちょっと化粧っ気が無さすぎるからネ。少しは知っとい...玩具屋カイくんの販売日誌(179) レイムさんのオカルト理論 (その1)
tamaonion
「はーい。コーヒー、入りましたよ」
ルコ坊がカップに入ったコーヒーを、レン君たちに運んできた。
ちょっと不思議な雰囲気の、りりィさんのお店「星を売る店・上海屋」
りりィさんを送ってきたレン君は、美味しそうにそれを飲んだ。
「いつも、美味しいね。ルコちゃんの淹れるのって」
「へへ、どーもありがとう」
...玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
tamaonion
ゆくりさんのお店で、バイトのレン君が、青くなっていた、その頃。
東京・有明にある東京ビッグサイトで、人気のイベント「雑貨&コミック・フェア」が開かれていた。
企業のブースをはじめ、コミックやフィギュアを作る有志や同人の人たちが、それぞれにブースを出展している。
会場のホールの一角に、移動式自動車のカ...玩具屋カイくんの販売日誌(182) コミックフェアで、ひと騒動
tamaonion
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想