箱と格闘してどの位時間が経っただろうか、一向に事態は動かなかった。
「少し休憩しては?」
「う~~…もうちょっとな気が…あいたっ!痛~…爪欠けたぁ…。」
「…っ大丈夫ですか?!」
嫌な予感はしていたが案の定だ。
「見せて下さい。」
「えっ?あの…そんな大した事じゃ…。」
「良いから手を出しなさい。」
「は…はぁ…。」
人差し指の爪が少し欠けただけか…血も出てないし大丈夫そうだな。それにしてもこの箱は一体どう言う構造なんだ?からくり箱と言っていたがそれにしては動かせる場所も殆ど無いし目印になる様な物も無い。おまけに少しとは言え女性に怪我をさせるなど設計者の顔が見てみたい物だ。
「あの…手…。」
「…失礼。」
気のせいでは無くやはり私は警戒されている様だ。ゲームに支障は無いかも知れないが恐がらせたままと言うのも悪いし、何とか誤解を解きたい物だな。しかし何と言えば良いんだろうか?体調を心配しています?それとも怪我をしないで下さい?しかし警戒されているのを解くには何か方向性が違うな。となると、協力します、手伝います、と言った言葉の方が良いだろうか?しかしそれも胡散臭いと思われては出足から躓くな…。何と言えば敵意が無いと判って貰えるだろうか?恐くありません…?いや、それでは変質者だな。敵意の無い表現…言葉…。
「どうしたんですか?さっきから難しい顔して。」
「貴女が好きです。」
「ぶっ…!ゲホッ!ゲホッ!…ゴホッ!」
「…大丈夫ですか?」
「は…ハレルヤさん?!ゴホッ…い…いきなり何…を…ゲホッ…!」
花壇は吹き出したついでに激しくむせていた。驚かせてしまった様だ。
「すみません。貴女が随分警戒していたので、敵意は無いと言いたかったんですが。」
「そ…そう言う…事ですか…あー…ビックリした…。」
「恐がらせるつもりは無かったんですが…その…心配で貴女から目が放せなくて…。」
「私そんなに頼り無いですかね?まぁ、倒れたりしちゃったんで偉そうには
言えませんけど…駄目ですね、もっと頑張らないと。」
もっと頑張る、と言う言葉に何かが引っ掛かった。今迄の言動や行動を見ても彼女は怠惰に生きていた様には見えない。家族からは暴力を受け、それでもこの小さな身体で必死に耐えて頑張って来たのではないのか?そんな張り詰めた環境に居たのに、これ以上頑張ったら壊れてしまうのではないだろうか?
「頑張らないで下さい。」
「え…?」
「1人で立とうとしないで良いんです。もっと私…いえ、皆を頼りなさい。貴女は
女の子なんですから。」
「…ふふっ…何かハレルヤさんクリスみたい。」
「クリス…ですか?」
「こっちの話です。でも、ありがとうございます。」
一瞬、零れた笑顔に伸びそうになった手を、軽く握り締めた。
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…あ、ヤベ…これ、やらかした…。
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